冬になると北日本に飛来してくる白鳥、言わずと知れた渡り鳥ですね。
その美しい声を聞くと、冬がやってきたという実感が湧きます。
大きな羽を広げて飛んだり、水面を優雅に泳ぐ姿はとても美しいですね。
チャイコフスキーのバレエ曲『白鳥の湖』からも優美なイメージしか湧いてきません。
しかし、実は白鳥は、非常に凶暴で危険な鳥としても知られているのです。
一体どういうことなのか?
今回は、白鳥の生態や危険性、凶暴性についてご説明したいと思います。
白鳥とは
白鳥は、鳥綱カモ目カモ科ハクチョウ属に属する水鳥を指します。
オオハクチョウ、コハクチョウ、アメリカコハクチョウ、ナキハクチョウ、 コブハクチョウ、クロエリハクチョウ、カモハクチョウの7種が分類されています。
シベリアやオホーツク海沿岸、北極圏近辺で繁殖し、冬季は越冬のため日本などに南下してくる渡り鳥ですね。
『日本書紀』にも記載があるなど、日本では古くから馴染のある鳥のようです。
7種の白鳥のうち、日本に飛来してくるのはオオハクチョウとコハクチョウの2種です。
繁殖地では冬場は餌が凍りついてしまうため、彼らは何千キロも離れたこの日本にはるばるやってくるのです。
体の特徴、オオハクチョウとコハクチョウの違いは?
空を飛ぶ鳥の中では大型の種で、オオハクチョウは体長140~160cm、体重8~12kgで、コハクチョウは体長110~150cm、体重4~8kgにもなります。
翼を広げると2mを超えるほどの大きさになるので、近くで見るととても迫力があります。
羽毛は雌雄ともに全身白色で脚は黒色、クチバシは先端は黒色ですが付け根は黄色なのが特徴です。
オオハクチョウ コハクチョウ
オオハクチョウとコハクチョウの違いは、体の大きさとクチバシの色の割合から見分けることができます。
オオハクチョウのほうがコハクチョウよりもクチバシの黄色部分が大きく、頸もオオハクチョウのほうが長いです。
2種を見比べれば識別できますが、見た目はほとんど同じであるためパッとみてすぐ理解できる人は恐らく少ないでしょう。
幼鳥の時期は、2種ともに全身が灰白色の羽毛に覆われています。
『みにくいアヒルの子』という童話でも有名ですね。
幼鳥は2年ほど経つと、大人と同じ白色羽毛に変わっていきます。
生態
さて、日本に飛来してきた白鳥は、主に北日本で見ることができます。
オオハクチョウは北海道や東北地方、コハクチョウはもう少し南の北陸や中部地方あたりでも確認されたことがあるようです。
主に大きな河川や湖、沼、水田、入り江などで過ごします。
日中はえさを食べたり羽づくろいや昼寝などをして過ごし、夜は水上や水辺で浮いた状態で眠るのですが、眠る際は頭を背中にまわしてクチバシを羽の中に入れた状態で眠ります。
水上で眠るのは外敵に襲われにくくかつ逃げやすいためと言われています。
因みに、白鳥の羽はお尻にある油脂腺から分泌される油を塗りつけることにより撥水性があります。
これは白鳥に限らず水鳥全般に言えることですが、これによって羽毛の間に空気をため込むことができるため水に浮くことができるのです。
白鳥のえさは水底の水草の葉や茎、根、藻や堆積物などが主ですが、雑食性であるため昆虫や貝、甲殻類なども食します。
水田では歩きながら収穫後の落ち穂なども食すようです。
白鳥の繁殖
オオハクチョウとコハクチョウは春から秋にかけて、遠いシベリアの地で繁殖します。
ほとんどの白鳥のつがいは、一度強い絆で結ばれるとどちらかが死ぬまで生涯連れ添います。
同様に親子の絆も強いです。
白鳥は、つがいになると水辺付近の土に木の枝や枯れ葉などを使って巣を作ります。
そして2~7個の卵を産み、オオハクチョウは40日前後、コハクチョウは30日前後温めたのち孵化します。
産まれた雛は早速、水辺にて親鳥からえさの取り方などを学び、2~3ヶ月後には自力で飛べるようになります。
そして、4~5ヶ月には大人と同じ大きさにまで成長します。
冬が近づいてくると越冬のため長距離移動をしないとならないため、ゆっくりとはしていられないのでしょう。
なお、白鳥の平均寿命は15年で、特にコハクチョウは長生きする種のようで、シベリアでは36歳の個体がいたという記録が残っています。
白鳥の危険性、殺された人もいる!?
生態を見る限り、非常にのんびりおっとりと一日を過ごしているように思いますが、実は白鳥は繁殖期には凶暴化します。
子育て中はとても警戒心が強いため、むやみに巣に近づくと容赦なく襲いかかり噛みついてきます。
イギリスのマサチューセッツでは、コブハクチョウの巣に近づいた幼児が親鳥に殺されたという死亡例があり、アメリカのニューヨークでは、同じくコブハクチョウの巣に近づいた成人男性が殺されています。
幼児の場合は水中に押さえつけられたことによる溺死、成人男性の場合は襲われたことによる心臓麻痺です。
白鳥は羽を広げると2m以上になり、迫力あるその大きな体で襲われたらもはや恐怖しかありません。
力も強いため、その羽で襲われたら大怪我をすることでしょう。
繁殖期でなくても、彼らは縄張り意識も強いため、自分たちの群れやえさ場に近づいてきた他の鳥に対しても攻撃的です。
威嚇のために鳴いたり、噛みついてきたりするのです。
そのため、繁殖期ではない日本にいる間も危険であると言って良いでしょう。
白鳥を見かけたらつい近づきたくなりますが、怪我をしないためにも決して近づかないようにしましょう。
まとめ
優雅なイメージがありながら実は危険な鳥である白鳥。
つがいが生涯ともにすることから愛のシンボルとしても用いられているため、なかなか信じられないかもしれません。
しかし、絆の強い鳥であるため、繁殖期に凶暴化するのは当然のことかもしれません。
自分の雛を守るための必死の抵抗なのです。
白鳥に限らず、野生の鳥たちにしてみたら人間は全く未知の存在です。
私たち人間にとっては興味の対象である白鳥ですが、その興味は彼らにとっては脅威でしかないということを忘れてはいけないですね。