夏になると、海岸は海水浴客やサーファーなどで埋め尽くされますね。
この時期は、海岸に青いビニール袋のようなものが砂浜に打ちあがっていることがあります。
実際目にされた方も多いかと思いますが、実はこの青い物体、カツオノエボシという猛毒を持つ刺胞動物なのです。
近年では、海岸で大量発生しているとよくニュースやTwitterなどでも話題になっています。
今回は、このカツオノエボシの生態、刺された時の症状と応急処置について詳しく見ていきましょう。
目次
カツオノエボシの生態
カツオノエボシとは、クダクラゲ目カツオノエボシ科に属する刺胞動物で、漢字で“鰹の烏帽子”と書きます。
名前の由来は、カツオが太平洋沿岸に到来する頃に合わせて現れることと、青い浮き袋が烏帽子に似ていることからきており、三浦半島や伊豆半島あたりからそう呼ばれるようになりました。
カツオノエボシはほぼ全国の海で見られますが、地域によって発生時期が異なります。
3月頃に九州南部で出没し始め、徐々に北上して5月頃には四国付近、7月~9月頃にはほぼ全国で見られるようになります。
透き通った10cm程度の青色の浮き袋があり、そこから伸びる触手はだいたい10mほどで、長いものだと50mもの長さになる個体が存在します。
触手には刺胞と呼ばれる毒針入りのカプセルがあり、触れるとカプセルが破けて毒針が飛び出すしくみになっています。
カツオノエボシは、この触手を利用して獲物となる小魚や甲殻類を捕食しています。
カツオノエボシは自力で移動する手段を持たず、浮き袋によって海面に浮かび海流や風に吹かれて移動します。
そのため、砂浜に打ちあがっていることがよくあるのです。
砂浜に、青いビニール風船のようなものが落ちていても絶対に触らないでおきましょう!それはカツオノエボシかもしれません。
ちなみに、クダクラゲ目に属しているカツオノエボシですが、厳密にはクラゲではなく、ヒドロ虫が多数集まって群体化したものです。
ヒドロ虫って何?
さて、ところでヒドロ虫って何?と思う方も多いと思います。
まず、刺胞動物はイソギンチャクのような固着性のポリプ(体の構造の一つ)と浮遊性のクラゲの二つの体制に分かれます。
ヒドロ虫はこの刺胞動物の仲間で、ポリプが発達して群体化したものをヒドロ虫と言うのです。
いわば、イソギンチャクの仲間ってことですね。
カツオノエボシでは、ヒドロ虫は触手になったり生殖器官になったりとそれぞれが協力して役割を果たし、融合して一つの体を作り上げています。
青い浮き袋も一つのポリプなのですが、この浮き袋の中には二酸化炭素や酸素といったガスが入っており、このガスにより海面に浮くことができるのです。
カツオノエボシの天敵
カツオノエボシは強力な毒針を持つ危険な生物ですが、実は天敵が存在するのです。
それは、アオミノウミウシというウミウシで、この生物にはカツオノエボシの毒が全く効かないと言われています。
むしろ体長2㎝~3cmという小さな体でありながら、その5倍近い大きさのカツオノエボシを食べてしまうのです。
毒が効かないとなると、カツオノエボシもなすすべがないですね。
アオミノウミウシについてはこちらの記事を参考に。
⇒アオミノウミウシの生態や生息地について。飼育はできるの??
カツオノエボシの毒が効かない天敵には、他にもマンボウやアオウミガメが挙げられます。
また、カツオノエボシと共生する生物もいます。
エボシダイにはカツオノエボシの毒が効かず、エボシダイの幼魚は刺胞のほとんどない浮き袋内に入り込んで触手や生殖器官の一部を食べて暮らします。
しかし、エボシダイもカツオノエボシに食べられることがあるそうなので、エボシダイも命がけですね。
生物の関係性を知るとより興味深くなりますね。
カツオノエボシの危険性
カツオノエボシには、先ほども述べたとおり長い触手があります。
触手には強力な毒針を持つ刺胞が存在し、触手が獲物に触れた瞬間、普段はコイル状に巻かれている触手を獲物めがけて伸ばし毒針を刺します。
毒針に刺されると電気を受けたかのような強い衝撃を受け、獲物は徐々に身動きができなくなります。
これは人間に対しても同じで、カツオノエボシは海岸によく浮遊していたり砂浜に打ちあがっているため頻繁に事故が起きています。
カツオノエボシに刺されると電気ショックのような激痛が起こることから、カツオノエボシは別名「電気クラゲ」とも呼ばれています。
過去には、カツオノエボシに刺されて死亡した例もあることから、非常に強力な毒であることが分かります。
ちなみに、カツオノエボシは死んでいても、触手に触れると毒針を刺されるため、砂浜に打ち上げられているのを見つけても近づかないようにしましょう。
刺された時の症状
それでは、カツオノエボシに刺されたらどういった症状が出るのでしょうか。
まず、刺された瞬間は電気を受けたかのような強い衝撃を感じます。
患部には徐々に腫れや赤み、かゆみといった症状が出てきて、強い痛みは長時間続きます。
ひどい場合にはかゆみや痛みは数日続くこともあるようです。
人によっては頭痛や発熱といった症状もあらわれます。
腫れは軽い場合には引いてしまえば跡は残りませんが、適切な処置をせず患部が壊死してしまった場合は数十年消えない傷跡になってしまいます。
また、何度もカツオノエボシに刺されてしまうとアナフィラキシーショックを引き起こす可能性もあります。
この場合、刺されてから15分程度で全身蕁麻疹やくしゃみ、息切れ、呼吸困難、血圧低下といった症状があらわれます。
刺された時の応急処置
過去、カツオノエボシに刺された事で死亡した人もいます。
もしものために、刺された時の対処法を覚えておきましょう。
1、刺されたら、まず、できるだけ早く海から出ましょう。
まず海中で刺された場合は速やかに陸に上がりましょう。
痛みでパニックを起こしたり、ショック症状を起こして溺れてしまう可能性もあります。
2、患部をこすらないように海水で洗い流し、刺胞がくっついている場合はきれいに取り除きましょう。
そして患部を海水でしっかりと洗い流して、触手も除去してください。
この時、素手で触手を触ると刺胞を刺激してさらに毒針で刺されてしまうので、必ずピンセットやタオルなどを用いて直接手に触れないように取り除いてください。
また、カツオノエボシの場合、患部を真水で洗い流すと症状が悪化してしまうので、絶対に使用しないでください。
もちろん、砂で患部をこする行為も厳禁です。
3、患部が腫れている場合は冷やし、急ぎ病院へ
触手をすべて除去したら、患部を冷水で冷やしながら医療機関を受診しましょう。
医療機関では、症状がひどい場合には 抗ヒスタミン剤や副腎皮質ホルモンの軟膏などが処方されるでしょう。
呼吸困難、痙攣、吐き気など症状がある場合はアナフィラキシーショックが疑われます。
もし、アナフィラキシーショックを起こした場合や、子どもが重傷を負った場合はすぐさま救急車を呼んでください。
カツオノエボシに酢はNG!
よく、クラゲに刺されたらお酢をかければ良いという話を聞きますが、これは少し間違いです。
カツオノエボシの場合は、酢をかけると毒針の発射を促すこととなり逆効果なのです。
お酢が効くのはハブクラゲなどの一部の種類です。
もし、刺された生き物が不明な場合も、酢やアルコールは使用しないほうがいいでしょう。
刺されないための予防対策
・最近の海水浴場は、クラゲ侵入防止ネットが設置されているところも多いので、ネットがある海水浴場内で泳ぐようにしましょう。
しかし、台風の後などは、ネット内にも侵入していることがあるので注意しましょう。
防止ネットが設置されていない海水浴場もありますので、特にお子様連れのかたは、防止ネットがある場所を事前に確認しておくことをおすすめします。
・また、クラゲ侵入防止ネットがある海水浴場で遊ぶ時も、ネットには近づかないようにしましょう。
ネットにクラゲやちぎれた触手が絡みついている可能性もあるからです。
・服装としては、ウエットスーツやラッシュガード、ロングTシャツや長ズボンなどを着用することにより、クラゲ被害を最小限にでき、日焼け防止にもなります。
できるだけ、肌の露出を少なくして泳ぐようにすることが大切です。
また、クラゲ予防ローションというものも販売されています。
こちらは、日焼け止めも兼ねて肌に塗るものですが、ケチらずガッツリ塗るとそこそこ効果もあるようです。
・砂浜を歩く際も素足ではなく、サンダルやマリンシューズを履くようにしましょう。
砂浜に打ち上げられたカツオノエボシに気付かず、素足で踏んでしまうと危険です。
クラゲ対策グッズは通販で買える?
クラゲローションやラッシュガードなど、クラゲ対策グッズは通信販売で購入することも可能です。
在庫状況は変動しますので、下記のバナーから検索結果をチェックしてみてください。
まとめ
夏になると大量発生するカツオノエボシ。
台風の後などは特にたくさん砂浜に打ちあがっているので、海水浴をする際は注意深く観察しましょう。
刺されないための予防策として、ラッシュガードや長袖の着用や素足で砂浜を歩かないことをお勧めします。
予防することにより誤って刺される機会は減るでしょう。
また、クラゲよけローションといったものが市販されています。
不安な方は、海に入る際は事前に塗っておくと良いかもしれません。
また、カツオノエボシはたとえ死んでいても毒針が発射されますので、打ちあがって死んでいても決して触ってはいけません。
特に子どもは興味本位で触らないよう注意しましょう。
カツオノエボシに刺されたことで死亡した人もいるので、もし刺された場合は自己判断せずに病院へ行った方が安心だと思います。