アカザは、今や若い人には馴染みの薄い魚になってしまいました。
昔の子供は川で遊んでいるとアカザに刺されて痛い思いをしたものですが、今は生息数が減ってしまい「子供が川で毒のある魚に刺された!」なんて騒動は聞かなくなりました。
今回は、アカザの生態や毒性についてご紹介させていただきます。
アカザとは
アカザは、ナマズ目・アカザ科・アカザ属で、1属1種の淡水魚です。
学名は「Liobagrus reini」、英名は「Torrent catfish」「Loach catfish」「Reddish bullhead」、和名は岐阜県郡上八幡での呼び名「アカザ(赤佐)」、その由来は「赤くて刺す魚」です。
和名の由来は他にもあって、植物の「アカザ」、背中が赤褐色なので「赤い背中」などさまざまです。
分布域が広いからでしょうね。
和名は他に「アカネコ」「アカナマズ」「アカギギ」「アカザス」「アカニコ」「アカメロ」「オイシャハン」「ガナッチョ」「ホトケ」など複数の地方名(呼び名)があります。
分布域、どんな場所に生息している?
アカザは日本の固有種で、分布域は秋田県雄物川と宮城県阿武隈川以南の本州・四国・九州です。
ただし、分布域は連続しておらず、関東平野の河川には自然分布していないとされます。
生息地は、水温が低く、澄んだ河川の上流下部~中流域になります。
礫と言われる小石がゴロゴロしている川底を好みます。
アカザは高温には適応できず、水温が25℃以上になると死ぬ場合もあります。
また、きれいな水を好むため、水質の「指標生物」にもなっています。
環境調査の際にはある条件にのみ敏感になる生物の性質を利用することがありますが、その際に利用される生物を「指標生物」と呼びます。
アカザの場合、「きれいな水の河川」という条件で環境を調査するときに「指標生物」となり、アカザがたくさんいた河川は「きれいな水」という調査結果になるのですね。
体の特徴
アカザの体長は10㎝前後で、最大でも15㎝ほど、ナマズの仲間では小型です。
円筒形の細長い体形はドジョウに似ていて、英名の由来にもなっています(Loachはドジョウの英名)。
真上から見ると、頭部が大きく、尾にかけて体の厚みが薄くなるのが分かります。
体色は赤褐色ですが、体が小さい時は鮮やかな赤色をしています。
ちょっと硬めの白色っぽい口ひげは上顎に2対、下顎に2対、合計4対8本のヒゲが生えています。
胸鰭に1本ずつと背鰭に1本、毒のある刺条を持っています。
脂鰭は緩やかに弧を描きながら尾鰭と繋がっていて、尾鰭はうちわのように丸くなっています。
アカザはギギやキバチと似ていることでも知られていますが、体の側面を真横に貫く側線が不鮮明なので、すぐに見分けられます。
アカザの生態
アカザの食性は動物食で、主に水生昆虫や小魚を餌にしています。
完全な夜行性なので、日中は水底の石の下・岩の隙間・水草の間に隠れています。
移動するときは、水底の石の間をぬうように動きます。
夜行性なので、分布域が広い割に知名度は低く、また研究もあまり進んでいない魚です。
アカザの繁殖期は初夏で、オスはこの時期になると体の色が黒っぽくなり、頭部から背中にかけて筋肉がモリモリしてきます。
頭部の盛り上がりは2つのコブのように見えますね。
メスはゼリー状の物質に包まれた卵をひとかたまりに産み落とし、オスはその卵を守ります。
より逞しいオスがメスをゲットして、卵を外敵から守るのですね。
アカザの毒性
アカザの刺条には毒腺があるため(毒棘)、刺されると短時間ですが激しい痛みに襲われます。
長野県では「サソリ」と呼ばれることもあるくらいです。
しかし、あっても微量な毒とされています。
刺された際の対処法としては、患部をよく洗い、消毒をして、細菌による2次感染を防ぎましょう。
ポイズンリムーバーという毒を絞り出す道具があるので、念のため常備しておくのも良いでしょう。
もし、痛みがあまりにも激しい時には、病院へ行って手当てを受けることをおすすめします。
まだ地方が開発されていない時代には、田舎の河川では普通に見られた魚でしたが、今は生息地の環境破壊や、農薬が河川に流出したことによる餌の減少で、アカザの数も減っています。
私たちが普段河川で遊んでいても、滅多に遭遇できなくなりました。
人間への危険度は低いと言えますし、むしろアカザに対する人間の危険度が増してしまい、絶滅危惧種に指定されてしまいました。
アカザは食べられる? 美味しい?
アカザは現在観賞用に流通していますが、食べることもできます。
旬は春~初夏です。
福井県では甘露煮やなれ寿司、岐阜県ではから揚げ、徳島県では煮つけで食べられています。
まとめ
アカザは、日本の固有種で本州・四国・九州の水がきれいな川に生息しています。
微量ですが、刺条には毒があるため刺されると激しい痛みを感じます。
ちなみに、アカザは絶滅危惧種ですが、天然記念物ではないので、意外にもペットショップで購入可能です。
10㎝前後の個体が1匹500~600円ほどで購入でき、もちろん飼育も可能です。
ただし、餌はアカムシという生餌が必要となるので、赤くて短いミミズみたいな餌を触ることができれば、飼うことができますよ。
私には絶対無理です…アカムシは見るのも嫌です。