皆さんは体長7~17cmにもなる大きなカエル、ヒキガエル(ガマガエル)に会ったことはおありでしょうか?
私が子供のころ、庭に現れた大きなヒキガエルのために良かれと思って住処の横穴を掘ったり、柄杓で風呂を作ってあげたものです。(有難迷惑)
このヒキガエルですが、実は強力な毒を持っているというお話はご存知でしょうか?
今回は、ヒキガエル(ガマガエル)の強力な毒素と、それを利用するしたたかな捕食者ヤマカガシをご紹介したいと思います。
ヒキガエル(ガマガエル)の生態
学名 | Bufonidae |
英名 | Toads |
分類 | 無尾目ヒキガエル科 |
大きさ | 7~17cm |
ヒキガエルは、両生綱無尾目ヒキガエル科に分類されるカエルです。
時々、ヒキガエルとガマガエルは別の種類だと思われている方もいますが、呼び名が違うだけで同じカエルです。
他にも、イボガエルなどとも呼ばれることがありますね。
日本には4種類のヒキガエルが生息してます。
・ニホンヒキガエル (主に、西日本に広く分布。体長8~17cmほど)
・オオヒキガエル (小笠原諸島、大東諸島、先島諸島に分布。体長7~16cmほど)
・ナガレヒキガエル (北陸地方から近畿地方にかけて分布。体長8~17cmほど)
・ミヤコヒキガエル (宮古島諸島、大東諸島に分布。体長6~12cmほど)
ヒキガエルは、森林、農耕地、東京都心部にも生息しています。
寿命は10年ほどです。長生きですね。
ピョンピョンと俊敏に跳ねまわったりせず、のそのそと動きは鈍重であり、待ち伏せして長い舌で獲物を捕まえて食べます。
昆虫やミミズを捕食する肉食性の動物です。
夜行性で、昼は石や倒木の下に隠れています。
主な天敵はヤマカガシなど(ヤマカガシについては後述)。
護身、防菌のための毒素
カエル、イモリなどの両生類の動物は皮膚から毒素を出すものが多いですが、ヒキガエルの毒素は強力です。
鼓膜の後ろにある耳腺と、皮膚のいぼから分泌される乳白色の液体がヒキガエルの毒です。
ぴょんぴょん跳ねるアマガエルと違い、動作が緩慢なヒキガエルは体から毒を分泌することで捕食者から身を守っています。
また、ヒキガエルは湿った場所を好むため、毒素を使って寄生虫や細菌から身を守っています。
ちなみに、ヒキガエルの毒液は強心作用があるので、乾燥させて漢方薬として用いられることがあります。
人間にとっても危険なヒキガエルの毒
ヒキガエルの毒は、ブフォトキシンと呼ばれている物質で、神経系の強心作用がある毒素で、時には人間を死に至らしめるほど強力です。
皮膚に付着すれば炎症をおこし、経口摂取すれば幻覚、下痢、嘔吐、心臓発作を引き起こすほど危険なものです。
基本的に、こちらからちょっかいを出さなければ危険はありませんが、触れた際には必ず手を洗ってください。
また、犬猫は少ない量で致死量に達するので、犬の散歩中は注意が必要です。
散歩中に、ヒキガエルにちょっかいを出した犬が、泡を吹いて倒れたという話もあります。
毒まで食らう!天敵ヤマカガシ
ヒキガエルの天敵として代表的な動物が、ヤマカガシという中型の毒蛇です。
アオダイショウのような大型の蛇でもヒキガエルを食べることは避けますが、この蛇はなんと、ヒキガエルの毒に対して耐性があります。
頭からではなく、お尻から丸のみだそうです。悲惨……。(そしてアオダイショウはヤマカガシを食べる……。)
更に首の下にヒキガエルの毒素を貯蔵する器官があり、その毒を自らのものとして行使することができるのです。
お肉だけでなく、能力までも美味しくいただいてしまうわけですね。
ヤマカガシのこの毒は、目にかかったら失明させるほど危険なもので、注入されたらひどい内出血を起こします。
血清が貴重なので、噛まれたら一刻も早く病院へ行きましょう。
ヤマカガシについてはこちらの記事もご参考下さい。
まとめ
ヒキガエルの毒(ブフォトキシン)は強力で、皮膚に付着すれれば炎症をおこし、経口摂取すれば、幻覚、下痢や嘔吐、心臓発作を引き起こし命にもかかわる可能性がある危険なものです。
犬の散歩の際には、犬がヒキガエルにちょっかいを出さないように気を付けてあげましょう。
すばしっこいアマガエルと違い、動作が緩慢で湿り気のある場所を好むヒキガエルは自らを敵や細菌から守るために毒素を強化し、ヤマカガシはその能力をお肉ごと美味しくいただく……。
自然界で繰り広げられる生存競争は、世の成功者もびっくりさせるようなアイディアばかりで、調べていくととても刺激的です。
ヤマカガシのように、他者の能力を自分のものしちゃうようなしたたかさが欲しいですね。
雨の日に庭に現れた大きなご近所さんに意外な一面があったことに驚きが隠せません。
最近めっきり見かけなくなりましたが、いずれまた巡り合える日が楽しみです。