暖かくなってくると発生する蚊。
5月頃から草むらなどに行くと刺されることがあり、非常に不快な思いをしますよね。
また、蚊は刺されるとかゆいだけでなく、デング熱やジカ熱といった病気を媒介することでも有名です。
媒介する病気は蚊の種類によって異なりますが、マラリアという病気を媒介する種にハマダラカがいます。
今回は、ハマダラカの特徴や生態、媒介するマラリアの危険性についてご説明したいと思います。
ハマダラカとは
ハマダラカ(羽斑蚊)は、双翅目カ科ハマダラカ亜科ハマダラカ属に属する昆虫の総称で、ハマダラカ属に属する種はアノフェレスとも呼ばれます。
ハマダラカは世界中に約460種いるとされ、日本にはハマダラカ亜属9種(モンナシハマダラカ、ヤマトハマダラカ、シナハマダラカなど)とタテンハマダラカ亜属2種(コガタハマダラカ、タテンハマダラカ)の生息が確認されています。
ハマダラカという和名は翅に白黒の斑紋があることから名づけられました。
ハマダラカは人にマラリアを媒介する蚊で、世界に存在する約460種のうち約50種が人にマラリア原虫を媒介することが確認されています。
日本に多く存在するのはシナハマダラカで、日本全土に生息しています。
成虫の大きさは約5.5mmで、翅に白黒の斑紋があるほか、触鬚や肢にも白色斑点があります。
夜行性で、人や牛などの大型哺乳類を吸血し、三日熱マラリアや日本脳炎を媒介します。
タテンハマダラカ亜属のコガタハマダラカは熱帯地域を好み、宮古・八重山諸島などに生息しています。
同じく人を吸血し、熱帯熱マラリア、三日熱マラリアや四日熱マラリアを媒介します。
ハマダラカの生態
ハマダラカは、他の蚊同様、卵、幼虫、蛹、成虫といった4つの過程をふんで成長していきます。
ハマダラカの卵には浮き袋があるため水面に浮きます。
卵は2日ほどで孵化しますが、幼虫にも水面に対して平行に浮くといった特徴があります。
成虫になるまでは水中で過ごしますが、主に田んぼや湿原、池や川のよどみ、排水溝といったところにいます。
成虫になると川沿いの草むらなどに潜み、夜間に家屋に侵入して吸血行動をとります。
ハマダラカは、吸血時には口吻と体が一直線となり、尻をあげて体を斜めに一定に保つ特徴があります。
また、吸血して満腹になると壁などに止まって休息するといった習性があります。
マラリアという恐ろしい病気を媒介する恐ろしさがありますが、人が無防備な状態である夜間に吸血するため、完璧に虫よけ対策をすることは難しそうですね。
ハマダラカの危険性
ハマダラカは、世界中の熱帯・亜熱帯地域に生息しています。
広い水源を好むため、熱帯雨林地帯や草原、農作地帯に発生することが多く、これらの地域ではマラリアが問題となっています。
毎年、およそ2億人がハマダラカによってマラリアに感染し、そのうちの約40~60万人が亡くなっていると言われています。
特に東南アジアやアフリカ、中南米での感染者が多いです。
これらの地域では5歳以下の子どもでマラリアが発症することが多く、重症化して死亡する危険性も高いです。
実際に、マラリアによる死亡者のおよそ3分の2が5歳以下という結果が出ているようです。
さまざまな対策により子どもの死亡者は減ってきているものの、完全にマラリアを撲滅するという状況までには至っていません。
マラリアの症状
さて、ここでマラリアについて詳しくみていきましょう。
マラリアとは急性の熱性疾患で、ハマダラカが媒介するマラリア原虫という寄生虫によって引き起こされる病気です。
人に感染するマラリア原虫は4種類(熱帯性、三日熱、四日熱、卵形)で、熱帯性マラリアと三日熱マラリアが危険と言われています。
蚊に刺されてから1~4週間ほどで発症しますが、マラリアが発症すると、40度近い高熱に襲われます。
他にも寒気や頭痛、嘔吐、関節痛といった症状があらわれます。
熱は比較的短時間で下がりますが、三日熱マラリアの場合は48時間おきに繰り返し高熱に襲われます。
熱帯性マラリアの場合は、発症から24時間以内に治療をしないと重症化して死に至る危険性があるといわれます。
また、三日熱マラリアなど他のマラリアにおいても、病気を放置すると慢性化することがあり、3度目の高熱が起きると非常に危険な状態になるようです。
子どもが感染して重症化すると、重度の貧血や脳マラリアといった症状もあらわれます。
年齢にかかわらず重症化すると、脳症や腎症、肺水腫といったさまざまな合併症が引き起こされるため、マラリアに感染したと分かった時点ですぐに治療を始める必要があるのです。
日本にもいるハマダラカ
前述したように、日本にもマラリアを媒介するハマダラカが生息しています。
特に、熱帯熱マラリアや三日熱マラリアを媒介するコガタハマダラカが生息している宮古・八重山諸島は注意する必要があります。
幸い、現時点では日本でマラリアは流行していません。
しかし、海外渡航などにより、日本でも約100人が感染・発症しています。
日本では1960年代に一度マラリアが撲滅されたものの、マラリアを媒介するハマダラカが生息している限り、いつまた流行するか分かりません。
マラリアは人から人には感染しないものの、感染者の近くにハマダラカがいた場合他の人に感染する可能性はあるのです。
対策予防は?
ハマダラカは草むらや水辺に生息していることが多いですが、都市部の公園などにも発生する可能性はあります。
ハマダラカに刺されないためには自己防衛するしかありません。
活動時間帯の夕暮れ時以降に発生地域に行く場合は長袖長ズボンの着用、虫よけスプレーをかけるといった対策をとるだけでも違います。
また、ハマダラカにはピレスロイド系の殺虫剤が有効なようです。
家庭に1本、殺虫剤を常備していると良いでしょう。
また、蚊の発生を防ぐために排水溝を掃除するなど水源を絶つ取り組みが必要です。
まとめ
世界中には約3500種もの蚊が存在すると言われています。
ハマダラカによるマラリアのように、多くの蚊がさまざまな病気を人に媒介します。
日本でも、2014年に69年ぶりにデング熱の感染者が出て死亡例も出るなど、蚊による被害が問題となってきています。
デング熱はヒトスジシマカが媒介する病気ですが、今回の感染例は海外からの輸入感染のようです。
日本ではマラリアやデング熱のような病気が大流行する可能性は低いとはいえ、これから先も流行しないとは言いきれません。
病気の感染を防ぐためには、とにかく蚊に刺されないための予防を各自でするしかないのです。
蚊はもはや刺されるとかゆいというだけの存在ではなくなったということですね。