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アムールトラ(シベリアトラ)最大最強のネコ科!その生態や危険性について

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百獣の王と言えば現代ではライオンを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、昔の東洋では百獣の王、強さの象徴と言えばトラでした。

アムールトラは8種類いるトラの中でも最大の種で、かつては中国、朝鮮半島まで広く分布していたので、日本人にとっても最も身近なトラといえるでしょう。

今回は、アムールトラ(シベリアトラ)の生態と危険性について紹介します。

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アムールトラは日本人に最も身近な虎

アムールトラ(シベリアトラ)

アムールトラは、ネコ目ネコ科ヒョウ属に属するトラです。

ネコ科のトラは絶滅の可能性があるものを含めて8種類に分類されていますが、その中でアムールトラは最大のトラで、体長3メートル、体重350キログラムという記録もあるほど巨大な肉食獣です。

これは、ライオンよりも大きいということです。

 

アムールトラは現在、極東ロシアの沿海州のアムール川とウスリー川の流域にしか生息していませんが、過去には東アジア~中央アジア~西アジアの広範囲に棲息していたトラです。

中国、朝鮮半島、モンゴル、シベリアなど日本から海を挟んだ隣に棲息していたので、昔の日本人にとって虎=アムールトラを指していたはずです。

戦国時代の武将、加藤清正が朝鮮出兵の際に虎狩りをしたエピソードがありますが、これもアムールトラです。

 

和名で「シベリアトラ」、まれに「チョウセントラ」と呼ぶこともあります。

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アムールトラの生態

アムールトラは最も北に棲息するトラです。

そのため、夏毛は1.5cmくらい、冬毛は5cmくらいと厳しい冬を生き抜くため毛が長いのが特徴です。

ただでさえ大きな身体が冬にはますます風格を備えます。

 

アムールトラは単独行動で、60~100㎢もの広い縄張りを持ち、一晩に10キロ以上、時には40キロも歩き回って狩りをする夜行性の肉食獣です。

ヘラジカやイノシシなどをエサとしますが、時にはツキノワグマやヒグマすら襲って倒してしまうというからまさに最強の肉食動物です。

 

繁殖期は特になく、雄と雌が出会い交尾をすると雌が3ヶ月半くらいの妊娠期間の後、2匹~4匹の子トラを出産します。

雄は子育てをすることなく、雌が育てます。

生まれたばかりの子トラは体重1kg程と小さく、目も見えていません。

雌が1年半ほど一緒に生活しながら狩りを教えて、やがて若トラは独り立ちします。

4年ぐらいで成体として繁殖可能になり、野生での寿命は10年~15年くらいだそうです。

 

アムールトラの狩り

アムールトラ(シベリアトラ)

アムールトラは身体が大きいので、持久力はあまりありません。

したがって、長距離を走って獲物を追いかけるのではなく、待ち伏せ型の狩りをします。

 

まず、獲物に臭いで見つからないように風下から回り込み、縞模様を利用して草むらに隠れます。

じりじりと獲物との距離を縮めていって、後ろ足の跳躍力を利用して一気に飛びかかり、太い前足の強い力で押さえつけます。

そして鋭い牙で獲物の喉元に噛み付いて息の根を止めるのです。

 

身体が大きく逃げ足の速いシカやイノシシですら餌食になるので、もし丸腰の人間が狙われたらひとたまりも無いでしょうね。

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絶滅の危機、保護政策により数が上昇

古来よりトラの毛皮や骨は、装飾品として、漢方薬の材料として、虎の骨の酒の材料としてなど高値で取引されていました。

近代に入り、シベリアが帝政ロシアの支配下になった時期になると、ハンターが銃を使うようになったのでアムールトラの密猟がはびこってしまいました。

結果、上記のようにアムールトラの生息域が狭まり個体数が減少してしまいました。

 

国際自然保護連合(IUCN)はアムールトラをレッドリストに記載して絶滅危惧種(EN)に位置づけました。

 

その影響もあり近年、ロシア政府が密猟を厳しく取り締まるようになったため、保護政策の効果でここ10年くらいは個体数が15%ほど増加に転じています。

トラのように成熟に4年もかかる絶滅危惧種にとって、15%という増加レベルは画期的なもので保護政策は一定の成果を上げているといえます。

 

しかし、アムールトラの個体数は現在500頭ほどと言われており、まだまだ安心できる数字ではありません。

1頭あたりに必要な縄張りが広大なため、森林伐採による生息地の減少も課題として残っています。

 

アムールトラが人を襲うケースは少ない?

アムールトラ(シベリアトラ)

そんな最強の肉食獣であるアムールトラが人を襲うことはあるのでしょうか?

結論から言うと、野生化においてそういったケースはあまり報告されていません。

 

・シベリアの広大なタイガで、人間とアムールトラが鉢合わせる確率が低いこと

・アムールトラ自身も、人間を招かれざる客として恐れ寄ってこないこと

から人が襲われるケースは少ないのです。

 

ただ、

・タイガーウォッチングのようなツーリズムの場面で、敢えて人間からアムールトラの縄張りに侵入する

・餌を奪うような素振りや、子育て中の母トラを邪魔をする

・猟犬を連れていると、エサと認識した猟犬と一緒に襲われる

・トラに銃を向け、アムールトラの反撃に遭う

といった例だと危険性はありますので、万が一の機会には注意が必要です。

 

 

また、動物園やサファリパークでの事故はいくつか起きています。

・2003年、旭山動物園で飼育員の男性がアムールトラに襲われ、頭蓋骨骨折や脳挫傷の重傷を負いました。

・2008年、京都市動物園で飼育員の男性がアムールトラに襲われ、死亡しました。

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【プーチン大統領とアムールトラ】

現代の著名人で、アムールトラとの関わりが深い人物と言えばロシアのプーチン大統領でしょう。

2008年に、アムールトラの保護政策の一環での捕獲調査にプーチン大統領とカメラマンが同行しました。

その際に罠にかかったトラが逃げ出して、カメラマンに襲い掛かりそうになってしまいました。

すかさずプーチン大統領は持っていた麻酔銃で、トラを撃ってカメラマンを助けたというのが有名な武勇伝として報道されました。

 

しかし、その後の2014年にプーチン大統領が野生に返した3匹のアムールトラのうち、クージャと名づけられた1匹がアムール川を泳いで渡り国境を越えて、中国国内で家畜のヤギを襲っていたことが明らかになったというニュースも報道され話題を集めました。

トラの恐ろしさ、トラ退治のステータスの高さなどを物語る興味深いエピソードです。

 

まとめ

アムールトラはトラの仲間の中で最も北に棲息し、ネコ科最大の動物でもあります。

アムールトラが、古来より東洋で力の象徴になっていて恐れられていた日本にも関わりの深い猛獣だということがわかると思います。

保護政策により数を増やしていくのはもちろん嬉しいことですが、トラは人間の何倍も強い動物なので、人間と接触するトラブルを避けるようにして上手く共存していかないといけないですね。

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