2017年5月に、名古屋城の外堀で体長140㎝のアリゲーターガーが発見され、大騒ぎになりましたね。
どうやら成長して飼いきれなくなったアリゲーターガーを、無責任な飼い主が無断で放流したようです。
今回の記事では「怪魚」として人気の高い、アリゲーターガーの生態や危険性について解説します。
目次
アリゲーターガーの種類
アリゲーターガーは、ガー目・ガー科・アトラクトステウス属に属する、大型の淡水魚です。
ガー目は、ガー科の1つにしか分類されず、「ガーパイク」とも呼ばれます。
そしてガー科は、2属7種に分類されます。
アトラクトステウス属はアリゲーターガーを含む3種に分類され、レピソステウス属は4種に分類されます。
アリゲーターガーは、さらにメキシコ産とミシシッピ産の2タイプが存在しています。
学名は「Atractosteus spatula」、英名は「Alligator gar」、和名は英名の直訳で「アリゲーターガー」ですね。
アリゲーターガーは古代魚?
アリゲーターガーは観賞魚の中では「古代魚」としても知られていて、祖先は今から2億1000年前~6500万年前のジュラ紀~白亜紀にかけて誕生し、古代の海を泳いでいました。
この時代は中生代とも呼ばれ、恐竜が大いに栄えた時代でもありました。
みなさんはメキシコのユカタン半島沖に隕石が墜落して、恐竜を始めとするたくさんの生き物が大量絶滅したことはご存知ですよね。
それが6600万年前のことです。
つまり、恐竜だけでなく、多くの水中生物も絶滅する中で、アリゲーターガーの祖先はたくましく生き抜いたことを意味しています。
人類の祖先であるホモサピエンスが誕生したのは、わずか20万年~10万年前の事なので、ガーパイクは「生きた化石」とも呼ばれ、貴重な魚とされています。
貴重な魚とされる理由は、
・原子魚類がもつ「ガノイン鱗」
・肺のように呼吸できる「浮き袋」
・幼魚に見られる「歪形尾」
といった原始的な特徴があるからです。
分布域、どんな場所に生息してる?
アリゲーターガーの分布域は、北アメリカ大陸と中央アメリカで、アメリカ合衆国南西部・メキシコ・ニカラグア・コスタリカなどの国々です。
生息地は、ミシシッピ川やリオグランデ川などの大きな河川の下流域・湖沼・湿地帯といった淡水域と、淡水と海水が混じった汽水域や、沿岸部などですね。
流れが穏やかで、浅い場所を好みます。
淡水魚ですが、淡水と海水の両方で生息可能な珍しい魚になります。
体の特徴
アリゲーターガーは、ガー目の中でも最大の大きさで、成長が早いことでも知られていて、北アメリカでは最大の淡水魚になります。
ミシシッピ産はメキシコ産よりも巨大化します。
体長は2mほどで、最大では体長約3mで体重約100kgにもなります。
縦に薄く、横に細長い体形をしていて、体色は黄色っぽい緑色や褐色です。
体は”ガノイン鱗”という、ひし形の非常に硬い鱗に覆われていて、ヒレはどれも小さいです。
学名の「spatula」はラテン語でスプーンを意味しますが、これは吻(ふん)と呼ばれるワニの口のように細長い部分がスプーンに似ていることが由来になっています。
また、英名の由来は、吻がワニに似ているからですね。
口を開けたところはワニそっくりで、鋭い歯が並んでいます。
体内の浮き袋には毛細血管があり、空気呼吸ができます。
食性と性質
アリゲーターガーの食性は動物食で、成魚は魚類を餌にしています。
まれにカメや水鳥を食べることもあります。
ふ化した直後はアカムシ・ボウフラ・動物プランクトンなどを餌にして、幼魚は昆虫・幼虫・小さい甲殻類を餌にしています。
肉食魚ですが、性格は穏やかで、人間を襲うことはないとされます。
寿命はオスが25年ほど、メスが50年ほどです。
繁殖方法
アリゲーターガーは、オスが生後6年、メスが生後11年で繁殖が可能となります。
繁殖期は水温が上がる時期や大雨で河川が氾濫する時期で、メスは4~7月になると77,000~138,000個もの卵を産みます。
産卵場所は水中の岩や水草で、6~8日でふ化します。
ちなみに卵には毒があるので食べられませんよ。
天敵は? 捕食者はいる?
成長して巨大化したアリゲーターガーは食物連鎖のトップにいるので、天敵や捕食者はいません。
ただ、幼魚のときは他の肉食魚に食べられることもあります。
アリゲーターガーは危険?
アリゲーターガーはその巨大な姿から、人をも襲う危険な魚だと噂されることもあります。
しかし、原産地においても人を襲ったというような報告はありません。
アリゲーターガーは、肉食性で食欲旺盛ではありますが、前述したように穏やかな性格をしています。
また、自分よりも小さな生き物を捕食しようとするらしいので、人間サイズはなかなか襲わないでしょう。
もし、アリゲーターガーにケガを負わされるとしたら、釣り上げた際でしょう。
アリゲーターガーは、鋭い歯、固く丈夫な骨格、硬いウロコ、を持っています。
釣り上げた際に、アリゲーターガーが暴れたせいでケガをしたという人は多数いるようです。
そしてなにより心配されているのは、在来種の魚などを大量に食べることでの生態系への影響です。
そのため、2018年から特定外来生物に指定されることが決定されました。
まとめ
アリゲーターガーは、最大で3mにもなる大型の淡水魚です。
本来日本には生息していませんでしたが、ペットとして飼っていた人が無責任にも放流した結果、最近では日本各地で発見されています。
人を襲ったという報告はありませんが、釣り上げた際にアリゲーターガーが暴れてケガをしたということは多数あるようです。
アリゲーターガーは日本でも飼育が可能でしたが、「特定外来生物」に指定されることが決定されました。
規制開始は、2018年4月です。
これを境にアリゲーターガーは「飼養・保管・運搬・放出・輸入」などが禁止されます。
アリゲーターガーを飼育するのも、繁殖するのも、移動するのも、逃がすのも、譲り渡すのも、売るのも、買うのも、ことごとく禁止になります。
これからは動物園などの施設で見るか、規制前から飼育している飼い主さんに頼んで見せてもらうしかありません。
魅力的な魚なので、ちょっと残念ですが、無責任な飼い主が飼いきれないからと、勝手に放流することが原因となったので仕方ないですね。