突然ですが、皆さんはクサフグという魚はご存知ですか?
クサフグは釣りえさを盗み、釣り糸やルアーを食いちぎるということで釣り人の間では外道として嫌われているフグの一種です。
個人的に、見た目は結構かわいいと思うのですが…
彼らの生態はどんなものなのでしょうか?
また、毒は持っているのでしょうか?
今回は、クサフグの生態や毒性について紹介していこうと思います。
クサフグってどんな魚?
クサフグは、スズキ系フグ目フグ亜目フグ科トラフグ属の魚です。
体長約15~25センチメートルほど、体の色は背中が暗い緑色で、(この緑色=草フグの名前の由来)白い斑点がいくつもあります。
お腹側は白く、ひれは黄色がかっています。
クサフグの特徴として、胸びれの後ろ側と背びれの付け根に大きな黒い斑点があり、背中と腹側には小さな棘があります。
国内では、北海道から沖縄まで幅広く生息しています。
臆病な魚で、敵の魚から身を守るために砂地に潜る習性があって「スナフグ」と呼ばれることもあります。
ゴカイやカニ、エビ、貝などの生き物を食べて暮らしています。
クサフグは川を上る!淡水でも大丈夫?
クサフグは決して泳ぎが得意とは言えません。
ところが、彼らはわざわざ川を遡ります。
海の魚が、しかも泳ぎが得意ではないのに、どうして淡水である川へと向かうのでしょうか?
川を遡る理由はよく分かっていないのですが、一説では体に付いた寄生虫や細菌を取るためではないかと言われています。
フグは怒ると体を膨らませますよね。
膨らむために固い鱗を持たない皮膚になったのですが、鱗が無く柔らかい皮膚にはどうしても寄生虫や細菌が付きやすくなります。
淡水である川に来ると浸透圧の関係(濃い塩分濃度の方に薄い塩分濃度の方から水が移動して薄まろうとする作用)で寄生虫を弱らせたり、皮膚から新しい粘膜が出てきて、古い粘膜と細菌を一緒に剝がしとっていると考えられています。
浸透圧の影響で、クサフグ自らの体液が薄まって弱ったりしないのでしょうか?
川の流れに逆らって泳ぐのもかなりエネルギーを消費するのではないでしょうか?
いずれにしても命がけ。不思議ですよね。
産卵するのも命がけ
クサフグの産卵は5~7月大潮の日に見られます。
数百~数千匹ものクサフグの大群が波打ち際に押し寄せ、砂浜や砂利の上に上がってメスが産卵し、そこにオスたちが精子をかけます。
それは海水が白く濁る程です。
しかし、なぜ、危険な陸上に上がってまで産卵しようとするのでしょうか?
海の中の方が安全な気がしますが。
これにはちゃんと理由があります。
大潮の日は水面がいつもより高く、普段は水面から出ている砂浜や砂利の上で産卵すれば、卵が他の魚などに狙われる危険性が低くなります。
クサフグの卵は多少の乾燥にも耐えることが出来るので、ギリギリ波しぶきがかかるくらいの高さであれば生きていけるのです。
自然の仕組みはうまくできていると感心させられます。
産卵したクサフグたちは、返す波に乗って再び海へと戻っていきますが、中には陸で命を落としてしまう者もいます。
子孫を残すのもまさに命がけの行為です。
海の中は弱肉強食の厳しい世界。
卵から孵っても無事に大人に成長できるのはほんの僅かです。
クサフグに毒はあるの?
クサフグも他のフグと同様にテトロドトキシンという猛毒を持っています。
彼らは最初から毒を持っているわけではなく、餌を食べていくうちに毒を体の中に貯め込んでいきます。(これを生物濃縮と言います。)
完全養殖で育てたフグには毒が無いという話は聞いたことがあるかもしれません。
クサフグのテトロドトキシンは、肝臓や卵巣などの内臓と皮に多く含まれています。
万が一、誤って食べてしまうとしびれや吐き気、筋肉のけいれんなどを引き起こし、最悪の場合、呼吸が停止し死に至ります。
テトロドトキシンは、水で洗い流すことはできず、熱を加えても分解されず、解毒剤も存在していません。
筋肉は食べることができますが、微量の毒が含まれているため、食べすぎてしまうのは危険です。
「河豚は食いたし命は惜しし」ということわざがあります。
決して、自分では調理せず、免許を持ったフグ調理師さんに捌いてもらいましょう。
ちなみに、クサフグの筋肉は淡白で美味しい白身だそうです。
まとめ
クサフグは、日本のほとんどの海に生息しています。
その内臓や皮には猛毒のテトロドトキシンが含まれていますので、決して食べないようにしましょう。
筋肉は食べることができますが、フグの調理免許を持った人じゃないと捌いて提供してはいけません。
釣り人には外道と嫌われるクサフグですが、厳しい自然の中で一生懸命生きているという事を知っていただけたでしょうか?
もし、近所にクサフグが産卵する場所があったら、ぜひ一度見に行ってみて下さい。