ニシキヘビといえば、とても大きなヘビというイメージだと思います。
「人間を丸呑みにした!」と世間を騒がせることが多いヘビですね。
この手のネタは作り話も多いのですが、ニシキヘビに関して言えば『本当に人間も“餌”になる』のです。
今回の記事では、ニシキヘビの生態や危険性について解説します。
目次
ニシキヘビとは
ニシキヘビは、有鱗目・ヘビ亜科・ニシキヘビ科の爬虫類の総称です。
ニシキヘビ科は、
・ニシキヘビ属(11種)
・オマキニシキヘビ属(11種)
・ヒメニシキヘビ属(4種)
・シロクチニシキヘビ属(1種)
・ワモンニシキヘビ属(1種)
・オオウロコニシキヘビ属(2種)
・パプアニシキヘビ属(1種)
・オセアニアニシキヘビ属(4種)
の8属35種に分かれます。
※分類に関しては亜種の扱いなども含めて諸説あります
さらにニシキヘビ属は「アフリカ・アジア系統」と「アジア・オーストラリア系統」に分けることもあります。
ちなみに、世界最大のヘビで有名なアミメニシキヘビは「ニシキヘビ属」で「アジア・オーストラリア系統」に、凶暴な性格で有名なアフリカニシキヘビは「ニシキヘビ属」で「アフリカ・アジア系統」に分類されます。
分布域、どんな場所に生息してる?
ニシキヘビの分布域は、アフリカ大陸・ユーラシア大陸・オーストラリア大陸・ニューギニア島になります。
※ユーラシア大陸には東南アジアの島々も含むとする
ニシキヘビ属のみ、アフリカ大陸とユーラシア大陸に分布します。
他の7属は、オーストラリア大陸とニューギニア島に分布しています。
生息域は、森林・サバンナ・砂漠・岩場・水辺・湿地・熱帯雨林など、種によってさまざまですね。
ほとんどは地上で生活する地表性ですが、ミドリニシキヘビなど一部は樹上性になります。
地表性でも、インドニシキヘビのように木登りや泳ぎが得意な種もいます。
体の特徴
ニシキヘビの体長は50㎝~10.1m、体重は140g~145㎏で、種によってかなりばらつきがあります。
ニシキヘビは体が大きくなることも有名ですが、最大種のアミメニシキヘビは、爬虫類の中で「最長種」になります。
他にも、アフリカニシキヘビやインドニシキヘビは、6m級の大型種になります。
最小種はアリヅカニシキヘビで、大きくなっても70㎝ほどです。
小さなニシキヘビの種がいるのは、意外ではありませんでしたか?
ニシキヘビは胴体の筋肉が発達しているため、同じ長さでもスリムな毒蛇と比べると大きく見えます。
柔軟に開閉できる肋骨と、胸骨がないおかげで、自分の胴回りよりも大きな獲物を呑み込めます。
体色や模様は、ソリッド(パターンレス)・2トーン・ストライプ・リング・レインボーなど種によってさまざまです。
小さい目・縦長の瞳孔・ピット器官が顔部分の特徴ですね。
ニシキヘビのほとんどの種には総排出腔の両側に、退化した足の名残とされる後肢痕跡がつめ状にあります。
現在ではオスが交尾の時、メスの背中を引っかいて交尾を促すために使われています。
なぜ大きな獲物を呑めるのか?
昔は顎の骨を外して大きな獲物を呑み込むと言われてきましたが、実際は違います。
わかりやすく説明すると、上顎と下顎をつなぐ骨が2本あり、2段階で顎を大きく広げることができるのです。
おまけに下顎は右半分と左半分に分かれていて、伸縮する靭帯(じんたい)で繋がっています。
さらに、喉に向いて生えている鋭い歯は、獲物を逃がさないだけでなく、顎を少しずつ動かすことで獲物を奥へ奥へと移動させることができるのです。
手足がない分、口周りの進化がすごいですね。
世界最大のニシキヘビのサイズ
世界最大のヘビは、1912年にインドネシアのスラウェシ島で発見されたあと、殺されてしまったアミメニシキヘビが33フィート(10.1m)でした。
生きて捕獲されたヘビとして公式記録中最大のヘビは、メデューサと名前をつけられギネスブックに載ったアミメニシキヘビで、体長約7.67m、体重約136㎏にもなります。
ニシキヘビの生態
ニシキヘビの食性は動物食で、カエル・トカゲなどの爬虫類・鳥類・哺乳類などを食べ、まれに家畜や人間を食べることもあります。
小型の種はカエルやトカゲなどを好み、大型になるほど哺乳類を好む傾向にあります。
基本的にニシキヘビはゆっくりと動きますが、獲物を捕らえる時は素早く動くことができます。
獲物に咬みつき、ジリジリ巻き付き、締め上げ、心臓を止めて殺してから呑み込みます。
うっかりワニを生きたまま呑み込んで、お腹の中で返り討ちに遭ったニシキヘビもいたそうです。
飲み込んだ獲物が大きいと消化に時間がかかるため、1度食べると1週間~1ヵ月ほど何も食べないでいられます。
ニシキヘビはほとんどが夜行性ですが、日中でも移動したり、日光浴を楽しんだりもします。
気温が低下する地域に生息する個体は、冬眠することもあります。
ニシキヘビは全ての種が卵生です。
メスは卵の上にとぐろを巻き、体を小刻みに震わせて体温を上げ卵を温め、50~80日ほどでふ化させます。
卵の数は、小型種で大きめの卵を5~15個、大型種では小さめの卵を30~100個ほど産みます。
ニシキヘビの寿命は種によってさまざまです。
ペットにするつもりなら、15~30年は生きると考えた方が良いですね。
ちなみにアミメニシキヘビの寿命は約30年ほどです。
ニシキヘビは危険な蛇?
ヘビと言えば、毒というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
しかし、ニシキヘビ科のヘビは、すべて無毒のヘビになります。
もしも飼っているニシキヘビに咬まれたり、海外旅行先などで咬まれた場合には、いわゆる切り傷や擦り傷と同じ手当をしましょう。
無毒ではありますが、かといって安全なヘビというわけではありません。
ニシキヘビは捕食の際、まず獲物に咬みついてから巻き付き、心臓を止めるほどの力で締め上げます。
インドニシキヘビのように穏やかな性格でも、アフリカニシキヘビのように獰猛な性格でも、関係ありません。
ニシキヘビはは胴体の筋力が非常に発達しており、人間も含む獲物を死に至らすほどの強い力が危険視されています。
さらに、大型種のアミメニシキヘビ・アフリカニシキヘビ・インドニシキヘビなどは、人間を食べてしまったという報告が世界各地であります。
特に、アフリカニシキヘビは気性が荒く危険だと言われています。
ニシキヘビによる事件
また、ニシキヘビは人間を呑み込めるほど大きくなくても、締め付ける力が強いため、人間が絞め殺される事故も多いですね。
日本では2012年、6.5mもあるペットのアミメニシキヘビに襲われて、66歳の男性が亡くなるというニュースが大きく報道されました。
海外ではインドネシアで2017年3月、行方不明になっていた地元の25歳の男性が、全長7mのアミメニシキヘビの腹の中から遺体となって見つかりました。
また最近では、これまたインドネシアで2018年6月、畑仕事をしていた地元の54歳の女性が、全長7mのアミメニシキヘビに丸のみにされ、ヘビの腹の中から遺体となって発見されました。
この動画のように、人間が食べられてしまったという話があるのは事実です。
しかし、ニシキヘビが好んで人間を襲うわけではなく、基本的に珍しい事件と言えます。
世界各地にいる毒蛇の方が、人間にとってはるかに危険と言えるでしょうね。
まとめ
ニシキヘビは、大型種では6mにもなる大きな個体もいます。
ニシキヘビ科のヘビは無毒ですが胴体の筋力が非常に強く、人間を含む大きな動物を絞め殺すことが出来るほどです。
人間を好んで捕食することはありませんが、ニシキヘビに殺され丸呑みにされたという事件が起きているのも事実ではあります。
ちなみに、大型種のニシキヘビは、「家畜を丸呑みにした」「人間を丸呑みにした」と何かとニュースになりますが、成長途中の場合、他の肉食動物の餌になる事が多いのです。
その証拠に、メスはたくさんの卵を産みますよね。
あれが全部成長したら大変な騒ぎです。
無敵に思えるニシキヘビでも、隙を見せたら自分自身が食料になってしまうのですね。