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イシナギの生態や毒性について、ビタミンA過剰症に注意!

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魚の中には毒を持つ種も多く存在しています。

よく知られているところではフグの卵巣や内臓の毒が有名ですが、他にも同じフグ毒を持つツムギハゼや、体表のトゲに毒を持つオニダルマオコゼ、歯に毒を持つウツボなど様々な形で毒を持つ魚が存在します。

その中でも大物釣りの対象魚としても人気の高いイシナギも、そんな毒魚として注意が必要な魚のひとつです。

今回は、イシナギの生態や毒性、ビタミンA過剰症についてご紹介させていただきます。

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イシナギってどんな魚?

イシナギ属には日本海やカリフォルニアに生息する「コクチイシナギ」と、日本各地に生息する「オオクチイシナギ」の2種があります。

コクチイシナギの個体数が日本で確認されたことがないことからも、日本でイシナギといえばオオクチイシナギを指すことが一般的です。

ここでいうイシナギもオオクチイシナギのことを指します。

 

イシナギは、スズキ目スズキ科イシナギ属の魚です。

温帯性で北海道から屋久島近海までの日本海・太平洋岸、東シナ海などに分布しています。

オオクチイシナギ

オオクチイシナギ

イシナギはスズキ科の魚の中では最大とされており、全長2m、200kg超まで成長する大型魚です。

体型は長楕円形で平たく、若いものでは黒褐色色で体側に白色の縦縞が4~5本見られますが成長とともになくなり、、大きくなるに従って全体的に暗い灰色や暗褐色になります。

櫛鱗(しつりん)と呼ばれる剥がれにくい小さな鱗は、スズキ科の魚の特徴でもあります。

同属のコクチイシナギに似ていますが、オオクチイシナギの口は大きく、上あごの後ろ端は眼の中央下かそれよりも後ろにまで伸びています。

 

深海性種のため、普段は水深400~600mもの深海の岩礁域に生息していますが、初夏から夏にかけての5~6月頃には、産卵のために水深150mほどの浅場へと移動してきます。

この時期を多くの釣り人たちが待ちわびているわけです。

卵から孵化後の幼魚期は比較的浅場にいますが、成長するに従って深海へと生息の場を移していきます。

主に魚類や甲殻類、頭足類などエサにしていますが、釣り人たちの中ではイカが大好物だとされています。

 

イシナギは地域によって様々な呼び名を持っています。

秋田や青森ではオヨ、オヨヨ、富山でオオイオ、そのほかにもオオナなどの呼び名がありますが、どれも魚体が大きなことが由来となっているようです。

イシナギはスズキ科の魚とハタ科の魚によく似ていますが、モロコというイシナギの別名もハタ科のクエと同じために混同しやすいです。

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毒は肝臓にあり!ビタミンAの過剰摂取に注意

毒を持つ魚として知られているイシナギですが、その毒は肝臓にあります。

正確にはイシナギに毒成分があるわけなく、肝臓に多量のビタミンAがあるため、肝臓を食べると急性のビタミンA過剰症(食中毒)を起こす恐れがあるのです。

その含有量は非常に高く、肝臓1gにつき人が1日に必要なビタミンAの20~40倍もの量が含まれているのです。

そのため、わずか5~10gの肝臓を食べるだけでビタミンA過剰症が発症する可能性があります。

 

ビタミンA過剰症になった場合、頭痛嘔吐発熱皮膚の隔離(皮膚が剥がれる)などの症状が、食後30分~12時間程度で表れるとされています。

症状が治まるまで1ヵ月ほどかかる場合もあるようです。

そのため1960年には食品衛生法で、イシナギの肝臓の販売が禁止となりました。

 

また、イシナギだけでなく、肝臓にビタミンAを多く含んでいる魚はほかにもいます。

サメやマグロ、カツオなどの大型魚や、メヌケ、カンパチなどの肝臓も食べ過ぎには注意とされています。

しかし、そんな魚類の中でも、イシナギの肝臓はズバ抜けてビタミンAを多く含んでいるのです。

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ビタミンAが欠乏するとどうなる?

その一方で、ビタミンAは私たちが生きるためには絶対に必要なものでもあります。

成長、粘膜や皮膚の再生など、免疫力UPには欠かせない化合物でもあるのです。

ビタミンAを過剰に摂取した場合は、先ほど述べた通りですが、反対に欠乏すると夜盲症、いわゆる鳥目になるとされています。

 

ビタミンAからは肝油もとれますし、ビタミンA欠乏による夜盲症の薬として食べると良いとされているナツメウナギの乾物にも、イシナギ同様多くのビタミンAが含まれています。

ナツメウナギのビタミンAの含有量はイシナギに比べて少なくはありますが、もちろん食べすぎると中毒になることは言うまでもありません。

 

つまり他の栄養素と同じように、多く摂取しすぎても、または少なすぎても体には良くないというわけなんです。

しかし、もしも間違って過剰摂取して中毒症状が表れた場合には、直ちに医療機関を受診するようにしましょう。

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食すれば虜!美味なイシナギ料理

肝臓さえ食べなければ、イシナギは安全で美味な魚です。

もちろん店先にも並んでいますし、日常的に食べることができる魚です。

イシナギの身は筋繊維がしっかりしていて、たとえ日数が経ってもコリコリ感が劣ってくることはありません。

また熱を加えても見崩れすることもなく、プリプリした食感と歯ごたえを感じることができます。

 

多くの釣り人たちを虜にしているイシナギ料理には、

・お刺身、握り寿司、しゃぶしゃぶ、昆布しめ、漬け、塩焼き、バター焼き、煮付け、揚げ物

などがありますが、そのどれもが絶品料理として愛されています。

イシナギはどんな風に調理しても美味しいパーフェクトな魚なのです。

 

現在イシナギは、底引き網や延縄などで漁獲され食用として利用されています。

神奈川県の羽根尾遺跡からは、縄文時代前期のものとされるイシナギの骨が土出しており、日本では古くから私たちが食用としてきたこともわかっています。

弘法大使にまつわる民話にも登場するイシナギ。

古来の日本人たちがイシナギをどのようにして漁獲したのかは謎ですが、大きくて美味しいイシナギが多くの人々の命の源になったことは確かですね。

 

まとめ

イシナギ(オオイシナギ)は、最大2m200kgにもなる大型の魚です。

身は非常に美味しく、日本では古くから食用されてきました。

しかし、肝臓には多量のビタミンAが含まれており、5~10g食べるだけでビタミンA過剰症(食中毒)を起こす恐れがあります。

イシナギの肝臓は、食品衛生法で販売禁止となっているため市場に並ぶことはないと思われますが、もし自分で釣り上げることがあれば肝臓だけは食べないように注意してくださいね。

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