人食いワニと言えば、イリエワニやナイルワニを指す事が多いですね。
イリエワニはクロコダイル科の爬虫類であり、人間をも襲う凶暴な性格のワニとして恐れられています。
今回の記事では、最大最凶爬虫類イリエワニの生態や危険性について詳しく解説します。
イリエワニとは?
イリエワニは、クロコダイル科クロコダイル属に属するワニです。
学名「Crocodylus porosus」、英名は「Salt-water crocodile」、和名では「入江鰐」と呼ばれます。
クロコダイル科の中で、12種と最も種類が多いクロコダイル属に属しています。
クロコダイル属は「アジア・オーストラリア系統」と「アフリカ・新大陸系統」の2つに分かれていて、イリエワニは前者に分類されます。
ちなみに人食いワニとしてイリエワニ同様恐れられているナイルワニは後者に分類されます。
双璧をなすとは、まさにこの事ですね。
イリエワニの生態
イリエワニの食性は動物食で、水鳥などの鳥類・豚・馬・牛などの哺乳類・魚類・両生類・爬虫類・甲殻類などを食べています。
狩りの方法は水辺で獲物が来るのをジッと待つスタイルで、強靭な歯と顎で獲物を捕まえます。
知能が高いためか性格は凶暴とされ、人間さえも襲って食べることがあります。
太平洋戦争時、ミャンマー(当時はビルマ)のラムリー島で数百人から千人もの日本兵がイリエワニの餌食になったと言われているのは有名な話です。
また、イリエワニは海水にも非常に強く順応し、海を泳いで渡れるという特徴があります。
ワニの仲間はみな泳ぎが得意ですが、海を泳ぐのはイリエワニだけですね。
これは英名の由来にもなっています。
手足をピッタリと体につけて泳ぐので、上から見るとワニに見えないかもしれません。
海で船の上から見たら、得体のしれないUMAだと勘違いしそうです。
オスで16歳、メスは10~12歳ほどで繁殖が可能になります。
繁殖期が雨期であるため、巣は木や泥で周辺よりも高く作られ、メスはその巣の中に一度に20~90個の卵を産み、産卵後は砂をかけます。
巣はオスの縄張りの中に作られますが、卵や子ワニを守るのはメスの役目です。
子ワニは危険が迫ると、高く短い鳴き声を上げて母ワニに助けを求めます。
子ワニだけでなく、イリエワニは成体になっても鳴き声でコミュニケーションをとれるため、爬虫類の中でも社会的であるとされます。
寿命は70年ほどとされ、とても長生きですね。
体の特徴
イリエワニの全長はだいたい3~6mで、体重は300~700㎏とされます。
オスの方が体は大きく、平均すると全長5mにもなり、メスはかなり小柄で、大きくなっても2.5~3mほどです。
体重で見ると、オスは400~1000㎏で、メスは80~100㎏ほどとなり、かなり差がみられますね。
最大の爬虫類と呼ばれるためか、「10mはあった」と噂される個体もいましたが、確認ができた中で最大のイリエワニはオーストラリアで発見された全長8.6m・推定体重2tの個体になります。
体色は緑褐色で、歯は最大で10㎝、背中には「鱗甲」よ呼ばれる大きくて硬い鱗があり、手足には水かきがついています。
まれに白いイリエワニが見つかる事もあり、神の使いだとする地域もありますね。
分布域は? どんな場所に生息している?
イリエワニは東南アジアを中心に広く分布しています。
アジア大陸では、インド南東部・バングラデシュ・ミャンマー・タイ・マレーシア・カンボジア・ベトナムにかけての海岸地域。
東南アジアでは、シンガポール・ブルネイ・フィリピン・インドネシアなどの島々。
オセアニアでは、パプアニューギニア・カロリン諸島・オーストラリアの北部海岸部などです。
ワニは遊泳能力が高いのですが、中でもイリエワニは海を泳いで移動することができるので、生息域を拡大することができました。
オーストラリア大陸へは近年になり上陸したとされます。
生息地は、主に入江・マングローブ・磯・干潟など「汽水域」と呼ばれる淡水と海水が混じった海岸エリアで、これは和名の由来にもなっています。
一部の個体は、河川・湖・池沼などの淡水に生息しています。
イリエワニによる事故の一例
・前述しましたが、太平洋戦争時のラムリー島で、数百人から千人もの日本兵がイリエワニに襲われ犠牲になったと言われています。
・2009年、オーストラリア北部ダーウィン付近の沼沢地で、友人と遊んでいた12歳の少女が行方不明になりました。少女が行方不明になる前に、少女の近くでワニの尻尾が水面を叩きつけるのを目撃されていることからも、ワニに襲われたとみられています。
・2011年、フィリピンのミンダナオ島で、12歳の少女と農民の男性2名を捕食した体長6.17mのイリエワニが捕獲されました。子のワニは”世界最大の捕獲されたワニ”とギネスブックに認定され、「ロロン」と名付けられました。
・2013年、オーストラリア北部のリゾート施設の川で泳いでいた26歳の男性が、体長5mのイリエワニに襲われ死亡する事故が起きました。
・2014年、オーストラリア北部にあるカカドゥ国立公園の湖で、友人と泳いでいた12歳の少年がイリエワニに襲われ死亡する事件が起きました。
・2017年、オーストラリア北部のカカドゥ国立公園内の川を徒歩で渡ろうとした男性が、体長約3.3mのイリエワニに襲われ死亡しました。
今回はほんの一例だけを紹介しましたが、現在でもワニに襲われ死亡する人は年間1000人にも上ると言われています。
よく人食いのイメージを強く持たれるサメなんかは年間10人ほどだそうなので、ワニの危険性がどれだけ高いかわかると思います。
日本に流れ着く可能性は?
海を泳いで渡るということは、日本にもたどり着く可能性はあるのでしょうか?
結論から言いますと、日本にも黒潮に乗って、海岸に死骸が流れ着いたこともありました。
西表島や奄美大島、八丈島で流れ着いた死骸が発見されたことがあるそうです。
新境地を開拓するつもりだったのか、餌を探していて海流に乗ってしまったのかわかりませんが、途中で力尽きてしまったのでしょう。
ちょっと可哀そうな気もしますが、生きたまま日本に漂着されたらそれはそれで困る…。
イリエワニの漂着の北限は香港辺りとされるので、まず日本に生きたイリエワニが流れ着く事はないと思われます。
とは言え、正確なデータが残っていないものの、昔から「イリエワニらしきワニ」が生息していた話も残っているのも事実です。
日本に生きたまま漂着した「イリエワニらしきワニ」が過去に日本で繁殖しなかったのは、気候条件や繁殖相手がいなかっただけでなく、あからさまに凶暴な外見なので、見つかれば即刻殺されてしまう運命にあったからでしょう。
まとめ
イリエワニは、最大で体長8.6mもの記録がある最大の爬虫類です。
このイリエワニとナイルワニが、よく人食いワニと恐れられている種のワニになります。
また、イリエワニは海を泳いで渡ることが出来るようで、日本においても死骸が発見されたことがあります。
ちなみに、ハンドバックやベルト、財布などに使われる「高級素材」としてワニ革が重宝されますが、イリエワニの皮膚は加工のしやすさから「最高級品」として高値が付きます。
成長したイリエワニには天敵は無く無敵とも言えますが、やはりお金に目がくらんだ人間には敵いませんね。