日本におけるヤマネコと言えば、西表島に生息するイリオモテヤマネコや長崎県・対馬に生息するツシマヤマネコがいますね。
いずれも絶滅が心配されており、イリオモテヤマネコに関しては国の特別天然記念物に指定されています。
もはや本土では見ることのできないヤマネコですが、海外においてもヤマネコは絶滅の心配がされています。
その中に、主にヨーロッパに生息するオオヤマネコがいます。
さて、オオヤマネコとは一体どのような動物なのでしょうか。
今回は、オオヤマネコの生態や種類についてご紹介させていただきます。
オオヤマネコの生態
オオヤマネコは、ネコ科オオヤマネコ属に属する食肉獣の総称です。
リンクス(Lynx)とも呼ばれ、日本では特定動物に指定されています。
オオヤマネコの生息地は、北アメリカやヨーロッパ、アジア北部(シベリア)の草原や森林地帯です。
半砂漠地帯などでも見かけることができ、オオヤマネコは獲物を狩る際に隠れたりできるような起伏や樹木の多い地域を好むと言われています。
オオヤマネコは体長85~130cm、体重10~35kg、尾長10~25cm 程度の中型の動物です。
種類にもよりますが、体重25kg以上になる個体は少ないと言われています。
木登りや泳ぎも得意で身体能力に優れています。
どっしりとした体格をしており、足は長くて足先も大きく幅広いです。
足先が大きいことにより雪上でも活発に動くことができます。
全身が分厚い毛に覆われており、毛の色は地域や個体によって異なり、腹側は白色ですが、背側は赤褐色や黄褐色、灰色や白色の個体が存在します。
また、茶色や黒色の斑点がありますが、この斑点にも個体差があり特に寒い地域に生息する個体には斑点が少ない場合が多いようです。
オオヤマネコの耳には黒色の冠毛があり、両頬にも長いふさ毛があるのが特徴です。
オオヤマネコの繁殖期は2~3月頃の晩冬で、約70日の妊娠期間を経て2~4頭の子どもを出産します。
平均寿命は野生下では12~15年と言われています。
基本的には夜行性で単独で生活しているため、人目につくことはほとんどありません。
行動範囲が広い動物で、1頭あたり約20~60km²の縄張りを持ち一晩に40kmも移動することがあります。
食性はもちろん肉食で、リスやウサギ、イノシシの子どもといった小型哺乳類を襲うことが多く、他にも昆虫や鳥、両生類を食します。
また、オオヤマネコは力が強いため、200kg以上もあるアカシカやトナカイなどを倒すこともあるようです。
オオヤマネコ属の種類
オオヤマネコ属の種類についてですが、下記の4種が属しています。
・ヨーロッパオオヤマネコ
ヨーロッパヤマネコはオオヤマネコ属の中で一番体が大きい種で、ヨーロッパからシベリアにかけてのユーラシア大陸に生息しています。
・カナダオオヤマネコ
カナダオオヤマネコはアメリカ北部からカナダ、アラスカに生息しており、寒い地域に適応した分厚い毛と大きな足が特徴です。
・スペインオオヤマネコ
スペインオオヤマネコはヨーロッパ南西部のイベリア半島に生息しており、オオヤマネコ属の中では最も生息数が少ない種として国際自然保護連合(IUCN)で絶滅危惧種に指定されています。
・ボブキャット
最後にボブキャットですが、オオヤマネコ属の中で一番体が小さい種で、カナダ南部からメキシコ北部にかけて生息しています。
以前はスペインオオヤマネコをヨーロッパオオヤマネコの亜種としていましたが、現在では別種とされこの4種に落ち着いています。
そしてさまざまな理由により、4種すべての生息数が減少していることが問題となっています。
絶滅の危惧
ではなぜオオヤマネコの個体数は減少してしまっているのでしょうか。
かつてはヨーロッパ全土に当たり前のように存在している動物でした。
しかし、人間による毛皮目的の狩猟、生息地の破壊、交通事故も原因として挙げられます。
また、オオカミの捕食対象となったことにより、その個体数は激減してしまったのです。
実際に、第二次世界大戦中にスロバキア東部にオオカミが流入したところ、オオカミがオオヤマネコを襲う頻度が増えオオヤマネコは南部や西部に追いやられてしまったようです。
すでにオオヤマネコが絶滅してしまった国もあり、オランダやスイス、ドイツ、フランスなどでは一度絶滅してしまっています。
その後再導入されたため現在は生息していますが、その個体数は少ないままです。
絶滅はしていない国でもエストニアでは約900頭、ポーランドでは約1000頭と非常にその個体数は少ない状況で、絶滅の心配があることに変わりはありません。
オオヤマネコは日本にもいた!?
実は、日本にもかつてオオヤマネコが生息していたようです。
北海道から南九州まで、幅広い地域に生息していたと言われています。
同じく日本に生息していたベンガルヤマネコは縄文人との接触により早々に絶滅したとされていますが、オオヤマネコは縄文時代後期まで生き残っていたようです。
実際に縄文時代の遺跡からオオヤマネコの骨が見つかっています。
日本においてオオヤマネコが絶滅した経緯ははっきりとは分かっていません。
しかし、ニホンオオカミの場合もそうですが、人間が加わったことによる生態系の乱れも原因なのではと考えられています。
人間の狩猟対象であったことと、イエネコからの感染症により絶滅に追いやられてしまったのかもしれません。
ペットとして飼える?
絶滅の危機に瀕しているオオヤマネコですが、海外ではペットとして飼われているところもあるようです。
日本でもペットとして飼うことは可能ですが、危険な動物として「特定動物」に指定されているため、飼う場合はその地域の都道府県知事の許可が必要になります。
また、飼育するにあたって下記の規定を守らなければなりません。
1.飼養施設の構造や規模に関する事項
・一定の基準を満たした「おり型施設」などで飼養保管する
・逸走を防止できる構造及び強度を確保する
2.飼養施設の管理方法に関する事項
・定期的な施設の点検を実施する
・第三者の接触を防止する措置をとる
・特定動物を飼養している旨の標識を掲示する
3.動物の管理方法に関する事項
・施設外飼養の禁止
・マイクロチップ等による個体識別措置をとる(厚生労働省のホームページより抜粋)
さらに、オオヤマネコは輸入して手に入れることになるのですが、輸入業者が少ないうえに手続きは非常に面倒であるため、実際のところ入手することは困難とされています。
値段は、はっきりとはわかりませんが恐らく200万円ほどすると思われます。
また、最初に用意する檻はもちろんのこと、食費(肉の塊)もバカにならないでしょう。
いずれにしても人里離れた環境に生息する動物であるため、住み慣れた環境で穏やかに暮らすのが一番かもしれませんね。
まとめ
オオヤマネコは、オオヤマネコ属に属する食肉獣の総称で4種がいます。
かつてはヨーロッパ全土に生息していましたが、人間による毛皮目的の狩猟や環境破壊、オオカミの捕食対象となったことなどにより、その個体数は激減してしまいました。
オオヤマネコをペットとして飼いたいと興味を示す人も少なからずいるようですが、特定動物に指定されていることや入手の難しさから個人での飼育はなかなか簡単ではないようです。
野生本来の環境で、少しずつでも生息数を戻していってほしいですね。