世界中にはさまざまな種類のカエルが存在しますが、図鑑や写真などで鮮やかな色や模様をしたカエルを見ることがあると思います。
カエル好きの方であれば思わずかわいいと思ってしまいますが、彼らはヤドクガエルという毒を持つカエルなのです。
一言でヤドクガエルと言っても、その種類によって色や模様はさまざまで、毒の危険性も異なります。
また最近では、人々の目を引き付けるその鮮やかさから観賞用としても人気が出ています。
果たしてヤドクガエルとはどのようなカエルなのでしょうか。
今回は、ヤドクガエルの種類についてご紹介させていただきます。
目次
ヤドクガエルとは?
ヤドクガエルは、カエル目ヤドクガエル科に属しているカエルの総称であり、種類によって異なりますがすべて小型のカエルです。
大きさは最小で1.5cm、最大種でも6cmほどです。
ヤドクガエルの名前の由来はまさに”矢毒”からきています。
コロンビアの先住民が獲物をとるためにこのカエルの毒を抽出して吹き矢に塗って、狩りに使用していたことから名づけられました。
ヤドクガエルの体色は種類によってさまざまですが、赤色や黄色、青色、中には金色などいずれの種も鮮やかで、地球上で最も鮮やかな体色を持ち合わせている生物と言われています。
なぜここまで鮮やかな色をしているのかというと、外敵から身を守るための警告色であり、自分は毒を持っていることを周りに示しているのです。
ヤドクガエルの生息地は、北アメリカ大陸南部と南アメリカ大陸の熱帯雨林やハワイのオアフ島に分布しています。
オアフ島には害虫駆除目的のために連れてこられ、そのまま繁殖し続けているようです。
食性については肉食で、昆虫や節足動物などを食べています。
寿命は約10年ですが、15年近く生きる個体も存在するようです。
ヤドクガエルの種類は9属200種以上いると言われており、体色や体長は種によりさまざまです。
また、繁殖形態も種によって異なり、アマガエルなどと同じように沼や川に産卵するものもいれば、オスの背中に卵を粘着させ、孵化後数週間ほどはオスの背中で生育させるものもいます。
ヤドクガエルには毒がありますが、その毒の強さも種によって異なるのです。
ヤドクガエルの毒性と危険な3種
それでは、ヤドクガエルの毒性についてみていきましょう。
ヤドクガエルの毒は脂溶性であるアルカロイド系の神経毒で、ほんの微量でも人間を死に至らしめることができます。
中でも猛毒のバトラコトキシンを保有するモウドクフキヤガエル、アシグロフキヤガエル、ココエフドクガエルの3種は非常に危険です。
彼らは、皮膚に常に毒が分泌されているため素手で触るだけでも危険です。
バトラコトキシンは青酸カリやフグ毒のテトロドトキシンよりもはるかに毒性が強く、もし毒が体内に取り込まれると全身麻痺症状になり心不全を起こします。
モウドクフキヤガエル
3種の中で一番毒性が強いモウドクフキヤガエルの場合、わずか0.01mg程度の毒で大人の人間が命の危険にさらされてしまうのです。
モウドクフキヤガエルは黄色いカエルで一見そこまで毒性が強いように見えませんが、うっかり触ったら最後、非常に危険なカエルなのです。
モウドクフキヤガエルについてはこちら→モウドクフキヤガエルの生態や毒性について。触るだけでも危険!?
アシグロフキヤガエル
コロンビア西部に生息しています。
黄色やオレンジ色の体色に、名前の由来となった黒い足が特徴です。
アシグロフキヤガエルの毒もバトラコトキシンであり、モウドクフキヤガエルに次ぐ毒の強さを持ちます。
ココエフヤドクガエル
黒の体色に黄色やオレンジ色の縦縞があります。
また、四肢に青もしくは緑の小さな斑点があるのも特徴です。
ココエフドクガエルも、猛毒であるバトラコトキシンを持ちます。
バトラコトキシンのほか、ヒストリオニコトキシンやプミリオトキシンといった毒成分をもつヤドクガエルも存在します。
これらの毒はヤドクガエル自身が作り出しているわけではなく、同じ地域に生息するアリやダニを捕食することによって体内に蓄積、変性されてできたものと言われています。
結果的にこの毒により、ヤドクガエルは天敵から身を守ることができるのです。
ペットとして人気の5種
ほとんどのヤドクガエルは毒を保有していますが、中には弱毒性の種や無毒の種も存在します。
また、強毒を持つヤドクガエルであってもその毒が餌由来であるため、人間の飼育下でコオロギやショウジョウバエを長期間与えられ続けた状態で繁殖していった場合は無毒化します。
ヤドクガエルはその鮮やかな姿も魅力的であるため、こういった弱毒性もしくは無毒化された個体が観賞用として飼育されています。
その中でも特に人気なのは、アイゾメヤドクガエル、キオビヤドクガエル、マダラヤドクガエル、コバルトヤドクガエル、イチゴヤドクガエルなどです。
アイゾメヤドクガエル
アイゾメヤドクガエルは体長5cm程度とヤドクガエルの中では大型種です。
大型であるため、餌となる生き物を確保しやすいので初心者にも飼育しやすい種とされています。
体色は、黒の背に黄色の模様が入り、四肢や腹部は藍色で非常に美しい模様です。
しかし、体色模様は地域や個体によって異なり、同じ種でもかなり違いがあるためコレクションにも向いています。
キオビヤドクガエル
キオビヤドクガエルも体長3~4cmと比較的大きく、黒色地に背側に黄色い帯や斑点があるのが特徴です。
ペットとしての流通量が多く、乾燥や高温に強いことから初心者にも飼育しやすい種と言われています。
マダラヤドクガエル
マダラヤドクガエルは体長2.5~4cmで、名前の通りまだら模様をしています。
体色は地域によって異なり、黒色地に光沢のある緑色の斑紋があるもの、黒色地に金色の斑紋があるもの、はたまた赤褐色地に光沢のある青の斑紋があるものなどさまざまです。
コバルトヤドクガエル
コバルトヤドクガエルは体長3~4cm、全身が鮮やかな青色をしており、頭部や背側に不規則な黒色の斑点があります。
その鮮やかさからコバルトヤドクガエルは“世界で一番美しいカエル”“青い宝石”などと呼ばれています。
コバルトヤドクガエルについてはこちら→世界で最も美しい!コバルトヤドクガエルの毒性や生態について
イチゴヤドクガエル
イチゴヤドクガエルは体長2㎝前後の小さなカエルです。
その名の通り、イチゴのような黒と赤の体色が特徴的です。
しかし、地域や個体によって体色はかなり違うこともあり、緑や黄色の個体もいます。
人気の種ではありますが、流通数が少なく高価で、飼育や繁殖は難しい方のようです。
上記でご紹介したように、観賞用として飼育する場合、比較的大型種のほうが飼育しやすいようです。
飼育下での餌はコオロギやショウジョウバエ、ハニーワームなどであるため観賞用のヤドクガエルはおそらく無毒化されています。
しかし、念のためヤドクガエルは素手では触らないほうが良いでしょう。
もし素手で触ってしまった場合はすぐに水で手を洗ってください。
いずれにしてもヤドクガエルにとって人間の体温は高温であるため、うっかり触ってヤドクガエルを火傷させてしまったら大変です。
ケージ内を掃除する際にはくれぐれも気をつけましょう。
まとめ
ヤドクガエルは、それぞれの種が非常に特徴的で魅力的な体色をしており、ペットとしても人気があります。
しかし、これらはいずれも警告色であり猛毒を持っている種もあることを忘れてはいけません。
最後に、現在ヤドクガエルの毒を医薬品として活用できないかという研究がおこなわれているようです。
毒から抽出した成分を鎮痛剤として利用できるのではないかと考えられているのです。
ヤドクガエルは日本においては自然環境下で出会うことはまずありませんが、さまざまな面で注目されていることを考えると非常に魅力的な生き物ですね。