アリと言えば日本人である私たちに身近な存在であり、毎日せっせと餌を運ぶ働き者のイメージが強いですね。
当たり前のように存在し、とても小さな生き物であるため普段気に留めることはほとんどないと思います。
しかし、世界には人間をも襲う凶暴なアリが存在します。
その名も軍隊アリ。
テレビで紹介されるほか映画やゲームなどに登場することもあるので、ご存知の方も多いと思います。
今回は、そんな軍隊アリの生態や天敵、危険性についてみていきたいと思います。
軍隊アリとは?
軍隊アリは、巣を作らずに軍隊のような隊列を作りながら移動し続けるアリです。
一般的には、アリ科に属する
・サスライアリ亜科、ヒメサスライアリ亜科、グンタイアリ亜科
の3亜科に分類されているアリの総称です。
しかし、分類については近年新しい考えが出てきており、同じような習性を持つ新たな亜科のアリも軍隊アリとするなど、その系統は非常に複雑です。
軍隊アリの名は、まぎれもなくその軍隊のように集団で突き進む習性から名づけられました。
軍隊アリの体長は種類にもよりますが働きアリは約1.5cm、女王アリは約3~5cmと、私たちの身近にいるアリと比べると大きいです。
生息する地域によっても体長は異なり、日本の西表島に生息するヒメサスライアリ亜科の場合は約3mmと非常に小さいです。
軍隊アリは世界の熱帯雨林地域に生息しており、サスライアリ亜科はアフリカ、ヒメサスライアリ亜科はアジア、グンタイアリ亜科は南北アメリカに生息しています。
前述したようにヒメサスライアリ亜科は日本の西表島にも生息しており、その種類はヒメサスライアリとチャイロヒメサスライアリの2種と言われています。
軍隊アリの習性
それでは軍隊アリの習性について詳しく見ていきましょう。
軍隊アリは女王アリを中心としたコロニーを形成し、定住することなく餌を狩りながらジャングルを移動し続けます。
そのコロニーにいるアリは、数十万から百万ほどで最大2千万匹を超えるという非常に大きな組織です。
こんなにも多くの集団で移動できるのは、前線を歩いているアリのフェロモンを辿っているためと考えられています。
その移動スピードは時速1kmほどで、長さは20m近くにもなるそうです。
獲物を求めてただひたすらにコロニーで移動する光景は、アリであっても非常に恐ろしく感じますね。
軍隊アリには階級があります。
先ほど紹介した3亜科のいずれも女王アリ、雄アリ、働きアリと分かれ、働きアリはさらに、
・メジャー・・・隊列を守るグループ
・サブメジャー・・・獲物を運ぶグループ
・メディア・・・狩りを行うグループ
・マイナー・・・橋を作るグループ
の4つの階級に分かれ、それぞれ役割がはっきりとしています。
橋を作るというのは、通りにくい場所にさしかかるとマイナーたちが橋を作って通れるようにするということです。
お互いに助け合って行動する軍隊アリですが、女王アリが死んでしまうとあっさりとバラバラになってしまうという特徴もあります。
軍隊アリの生態、狩りと食性
軍隊アリは視力がなく盲目であると言われています。
そして、大きな鎌のように湾曲したアゴを持ち、その先端は鋭く強力であるため獲物に突き刺したらなかなか取り外すことができません。
視力がなくとも振動と匂いで獲物を探し、大きく強力なアゴによって狩りを行うのです。
軍隊アリの武器はアゴだけではなくお尻に毒針も持ち合わせています。
軍隊アリは獲物を見つけると、まずアゴで噛みつきます。
アゴは湾曲しているため肉に食い込み、一度噛みつかれたらどんなに暴れようともなかなかとれません。
そして相手に食らいつきながら毒針を何度も何度も突き刺し、獲物が弱っていくのを待つのです。
軍隊アリは肉食で気性が荒いため、移動中に出会った生き物はなんでも襲いかかります。
主な獲物はミミズですが、その他の昆虫や蛇などの爬虫類、鳥などさまざま生き物を食べます。
軍隊アリの危険性
軍隊アリは、つながれていて身動きが取れない牛や馬など大型哺乳類にも襲いかかり、難なく食い殺してしまいます。
自分よりも大きな相手に対しても果敢に攻撃を仕掛けるため、ジャガーのような肉食動物でさえも敬遠すると言われています。
人間も同様で、軍隊アリを見つけたらとにかく注意が必要です。
軍隊アリの1匹でも誤って踏んでしまうと、攻撃態勢に入った何万というアリたちに一気に襲撃されてしまうのです。
人間に対しても攻撃をしかけてきますが、すぐさま走って逃げれば難を逃れることができるでしょう。
しかし、弱っていたり身動きが取れない状況の場合は危険です。
実際に1歳の赤ちゃんが食い殺されたり、昼寝をしていた男性が襲われたという報告があります。
ジャングルで軍隊アリを見かけた場合は、決して近づいてはいけないのです。
しかし、3亜科のうちヒメサスライアリ亜科については他種のアリしか食べないため襲われる危険性はないでしょう。
日本の西表島にいる軍隊アリもヒメサスライアリ亜科で、体長3mmと非常に小さいこともあり人間を襲ったという報告は一切出ていません。
軍隊アリの天敵
集団でいれば怖いものなしといった印象もありますが、軍隊アリにも天敵は存在します。
それはテキサスホソメクラヘビです。
テキサスホソメクラヘビは軍隊アリに対しての忌避物質を分泌するため、軍隊アリはテキサスホソメクラヘビには攻撃できず逆に食べられてしまうそうです。
また、ハキリアリは苦手な相手とされていたり、アリジゴクにはまったらさすがに抜け出せないなど、軍隊アリにも苦手なものがそれなりにあるようです。
まとめ
軍隊アリは巣を作らず、軍隊のように集団で移動し続けるアリで、その数は数千万匹を超えることもあります。
肉食で気性が荒く、行軍中に出会った生き物に集団で襲いかかります。
牛や馬などの大型の動物にも襲い掛かり、時には人間が犠牲になることもある恐ろしいアリです。
人間をも襲う軍隊アリ。
ジャングルに住む人々からすれば厄介な生物かと思いますが、軍隊アリは害虫を食べ尽くしてくれるというメリットがあります。
もし家の中に軍隊アリが侵入してきたら見守るしかないなど大変な部分もありますが、人間から危害を加えない限り健康な人間を襲ってくることはほとんどないでしょう。
日本にいる分には全く関係のない話ですが、ジャングルに住む人々にとって軍隊アリは互いに共存しあう仲間なのかもしれません。