「大きなカエル」それだけで、十分気持ちが悪いですが(カエルファンのみなさん、ごめんなさい。)、たちの悪い事に繁殖力が強く、しかも猛毒まで備えたそのカエルはオーストラリアで大繁殖して大きな問題となりました。
今では国際自然保護連合(IUCN)という組織により世界の侵略的外来種ワースト100に選ばれています。
そんな世界的に問題となっているカエルが日本にも存在しているというから、決して他人事ではありません。
そのカエルの名前は「オオヒキガエル(学名Bufo marinus)」と言います。
いったいどんなカエルなのでしょうか?
今回は、外来種オオヒキガエルの毒性や生態系への影響についてご紹介させていただきます。
目次
世界で問題となっているオオヒキガエルとは?
オオヒキガエルは、ヒキガエル科ナンベイヒキガエル属に分類されるカエルです。
学名に海を意味する「marinus」が入っている様に、海水にも強いのが他のカエルとの大きな違いです。
体長は約9~15cm、大きいものになると20cmを超え、ヒキガエル科では最大種になります。
オオヒキガエルは、元々はアメリカ南部から中南米に生息していました。
サトウキビ畑の害虫を駆除する目的で世界中で導入され、1932年にハワイ、1935年にオーストラリアなどに持ち込まれました。
日本では小笠原諸島(サイパンから1949年持ち込まれた)、大東諸島(台湾から戦前に)、石垣島(南大東島から1978年)、鳩間島(1984年石垣島から)、西表島(石垣島から建材に混ざって?)などでの生息が確認されています。
オオヒキガエルは1度で数千から数万個もの卵を産み、1年中繁殖することが出来ます。
卵は、早いと1日で孵化しオタマジャクシになります。
オタマジャクシは1ヶ月ほどでカエルの姿へと変態し、1年もすれば生態になります。
オオヒキガエルは食欲が旺盛で、昆虫だけでなく他のカエル、ネズミなどの小動物、ヘビ、ペットフードに至るまで何でも食べてしまいます。
オオヒキガエルの毒性
両目の後ろにある耳腺と呼ばれる部分からは、猛毒(ブフォトキシン)を含んだ白い液を分泌します。
誤って目に入ってしまうと失明の恐れがあり、大量に摂取すると心臓麻痺を起こす恐れもあります。
見つけても触らないようにしましょう。
海外では、オオヒキガエルを食べたことにより人間が死亡した例もあるそうです。
またオオヒキガエルは成体だけではなく、卵やオタマジャクシにも毒があり、これらがいるだけで水は毒に汚染されてしまいます。
オオヒキガエルによる被害と生態系への危惧
小笠原諸島ではオタマジャクシの大量発生により飲料水が汚染されたり、鳩間島では池の家禽が大量に死んだことがあり、これらはオオヒキガエルの毒が原因ではないかと指摘されています。
石垣島では絶滅危惧種にも指定されているコガタノゲンゴロウや、八重山にしか生息していないヤエヤマネブトクワガタ等の貴重な昆虫、鳩間島では天然記念物のオカヤドカリが食べられてしまうなどの被害が実際に出ています。
また、カエルを捕食する在来の生物への被害も考えられます。
西表島では、天然記念物のイリオモテヤマネコやカンムリワシなどがオオヒキガエルを捕食することで、その生態に悪影響が及ぶのではないかと危惧されています。
現にオーストラリアでは、固有種のオーストラリアワニがオオヒキガエルを捕食することによって、大量に死亡し絶滅する恐れがでています。
強い繁殖力、大食漢、猛毒、おまけに海水にも強いということで、もはや敵なしという感じです。
このまま増え続けてしまえば在来種の減少、毒による捕食動物達への被害など生態系に大きな影響を及ぼしてしまいます。
そんな訳で日本では2005年に特定外来生物に指定されています。
果たして彼らを駆除する術はあるのでしょうか?
オオヒキガエルの駆除。使われた意外なものとは?
これまでオオヒキガエルの駆除は色々考えられてきました。
冷凍してしまって安楽死させる、薬剤を散布する、なかにはビックリするような方法も。
それは、オーストラリアのある地方自治体がオオヒキガエルを使ったゴルフ(ゴルフクラブで叩き殺す)を考案したのです。
これは正直やりたくないですね…。
ちなみに、カエルゴルフは現在は禁止となっているそうです。
いろいろありましたが、結局どの方法も決定的に有効な手段とはなりませんでした。
繁殖の場で、卵やオタマジャクシを一気に捕らえて退治してしまうのが、有効的なのですがやはり難しいんですね。
キャットフードでの駆除が効果的!?
シドニー大学の教授が考案したのがキャットフードを使った駆除方法です。
キャットフードでどうやって?と疑問に思いますよね。
正確に言うとキャットフードだけではなく、ある生き物の力も借りる事になります。
その生き物とはアリです。
カエルは卵から孵って、オタマジャクシになり、成長するとやがて水中から地上へと上がってきますよね。
水から上がってくるところを見計らって、水辺にキャットフードを撒いておくと肉食性のアリが集まってきます。
そうとは知らず水中から上がってきたオオヒキガエルたちは、アリの集団攻撃に遭い殺されてしまうという方法です。
他の種類のカエルも食べられてしまうのでは?と疑問に思いますが、在来種のカエルたちはこのアリの攻撃をかわす能力を持っているんだとか。
外来種だけを退治できるとは上手くできた方法ですよね。
まとめ
オオヒキガエルは、アメリカ南部から中南米に生息していた大型のカエルです。
害虫駆除の目的でオーストラリアやフィリピンなどに持ち込まれましたが、その繁殖力の強さから大繁殖してしまいました。
オオヒキガエルの毒は強力であり、カエルを捕食する在来生物に及ぼす影響が問題となっています。
現在、オオヒキガエルは特定外来生物に指定されているため、販売や飼育は原則禁止とされています。
今回紹介したオオヒキガエルだけではなく、外来生物による自然環境への影響は深刻な問題となっています。
最近では名古屋城のお堀でアリゲーターガーが捕獲され、話題になりましたよね。
一度増えてしまった外来種を駆除し、元の生態系を取り戻すことはとても難しい事です。
しかし、外来生物の問題は元を辿れば人間自らが招いたものという事実は忘れてはいけないと思います。