日本で危険な生物と言えば、すぐに思い浮かぶのはマムシやハブ、クマぐらいなので、豊かな自然の中でもわりと安心して住めますよね。
ところがそんな日本でも少々やっかいな危険生物が潜んでいます。
それはマダニです。
たかがダニと思うかもしれませんが、死者を出た例も報告されています。
今回は、マダニの大きさ、感染症(SFTS)と噛まれた時の取り方について解説します。
目次
マダニとは
出典:flickr
マダニは、ダニ目・マダニ類・マダニ科に属するダニの総称です。
マダニ科には14属702種ほど存在しますが、日本にはマダニ属・チマダニ属・キララマダニ属・カクマダニ属・コイタマダニ属など5属47種が存在します。
生息地、どういった場所にいる?
マダニは日本全国にいます。
主に自然が多い場所に生息していて、山や森、家の周囲の草むら、畑、田んぼのあぜ道、河原にもいます。
また、シカ・イノシシ・野ウサギといった野生動物に寄生するため、これらの野生動物を多く見かける場所は要注意です。
都市部の市街地でも、公園などの緑地に生息していることがありますので注意が必要です。
活動時期は4~10月ごろのようです。
マダニの大きさは?
ダニというと肉眼ではなかなか発見できないように思いますね。
しかし、マダニの大きさは2~3㎜なので肉眼でも見えます。
また、吸血した後のダニは1㎝以上の大きさになっていることもあります。
左:吸血前 右:吸血後 出典:wikimedia
マダニの生態
マダニの生活環は、
卵→幼ダニ→若ダニ→成ダニ→卵…
になります。
マダニは一生の間で、各ステージで1回ずつ、合計3回だけ吸血します。
マダニには「ハーラー器官」があり、哺乳類が出す二酸化炭素を感知すると、草むらから飛び出して哺乳類に吸血します。
また、歩くときの振動などを感知して吸血対象の存在を感知することもあります。
マダニの吸血対象は、シカ・イノシシ・タヌキ・野ウサギ・野ネズミといった野生動物、ペットとなるネコやイヌ、そして人間からも吸血します。
吸血方法はハサミのような口で哺乳類の皮膚を切り裂き、ギザギザのの歯を差し込んで吸血します。
この吸血するときに、マダニの唾液が宿主の体内に侵入することに後述する危険性があります。
ちなみに、マダニはとても頑丈な生物で、電子顕微鏡で観察する際、真空状態でも生き続けることができます。
ただ、なぜ真空状態で生きていられるのかは不明だそうです。
本当に恐ろしく頑丈なんでしょうね・・・。
マダニの感染症
マダニが恐ろしいのは、血を吸われるからではありません。
マダニが媒介する感染症が恐ろしいのです。
マダニが媒介する感染症には、
・重症熱性血小板減少症候群SFTS(フレボウィルス)
・日本紅斑熱(リケッチア)
・ライム病(スピロヘータ)
・Q熱(リケッチア)
・ボレリア症(細菌)
・野兎病(細菌)
・ダニ媒介性脳炎(フラビウィルス)
・キャサヌル森林病(フラビウィルス)
…などが挙げられます。
※()内は病原体の名前
特に、重症熱性血小板減少症候群(STFS)は現在ワクチンがないため致死率が高い危険な感染症です。
STFSは、マダニに噛まれてから6日~2週間の潜伏期間を経て発症します。
SFTS患者は西日本を中心に、5~8月に多く発症しています(ほとんどが60代以上の高齢者)。
発症すると、発熱・嘔吐・下痢・意識障害・血が固まりにくくなるといった症状が出ます。
高齢者は重症化しやすい傾向があり、最悪の場合7~10日で死んでしまいます。
2013年以降では、266人が感染して、その内57人が亡くなりました。
また最近では、体の弱った野良猫に噛まれた50代の女性がSFTSを発症して死亡しました。
このことからわかるように、SFTSはマダニ以外の生き物も媒介します。
マダニに噛まれた時の症状や取り方
マダニに噛まれると、チクッと痛みます。
しかし、噛まれている(吸血している)間は、症状がほとんどありません。
噛まれたあとはかゆみがあり、皮膚が赤くなります。
マダニは口器を哺乳類の皮膚に差し込むとき、セメントのような物質を唾液腺から出すため、吸血が終わるまで宿主の体からは離れません。
無理にマダニを引っ張ると、マダニの体液が逆流したり、頭部が皮膚に残ったりするため感染症のリスクが高まります。
このため、噛まれた時の対処法は医療機関を受診してマダニを除去してもらうのが一番です。
何科を受診すれば良いのかわからない方もいますよね。
まずは皮膚科に行ってみましょう。
自分で取るしかない時は
とは言え、夜間では病院も開いていませんから、民間療法で除去する方法もあります。
簡単な方法では、お酒を含ませたコットンやティッシュをマダニにあてがい、酔っぱらって落ちたところを拾って処分します。
これが一番簡単で安全な取り方ですね。
他にも、ワセリンやお酢や殺虫剤でもマダニが勝手に離れるようです。
あとは、少し注意が必要ですが、火をつけたお線香をマダニに近づけると、マダニは熱くて体から離れます。
しかし、これらはあくまで民間療法なので、おすすめはしません。自己責任でお願いします。
もし、自力でマダニを引き離すことに成功したとしても必ず病院へは行くようにしましょう。
マダニから身を守るには?
マダニから身を守るには、
・服装で防ぐ
・虫よけスプレーや忌避剤の利用
・屋内に持ち込まない
などが挙げられます。
まずは服装ですが、肌の露出を少なくしてマダニに噛まれないようにします。
首はタオルを巻いたりハイネックシャツを着ましょう。
シャツの袖口は手袋や軍手の中に入れ、シャツの裾はズボンの中に入れ、ズボンの裾は長めの靴下の中に入れるか長靴の中に入れます。
そして、虫よけスプレーを利用したり、マダニの忌避剤「ディート」「イカリジン」などを衣服に吹きかけます。
皮膚の弱い方や子供に使用する際は、使用上の注意をよく読んでから使ってください。
しかし、忌避剤を使っても、完全にマダニを防ぐことはできません。
屋外から屋内に入る時には、ガムテープなどで衣服についたマダニをしっかり取り除いてからにしましょう。
家の中にマダニを持ち込まないことも大切なのです。
家の中に入ったらすぐに着替え、できれば早めにお風呂に入り、マダニに寄生されていないか自分の体を確認しましょう。
これに加え、死亡者を出したSFTSの予防策として、体の弱った野良猫には触らないようにします。
また、飼い猫を放し飼いにするのも止めたほうがいいでしょう。
まとめ
マダニは、日本全国の草むらなどに生息しており、動物の血液を栄養としています。
マダニに噛まれると感染症にかかる恐れがあり、中には死亡するほど危険な病気もあります。
血を吸ってパンパンに膨れ上がったマダニを見ると、何ともゾッとします。
寄生して吸血しているマダニを見ると、発見した次の瞬間にはマダニを引きちぎってしまいたくなりますが、感染症が怖いのでそれは絶対に止めましょう。
できるだけ早めに病院(皮膚科)を受診してくださいね。