以前、絶滅の危機に瀕しているオオヤマネコについてのお話をしました。
彼らオオヤマネコ属には4種が属していますが、今回はその中でも一番体の小さいボブキャットについて取り上げてみたいと思います。
絶滅の危機に瀕していると言っても、ボブキャットはまだ4種の中でも個体数の多い種だと言われています。
今回は、ボブキャットの生態や特徴、危険性についてご紹介させていただきます。
ボブキャットとは
ボブキャットは、ネコ科オオヤマネコ属に属する食肉獣ですが、その亜種は12種存在します。
ボブキャットは分布域が広くそれぞれの縄張り域がはっきりしていないことなどから、亜種の区分については意義を唱える人もいるようですが、基本的に北の地域に生息する亜種ほど体格が大きいとされています。
ボブキャットという名前は、尻尾が短いことからきています。
“ボブ”には“短く切る”という意味があり、他のネコ科動物よりも尻尾が短いためにボブキャットと名付けられたと言われています。
ちなみにボブキャットは別名“ワイルドキャット”とも言われます。
体の特徴
ボブキャットは体長55~105㎝、体重5~15㎏、尾長10~19㎝と、ちょうど普通のイエネコの2倍ほどの大きさになります。
体格はがっしりとしていて足先が大きいのも特徴です。
ボブキャットは視覚や聴覚、嗅覚に優れているだけでなく身体能力にも優れているので、木登りや泳ぎを得意とし、長時間走りまわることも可能なのです。
体毛の色は棲む地域によって異なり、黄色や暗褐色などさまざまですが腹側は白いです。
全身に縞模様のような黒色斑点が広がり、短い尻尾の先端と前脚に黒色線があるのが特徴です。
地域によって体毛の色が異なるというのはつまりカモフラージュするためであり、砂漠では薄い色、森林地帯では暗い色などその地域にあった色にすることで自身を目立たなくしているのです。
毛の色は季節によっても異なり、夏場は黄褐色や暗褐色など褐色系になり、冬場は灰色が強くなります。
また、冬毛は長さも長くなります。
両頬には長いふさ毛があり、耳のまわりには黒色の飾り毛があります。
ボブキャットの生態
ボブキャットの生息地域は北アメリカ大陸のカナダ南部からメキシコ北東部にかけてで、主に草原や岩場、森林地帯に生息しています。
時折都市部にも足を踏み入れることがありますが、夜行性であるため人目につくことはほとんどありません。
ボブキャットは基本的に単独で生活しており、ネコ科動物特有の縄張りを持ちます。
木に爪痕を残したり、尿や便でマーキングすることにより自分の縄張りを主張します。
しかし、冬場は夏よりも行動範囲が広がるなどし、時として縄張りが他の個体と重なることがあります。
その場合、立場の弱いオスは自分の縄張りを譲るなどして棲み分けているようです。
メスの場合はオスよりも行動範囲が狭く、1匹のオスの縄張りに数匹のメスが棲んでいると言われています。
ボブキャットの食性については肉食で、主にウサギやリス、ネズミなどの小動物を捕食します。
捕食動物は季節によっても異なり、冬場など獲物を見つけるのが困難な時期には、自分よりも大型のシカなどを襲い、食べきれずに残した部分は雪や葉っぱの下などに隠して貯蔵しておくことも知られています。
比較的長期間食べなくても大丈夫ではありますが、生き延びるための知恵を働かせているのです。
ボブキャットがアメリカに棲みついたのはおよそ260万年前と言われています。
ボブキャットはオオヤマネコが進化したものと考えられていますが、今の姿に落ち着いたのはおよそ2万年前。
それからずっと北アメリカ大陸に棲みついており、人間との共存もできるようになりました。
ボブキャットはアメリカインディアンの神話にも登場するなど、北アメリカでは馴染のある動物と言ってよいでしょう。
ボブキャットの天敵
ボブキャットの天敵と言えばピューマやタイリクオオカミです。
実際にイエローストーン国立公園でピューマがボブキャットを襲う場面が何度もありました。
彼らから身を守るためには木に登るしかありません。
しかし、幼い子どもの場合はキツネやフクロウ、鷲などにも襲われる可能性があるため、成体になるまでは危険が多いと言えるでしょう。
そして、人間もまたボブキャットの天敵のひとつです。
ボブキャットはもともと、羊やヤギなどの家畜を襲うという理由で駆除の対象となっていました。
さらに毛皮目的や単なる娯楽目的のために狩猟の対象ともなり、また、交通事故に遭う個体も多くその生息数は心配されるところです。
しかし、北アメリカ大陸に生息するボブキャットの生息数は推定100万頭と考えられており、現時点で絶滅の可能性は低いと言われています。
ボブキャットは危険?
さて、ではボブキャットが人間を襲うことはあるのでしょうか。
結論から言いますと、ボブキャットに襲われたという報告はほとんどありません。
基本的にボブキャットは警戒心の強い動物なので、人間と接触する機会自体が少ないようです。
そうはいっても、野生のボブキャットは非常に気性が荒いそうです。
下手に挑発したり、ボブキャットの子どもに手を出したりしたら成体に襲われる危険性は十分にあります。
飼育されている個体であれば人間に多少は慣れていると思われますが、野生は別です。
もしボブキャットを見かけてもいたずらに近づかないようにしましょう。
まとめ
ボブキャットは、カナダ南部からメキシコ北東部に生息する中型のネコ科動物です。
オオヤマネコ属の中では個体数の多い種であり、北アメリカでは馴染みのある動物です。
今は絶滅の可能性は低いとはいえ、これから先どうなるかは分かりません。
環境破壊なども生態系を崩す要因にもなるため、人間が活動する限り野生動物は安泰とは言えないのです。
ボブキャットの棲みかを脅かすことのないよう、私たち人間は野生動物を守る意識を持たなければなりません。