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エチゼンクラゲの生態や毒性、大量発生の原因や被害について

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2010年代に入り、その名前を聞くことはほとんど無くなりましたが、2000年代の始め頃には「エチゼンクラゲ」という名前をニュースなどで頻繁に聞いたものです。

日本各地の海で大量のエチゼンクラゲが網にかかって、漁業に大打撃を与えたという事を皆さんは覚えていますか?

今回は、少し懐かしい「エチゼンクラゲの生態や毒性、大量発生の原因や被害」についてお話していきたいと思います。

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エチゼンクラゲの生態

エチゼンクラゲ

エチゼンクラゲ 出典:flickr

エチゼンクラゲは、刺胞動物門鉢虫綱根口クラゲ目ビゼンクラゲ科エチゼンクラゲ属に属する大型のクラゲです。

体色は、茶褐色、橙色、白色など変異があり、国内では東シナ海から日本海にかけて生息しています。

 

エチゼンクラゲの最大の特徴は、その大きさと重さです。

傘の大きさは1メートル以上、大きいもので2m近く、重さは150~200kg位にもなる個体もあります。

 

エチゼンクラゲはプランクトンを食べて生きています。

触手には有毒の刺胞があり、刺されて麻痺し、動けなくなったプランクトンを捕らえ食べます。

 

エチゼンクラゲの天敵としては、カワハギ類が挙げられ特にウマヅラハギは集団でエチゼンクラゲを襲い食べてしまいます。

 

エチゼンクラゲは「越前(=福井県)」という名前から、日本で生まれると勘違いされる方もいるでしょうが、実は日本生まれではありません。

生まれ故郷は中国や、朝鮮半島に囲まれた渤海や黄海、東シナ海などです。

エチゼンと付く名前は1920年に新種のクラゲとして初めて採取されたのが福井県だった事に由来しています。

 

中国や朝鮮半島付近で生まれたエチゼンクラゲはある程度大きく成長すると、やがては対馬海流に乗り、日本海を経て北海道、一部は津軽海峡を通り、太平洋側へ、三陸海岸、時には房総半島まで達します。

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エチゼンクラゲの毒性

エチゼンクラゲの持つ毒はそれほど強い物ではありませんが、刺されてしまうと痒みが出たり、ピリピリとした刺激感が出ます。

エチゼンクラゲに刺された魚を万が一食べても、魚の皮より内側に毒は到達できないので問題はありません。

 

”エチゼンクラゲ”は放送禁止用語!?

エチゼンクラゲは、時折大発生して漁業に大きな被害をもたらすことで知られているクラゲです。

そのネガティブなイメージから、福井県からは「大型クラゲ」と呼ぶように要請があり、現在はエチゼンクラゲが放送禁止用語となっているそうです。

 

大量発生の原因は?

エチゼンクラゲ

エチゼンクラゲ 出典:wikimedia

はっきりとした原因は特定できていませんが有力な説がいくつかあります。

 

1つ目は、中国沿岸の富栄養化です。

産業開発が活発になって、工場廃水などが流入、プランクトンが大量に発生し、それを餌とするエチゼンクラゲが増えたという説です。

 

2つ目は、地球温暖化による海水温の上昇により、エチゼンクラゲの成長に有利に働いたという説。

 

3つ目は、餌を競合する魚の乱獲により、プランクトンをエチゼンクラゲが独占できる状況になったという説です。

 

このうちのどれか、あるいは複数の条件が重なることで大量発生を引き起こしたと考えられます。

こうして見てみると、どれも人間が招いたことですよね。

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エチゼンクラゲの大量発生による被害

日本では2000年代に入ると、2002年~2009年までは毎年のように頻繁にエチゼンクラゲの大量発生がありました。

大量のエチゼンクラゲが網にかかると、その重さによって漁網を破ったり漁船が転覆してしまうことがあります。

 

他にも、網の中がエチゼンクラゲで一杯になって肝心の魚は全然取れなかったり、毒により網の中の魚が傷ついたり死んでしまう、など漁業への被害は計り知れません。

 

エチゼンクラゲによる被害への対策

大量発生した場合には、特殊な網を漁船が引き回しバラバラに切断して駆除する方法や、天敵であるウマヅラハギの餌に利用する駆除実験が行われています。

 

食用(山形県や京都府、福井県などではアイスに入れたり、クッキーに入れたりして売られています。)や化粧品、肥料や飼料、砂漠の緑化などへの活用も考えられています。

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エチゼンクラゲを活用するにも課題は山積

エチゼンクラゲはとても大きく、重いので輸送するにもコストがかかります。

 

肥料や飼料にするにも、まず塩分を抜かなければなりません。

塩分を抜く処理にもコストがかかります。

体の殆どが水分の為、保存も効きませんし、産業廃棄物として燃やしづらいのも難点です。

こうしたお金の問題が大きなネックとなり、残念ながら、本格的に産業化するには至っていないのが現状です。

 

また、エチゼンクラゲは毎年必ず大量発生する訳ではありませんので、安定して捕獲できるわけではありません。

その重さ故、魚網や漁船が壊れる危険性も大きいです。

それなのにわざわざ捕獲しにいこうと思う漁師さんはいないでしょう。

 

ですが、一度大量発生してしまうと大変な被害を受けてしまうので厄介です。

国や自治体から被害対策、応用研究などへの補助を出してもらえたらと言いたいところですが、それも私たちの税金ですからね、なかなか悩ましい問題です。

 

まとめ

エチゼンクラゲは大型のクラゲで、時折発生する大量発生により、漁業へ大きな被害をもたらします。

対策として、エチゼンクラゲを食用や化粧品に産業利用する案もありますが、なかなか本格的な産業化には至っていません。

 

結局は、海の環境を改善する事がエチゼンクラゲの大量発生を起こさないための一番の解決策なのだろうと思います。

それには、エチゼンクラゲの発生元である中国などが、しっかりしてくれないと困ってしまいますね。

幸いなことに、ここ数年間はエチゼンクラゲの大量発生は起きていません。

今こそがエチゼンクラゲによる被害対策を考えるチャンスなのかもしれません。

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