海は、釣りにサーフィンにダイビングにと様々なレジャーが楽しめます。
しかし、一見平和に見える海にも、時として思わぬ危険が潜んでいます。
それは、アカエイ…浅瀬や砂浜にも見られる危険な生物なのです!
今回は、アカエイに刺された時の症状と対処法、その生態や毒性についてご紹介させていただきます。
アカエイの生態
アカエイは、トビエイ目アカエイ科に属するエイです。
国内では、北は北海道の南部、南は沖縄まで広く分布しています。
つまり、日本では北海道の北部以外、ほとんどの地域で見られる魚です。
その名の通り赤っぽい色をしており、背側は赤褐色か茶褐色で背面に目があります。
腹側は白色ですが、ヒレの辺縁部は黄色か橙色で縁取りされてます。
アカエイは、尾を含めると最大で2mほど、重さは100kgもの大きさになります。
魚の仲間であるため尾がありますが、これが鞭のようにとても長く、その背側には短い棘が列のように並んでいます。
さらに、尾の中ほどには長さ数cm~数十cmほどの長い棘が1、2本並んでいます。
この長い棘は毒針であり、一度刺さると抜けないように「返し」までついています。
しかも、強いタンパク質毒を含んでいるため、もし刺されると激しい痛みに苦しむことになります。
アカエイは、浅瀬の砂や泥の中にもぐっていることが多い生き物です。
砂や泥の中から、目と噴水孔と呼ばれる呼吸のためにエラに水を送る場所と長い尾だけを出しているため、人間が上から見て探すことはかなり難いでしょう。
ときどき、大きな川と海の混じっている「汽水域」にまで入り込む場合があるので注意が必要です。
アカエイ自体は、肉食で貝やカニ、タコ、そのほか海底で暮らすような生物を待ち伏せて食べて生きています。
しかし、泳ぎがさほど上手ではない(遅い)ため、基本的には待ち伏せという方法を取ります。
そして、自分より大型の敵に襲われた時のために毒針を持っています。
ちなみに、毒針のその破壊力は個体差がありますが、2mほどの大物になれば長靴やウェットスーツは簡単に貫通するほど強力です。
天敵はサメ類で、寿命は15年ほどだと言われています。
刺されないための対策は?
基本的に、アカエイが泳いでやってきて刺す、ということはありません。
ですから基本的な対処法としては「エイに近づかない、誤って踏まない」ことです。
ビーチなど、人気がそもそも多いところには海底生物も少ないので、アカエイも来ることはまずありません。
しかし、人気の少ない砂浜や、海底生物が多くみられるような場所では、「いるかもしれない」と考えるべきです。
浜辺で釣りをする場合は、そういった海中の砂の上に足を下ろさないことです。
なぜなら、砂の中にいるアカエイを知らずに「踏みつけたとき」に、襲われる事故が最も多いからです。
釣りなどで、どうしてもそこがいいポイントだ!という場合は、釣竿などで砂底をつつき、アカエイがいるかどうかを確認するのが良いでしょう。
また、砂底を歩く際は、すり足で移動するようにしましょう。
アカエイの方が逃げて行ってくれるかもしれません。
サーフィンをするなら、浅瀬でもなるべくパドルで移動することを心がけましょう。
スキューバダイビングなどで、海底の砂を不用意にまさぐるのも危険です。
よく見ると、砂の上に長い尾が見え隠れしたり、小さな穴から水と砂が噴き出ているかもしれません。
その場合は、アカエイに警戒し近づかないことです。
刺された時の症状
アカエイの毒はタンパク質毒のため、体内に入ると体細胞を破壊します。
傷口の細胞からどんどん破壊されるため、ものすごい激痛のほか、次第に高熱を伴います。
また、そのままでいると細胞が壊死し始めます。
重症の場合は、完治するまでに1年以上かかったという例もあります。
最も注意すべきは、アナフィラキシーショックを起こし死に至る可能性があることです。
血圧の低下、呼吸障害、下痢、発熱、意識障害など、複数の症状が急速にあらわれるのがアナフィラキシーショックの特徴です。
刺された場合の対処法は?
1、刺された部分に残っている毒針はできるだけ取り除く
大物のアカエイを踏みつけて、肉まで毒針が貫通した場合は、まず素早く毒針を取り除きましょう。
返しがついているため、抜こうとすると肉を切り裂くことになりますが、もたもたしていると毒が体にどんどん入り込みます。
毒針は、可能な限り取り除くようにしましょう。
2、患部をよく洗い、毒を絞り出す
患部を消毒した後、毒が体に回らないように絞り出しましょう。
近い場所の動脈(足を刺されたのであれば、太ももあたり)を圧迫して血の巡りを遅くするのも効果的です。
また、ポイズンリムーバーという毒を絞り出す道具があるので、海へ行く際は念のため準備しておくのも良いでしょう。
3、患部を温める、急いで病院へ向かう
そして、できるだけ早く病院に行くことが大切です。
病院まで容易に行けないという場合は、患部を温めると毒のタンパク質が多少は壊れるので痛みを和らげることができるのです。
40~45℃くらいのお湯に30分ほど患部をつけると、痛みが和らぎます。
やけどに注意し、入浴の際より少し熱めのお湯を目安とするとよいでしょう。
アカエイとサメの関係
アカエイやサメは、れっきとして魚類ですが、「軟骨魚類」に分類されます。
私たちがよく目にするサンマやイワシ、マグロなどは「硬骨魚類」と言います。
実はエイやサメの仲間はやや原始的な種類になります。
固い背骨で体をがっちり固定し、背骨全体をくねらせる「硬骨魚類」は、海の中を素早く泳ぎ回ることができます。
そして、速く泳ぐために、水の抵抗が少なくなるような、縦に細長い体をしています。
サメやエイの仲間は、横に広がっているため、さほど素早く泳ぐことができません。
そのため、サメの仲間は強い歯と集団生活で獲物を捕まえる手段を取り大型化しましたが、エイの仲間は海底で動きの遅い生き物を食べるように進化したのです。
毒針は、砂の中で隠れているエイの仲間にとって、身を守る唯一の手段でもあります。
まとめ
いかがでしたか?
アカエイは、北海道北部以外の海ではどこでも見られ、浅瀬の砂や泥の中にもぐっていることが多くあります。
誤って踏んづけてしまうことで、その長い尾にある毒針にさされる事故が多数起きています。
刺されると、激痛のほかアナフィラキシーショックを起こす可能性もあるので注意が必要です。
海水浴や釣り、スキューバダイビングなど、砂のある海で楽しむ場合には、このような危険を頭の隅に置いてください。
ただ、アカエイ自身は味も悪くなく、食用にもなりますので必要以上に毛嫌いするのはどうかと思います。
なにより、彼らにとって毒針は、生き残るための戦略なのですから、彼らに住みかに不用意に訪れる人間の方が、注意すべきだと思います。
それが自然界との”共存”かもしれませんね。