海には毒を持つ危険な魚がたくさんいます。
その一つにアイゴという魚がいます。
釣りのお好きな方は恐らくご存じでしょう。
アイゴのヒレには毒を持った鋭い棘があり、触ると危険であることと独特の磯臭さから外道として扱われることも多いですが、食用として好まれる地域もあるようです。
毒のある棘を持つアイゴ、一体どのような魚なのでしょうか。
今回は、アイゴの生態や毒性、刺された時の対処法についてご紹介させていただきます。
アイゴの生態
アイゴはスズキ系スズキ目アイゴ科に属する魚です。
温帯から熱帯の海に生息するため、日本では沖縄は九州など主に西日本に分布しています。
しかし、最近では温暖化による海水温の上昇が原因で関東地方でも漁獲されることが増えてきました。
体長は成魚で20~40cm程度、大きい個体だと45cmほどにもなり、大きさは種類によって異なります。
体色は緑褐色や灰褐色で、黒っぽい数本の縞模様と白斑点があります。
体色やこの白斑点は生息環境や刺激により変化し、個体差が大きいのが特徴です。
体形は葉っぱのように側扁形で平たく皮膚は比較的頑丈です。
また、口は小さく唇が厚いです。
背ビレや腹ビレ、尻ビレには太く鋭い棘があり、この棘には毒があるので刺されると痛みます。
産卵期は7~8月で、卵を産んでから1~2日で全長2.5mmほどの稚魚が孵化します。
基本的には群れで生活し、沿岸の岩礁域や藻場で海藻や甲殻類、ゴカイといった多毛類を食べて生活しています。
幼魚の時は草食なのですが、成長とともに雑食へと変化していくのです。
アイゴ科の魚は27種類確認されており、本州中部と沖縄地方に生息している種類は異なります。
本州にはアイゴやヒフキアイゴやヒメアイゴなどが、沖縄地方ではゴマアイゴ、アミアイゴやシモフリアイゴなどが生息しています。
熱帯に近づくほどその種類は増えるようです。
一般的なアイゴは沖縄地方には生息していませんが、シモフリアイゴと遺伝子的に同種と言われています。
本州に生息しているアイゴは比較的白斑点が大きく、シモフリアイゴなどは多数の細かい白斑点が広がっています。
体色や白斑点の模様は生息地域によって異なるため同じアイゴ科とは認識しづらいですが、側扁形の体、小さい口に厚い唇、ヒレの棘には毒があるという点は共通しているのです。
名前の由来と地方名
アイゴという名前の由来は、体が藍色であるためという説や、昔はトゲのある植物の“イラクサ”を“アイ”と呼び魚のことを“ゴ”と呼んでいたため、棘のある魚ということでアイゴになったという説があります。
アイゴには地方名も多く、イタイタ、シャク、バリ、アイ、ヤーノイオ、エーグヮー、シラエーなどさまざまです。
イタイタやヤーノイオなどは毒を持つ棘が由来で、バリはアイゴの身が臭いことから小便=バリと名付けられたようです。
こんなにもたくさんの地方名があるのは、それだけ身近にいる魚ということなのでしょう。
アイゴの毒性
さて、アイゴのヒレにある棘についてですが、先ほども述べたとおり背ビレや腹ビレ、尻ビレの棘には毒腺があります。
もしうっかり棘に刺されてしまうと強烈な痛みがあり、その痛みは半日から数日続きます。
ひどい場合には痛みが数週間続くこともあります。
また、患部は赤く腫れ、しびれや麻痺、関節痛が起きる場合もあります。
アイゴの毒はたとえアイゴが死んでいても消えることはありません。
もし釣り上げた場合には、はじめにヒレをすべて切り落としてしまうと安全ですが、くれぐれも扱いには気をつけましょう。
また、切り落としたヒレはそのまま放置せず、すぐに海に捨てるなど棘に刺される危険性を減らしましょう。
刺された時の対処法
それでは、もし刺されてしまった際の対処法についてご説明します。
1、まずは患部を洗い流してできるだけ毒を絞り出してください。
ポイズンリムーバーという毒を絞り出す道具があるので、海へ行く際は念のため準備しておくのも良いでしょう。
2、そして40℃~45℃程度のお湯に患部を30分以上浸けましょう。
アイゴの毒はタンパク毒であるため熱によって不活化し痛みが和らぎます。
本来であれば60℃以上の熱で毒は無毒化するようです。
しかし、さすがにそれでは火傷をしてしまうので、火傷しない程度のお湯に長時間浸けるようにしましょう。
お湯が無い時は、自販機で温かい飲み物を買って患部に当てるといいでしょう。
3、痛みが続く場合、他の症状が出てきた場合は病院へ行きましょう。
いずれにしても、これだけで痛みが治まるわけではありません。
ある程度痛みが治まったところで病院へ行って診てもらいましょう。
ちなみに、患部におしっこをかけると良いという話やアイゴの目玉をくりぬいて患部に塗ると良いという話もあるようですが、これらについては全く根拠がありません。
興味本位で試さないようにしましょう。
アイゴは美味しい?
冒頭でも述べたとおり、アイゴの体にはアンモニア臭のような磯臭さがあります。
また、内臓もとても臭く、これはアイゴが主に海藻を食べることと腸が非常に長いことから、どうしても匂いがきつくなってしまうようです。
このため、東日本ではほぼ食用としてなじみはありません。
しかし、徳島県や和歌山県、沖縄県など好んで食する地域もあります。
定置網や釣りなどで普通に漁獲されることから、四国、九州、沖縄では市場に出回っているのです。
食べ方としては、刺身、煮付け、一夜干し、などがあり、沖縄にはアミアイゴの稚魚を原料とした“スクガラス”という塩辛があります。
島豆腐に乗せて食べるのが一般的で、スクガラスは現地のスーパーで普通に売られています。
匂いがきつい魚ではありますが、釣り上げてすぐに内臓を傷つけないように取り除いてしまえばおいしくいただけるようです。
このとき、内臓を傷つけないことだけではなく、ヒレの棘に刺されてしまわないように、くれぐれも慎重に処理をしてください。
まとめ
アイゴは、主に西日本に生息する海水魚です。
それぞれのヒレには毒棘があり、刺されると半日~数日ほど痛みます。
毒はタンパク毒なので、もし刺されたら患部を温めるようにしましょう。
アイゴは匂いがきつい魚ではありますが、一部地域では食用とされています。
釣りあげた際、調理する際は、うっかり毒棘に刺されないように慎重に扱うようにしましょう。