世界には様々な毒蛇がいます。
その中でも、インランドタイパンは毒蛇の中で最も毒性が強い、最凶の毒蛇として恐れられています。
非常に獰猛なイメージを受けてしまいますが、実際はどうなのでしょうか?
今回は、インランドタイパンの生態や危険性、毒性に関する情報をまとめてみました。
インランドタイパンとは?
インランドタイパンは、コブラ科タイパン属に属する毒蛇です。
学名は「Oxyuranus microlepidotus」で、英名は「Inland Taipan」です。
日本では「ナイリクタイパン」「内陸タイパン」とも呼ばれ、特定動物に指定されています。
1800年代後半に発見されていましたが、1972年に再発見されるまでは、その存在は謎に包まれ長らく不明のままでした。
生態
インランドタイパンは昼行性で、特に早朝は活発になります。
逆に夜や気温が高いときは、岩の割れ目や巣穴に隠れています。
エサは、哺乳類が中心で、げっ歯類・小型中型の哺乳類・鳥類などです。
インランドタイパンは卵生で、メスは1度の産卵で10~24個の卵を産みます。
産卵場所は、放置された他の動物が作った巣穴などを利用し、卵は70日前後でふ化します。
ふ化直後の仔蛇は40~47㎝ほどです。
寿命は、飼育下では10~15年ほどとされますが、オーストラリア動物園では、20年以上生きた記録があります。
分布域
インランドタイパンの分布域は、オーストラリアの内陸部です。
クイーンズランド州北西部と南オーストラリア州南東部ですね。
生息地は、乾燥した草原や岩場で、げっ歯類が掘った穴などを巣穴にすることもあります。
体の特徴
インランドタイパンの体長は、1.8mほどで、大きいものでは2.5mにもなります。
牙の長さは3.5~6.2㎜です。
体長も牙の長さも、タイパン(コーストタイパン)よりも短めですね。
体形は細長く、外見にはこれと言った特徴はありません。
体色は個体差があり、黄褐色・オリーブグリーン・黒褐色などさまざまで、まれに黒い斑紋を持つ個体もいます。
また、季節によっても体色は変化します。
気温が上がる夏季は、太陽光を反射するために薄い色(明るい色)になり、気温が下がる冬季には、太陽の熱を吸収しやすくするために濃い色(暗い色)に変化したりします。
性格は意外にも大人しい!?
インランドタイパンの性格は大人しく、攻撃性は低いとされます。
むしろタイパン(コーストタイパン)の方が獰猛で恐れられています。
最凶の毒蛇と呼ばれているのに意外ですが、長年人間に見つからずにひっそりと生きてきただけあって、シャイな性格なのですね。
ただ、性格は大人しくてもその動きは俊敏なので油断は禁物です。
天敵は?
インランドタイパンにも天敵はいます。
キングブラウンスネークや大型のトカゲなどですね。
特に若くて体が小さいうちは狙われることが多いですよ。
インランドタイパンの毒性
インランドタイパンの毒は主に神経毒で毒性が高く、毒蛇の中ではナンバー1の強さです。
キングコブラの約50倍、ニホンマムシの約800倍という猛毒です。
毒の量も多く、人間の成人男性100人、あるいはマウス25万匹を殺すことができる量です。
咬まれて放置しておくと、早ければ30~45分で死んでしまいます。
このため、地上で最恐の毒蛇とされています。
かまれたときの症状としては、頭痛・嘔吐・腹痛・麻痺などがあげられます。
このように恐ろしい毒蛇ですが、幸いな事に
・インランドタイパンは気性の荒いタイパン(コーストタイパン)に比べて、良く言えば穏やかな性格、悪く言えば臆病な性格をしている
事や、
・人があまり住んでいない地域に生息している
こともあり、あまり人が咬まれた例はありません。
また、血清が整備されているので死傷者も出ていません。
もし、オーストラリアの内陸地でインランドタイパンに出くわしても、通常いきなり咬みついては来ないので安心してくださいね。
インランドタイパンは襲い掛かる前に、まずは上体をS字に持ち上げて警告のポーズをとります。
この警告を無視して近づいたり、挑発したりすると、インランドタイパンは防御のために咬みついてきます。
とは言え、そもそも広大なオーストラリアの内陸地で、恥ずかしがり屋なこのヘビと出会うこと自体まれな事と言えますが。
まとめ
インランドタイパンは、オーストラリアの内陸部に生息する毒蛇です。
その毒性は非常に強力で、地球上の毒蛇の中でナンバー1の毒性を持ち、最強の毒蛇と言われています。
しかし、比較的おとなしい性格であり、あまり人の住んでいない地域に生息している事もあり、被害者はあまり出ていません。
インランドタイパンは恐ろしい毒蛇とネット上でも話題になっている蛇ですが、オーストラリアではその数が減少しつつあります。
以前はビクトリア州とニューサウスウェールズ州にも生息していましたが、この地域のインランドタイパンは絶滅してしまいました。
オーストラリアでは法律により保護の対象となっていますが、生息地の減少などの理由から、生息数の回復が難しい状況です。
いくら猛毒の蛇とはいえ、大人しい性格ですし、絶滅だけは避けたいものですね。