デンキウナギと言えば、電気を出して獲物を捕まえたり、身を守ったりする怪魚として有名です。
ゲームやアニメの世界でしかできない「電撃」を可能にするなんて、とってもスゴイですよね。
今回の記事では、デンキウナギの電圧や仕組み、生態や特徴、危険性について解説します。
デンキウナギとは
デンキウナギはデンキウナギ目・デンキウナギ亜目・ギュムノートゥス科・デンキウナギ属に属する大型の淡水魚です。
なお、デンキウナギ属は1属1種なので、デンキウナギしかいません。
他説では、デンキウナギ科・デンキウナギ属にするという考えもありますね。
学名「Electrophorus electricus」、英名「Electric eel」、和名「デンキウナギ」になります。
ちなみに、和名では姿が似ているのでウナギとついていますが、ウナギとは全然違う種類の魚類になります。
もちろん、ウナギのように美味しくもありませんので、食べてみたいなんて思わない方が良いですよ。
分布域、どんな場所に生息している?
デンキウナギの分布域は、南アメリカのアマゾン川・オリノコ川・両水系です。
流れの緩やかなところや、池などに生息しています。
体の特徴
デンキウナギの体長は2.2mほど、体重は20㎏ほどで、デンキウナギ目では最大種になります。
体形はウナギのように細長い円筒形で、頭部は上下に薄く、胴体は左右に薄くなっています。
胴体と書きましたが、正確には、デンキウナギの体の8割はシッポです。
「あんな長い体で、ほとんどシッポ?」って思いますよね。
実はこの8割の部分こそがデンキウナギの「発電器官」になります。
内臓などは胸元にコンパクトに収まっているので、肛門は鰓ぶたの下(喉のあたり)にあります。
体色は灰褐色で白っぽいまだら模様があり、喉から腹部にかけてはオレンジ色になります。
目が退化している代わりに、「側線(そくせん)」と呼ばれる水流や水圧を感じ取る器官を持っています。
名前の通り体の左右の側面に1対あります。
デンキウナギ目は上顎が未発達ですが、デンキウナギだけは上顎が発達していて、上顎に歯があります。
デンキウナギは胸鰭と尻鰭しかなく、尻鰭は驚くほど長く、胸鰭からシッポの後端まであります。
この長い尻鰭のおかげで、前進だけでなく後進もできる珍しい魚になります。
珍しい体の特徴はもうひとつあって、デンキウナギは魚なのに鰓呼吸できません。
一応鰓はあるのですが、時々水面に顔を出して空気呼吸しないと死んでしまうのです。
デンキウナギの生態
デンキウナギの食性は動物食で、小さな魚類やカエルなどです。
夜行性なので、日中は物陰に隠れていて、暗くなってから獲物を捕まえます。
デンキウナギは視力が弱いため、獲物を探す際は微弱な電流を出しながら周囲の動きを探っています。
そして、獲物を見つけると強い電流を放出し、獲物を感電させてから捕食するのです。
獲物を捕まえる時には体から電気を出しますが、デンキウナギ自身は体を覆う脂肪に守られているため、どれだけ強力な電気ショックでも自分が死ぬことはありません。
デンキウナギの寿命は、15年ほどのようです。
デンキウナギはどうやって電気を出す?
デンキウナギが属するデンキウナギ目の魚類は、全て「発電器官」をもっています。
デンキウナギの体の8割を占めるシッポを輪切りにすると、背骨の周り1/3ほどが骨や筋肉などで、残りのほとんどは身の色が白っぽい「発電器官」になります。
ただ、デンキウナギ以外の種は、弱い電力しか作れません。
デンキウナギは大きな「発電器官」を持っているため、危険なほどの電力を作り出すことができるのですね。
その電圧は、500~800V、電流は1Aと言われます。
ちなみにデンキナマズは400Vほどになります。
日本の家庭では100Vが普通なので、これは相当な電圧ですね。
このため、水族館で特別に展示されたり、TV番組に登場したりすることが多い魚でもあります。
「発電器官」は細胞が変化したもので、この細胞のひとつひとつが電池だと思ってください。
デンキウナギは通常、細胞内にはカリウムイオン(プラスイオン)が、細胞外にはナトリウムイオン(プラスイオン)があります。
興奮すると細胞膜が変化して、外側にあったナトリウムイオンが細胞内に入ってきます。
すると細胞内には大量のプラスイオンがたまり、電圧を生みだすことができるのです。
ひとつひとつの電圧は小さくても、たくさんあるので、大きな電圧になるのですね。
これは学校の授業で習った、電池の直列つなぎと同じです。
同じ豆電球1つを、電池1個で点灯させるのと、電池2個を直列つなぎして点灯させるのでは、直列つなぎの方が豆電球は明るくなりますよね。
デンキウナギは危険?
デンキウナギで人間が死亡した例は稀になります。
ただ、何度も感電していると、呼吸不全や心不全を引き起こす可能性があります。
また、デンキウナギの電気が直接の死因にならないまでも、気を失って溺死する例も報告されています。
むしろこちらの方が怖いですね。
TVのバラエティ番組で、芸人さんがゴム手袋をつけてデンキウナギを捕まえようとしていましたが、ゴム手袋ごときでは強力な電気ショックを防ぐことはできなかったので、相当な電気ショックだったと思われます。
ちなみに、デンキウナギは成長すると人間よりも大きくなる大型魚ですが、意外にも力強くはありません。
したがって、水中に引きずり込まれて絞め殺される、なんてことはありません。
敵も獲物も、必殺技の「電撃」を繰り出せば事が済むため、筋力がほとんどなくなってしまったのですね。
電気うなぎに噛みついて感電するワニ↓
まとめ
デンキウナギは、南アメリカのアマゾン川・オリノコ川などに生息する大型の淡水魚です。
デンキウナギは自分の周りに微弱な電気を放出し電場を作り、濁った水中や夜間でも周囲の状況を知る事ができます。
そして、獲物を捕まえる時や危険を感じた時には、最大800V、1Aほどの電気を放出します。
デンキウナギと言えば、名前にウナギがつくので、どうしても美味しそうに思えますよね。
アマゾンまで行ってデンキウナギを釣り上げた日本人の方が刺身で食べたところ、アルミホイルを噛んだような味がしたそうです。
死してなお僅かながらに電気を発して己が身を守ろうとしたのでしょうか。
デンキウナギ恐るべし、ですね。