ワニと言えば、恐ろしい人食いというイメージもあるでしょう。
特に人食いとして有名なのは、ナイルワニとイリエワニです。
ナイルワニはイリエワニと並び凶暴とされる大型の爬虫類ですが、古代エジプトでは豊穣の神セベクとして信仰されていました。
今回の記事では、そんなミステリアスな一面もある、ナイルワニの生態や危険性について解説します。
目次
ナイルワニとは
ナイルワニは、ワニ目クロコダイル科クロコダイル属の爬虫類で、さらに6亜種が存在しているとされます。
学名は「Crocodylus niloticus」、英名は生息地にちなんだ「Nile crocodile」、和名は英名の直訳で「ナイルワニ」になります。
クロコダイル属は「アジア・オーストラリア系統」と「アフリカ・新大陸系統」の2つに分かれます。
ナイルワニは後者に分類されますが、アメリカには生息していません。
ナイルワニの分布域、どんな場所に生息している?
ナイルワニの分布域は、サハラ砂漠と南部を除いたアフリカ大陸と、アフリカ大陸の東に位置するマダガスカル島の西部です。
ナイルワニを新種記載する際に使われた個体はエジプトに生息していた個体だったので、これが英名や和名の由来となりました。
ですが、名前の由来となったナイル川周辺のナイルワニは、現在では絶滅してしまいました。
生息地は、主に河川・湖・湿地帯などの淡水域で、まれに河口・入江・マングローブの沼地など淡水と海水が混じった汽水域にいることもあります。
アフリカでは多くの人間が水辺で暮らしているため、人間の生活エリアとも完全に被っていますね。
ちなみにアフリカにはナイルワニの他に、アフリカクチナガワニとニシアフリカコビトワニの2種も生息しています。
ナイルワニの体の特徴
ナイルワニの体長は400~550㎝で、体重は220~550㎏です。
しかし中には、最大体長6m、体重700㎏を超える個体もいるそうです。
体色は暗い黄褐色や暗い緑色で、黒い斑点模様が入っています。
幼体は黒褐色の横ストライプが入りますが、これは成長とともに消えていきます。
後ろ足の水かきは大きく発達しています。
ナイルワニの食性
ナイルワニの食性は動物食で、魚類、シマウマ・ライオン・バッファロー・小さいカバ・ヤマアラシなどの哺乳類、鳥類・カエルなどの両生類・爬虫類などを餌にしています。
成長して体が大きくなるにつれ、獲物も大きくなります。
ナイルワニの1回の食事の量は、自分の体重の半分ほどだそうです。
また、通常動物は病気に感染することを本能的に恐れて、死肉を食べることを避けますが、ナイルワニは死肉も食べてしまいます。
また、自分の目の前を通るものならワニまでも食べてしまいます。
つまり、恐ろしいことに、ナイルワニには見境なく何でも食べる習性があるのです。
アフリカの洗濯機がないような地域では、今でも川で洗濯をする人がたくさんいます。
ナイルワニからしてみれば、餌となる動物が水辺で何をしていようが知ったことではなく、当然襲われる人は後を絶ちません。
推定でも毎年200人ほどがナイルワニに殺されています。
ナイルワニの狩り
ナイルワニの狩りは、獲物に飛びついて水中に引きずり込む方法です。
噛む力は最大で2tにもなるため、成長した大型のナイルワニなら、大型の哺乳類ですら水中に引きずり込めます。
ただ困ったことに、ワニの歯は獲物を逃がさないように押さえ込むにはうってつけですが、獲物の肉を引きちぎるには適していません。
このため、ナイルワニは水中に引きずり込んだ大きな獲物の肉を、自分の体を回転させてダイナミックに引きちぎります。
この体を回転させる動きは「デスロール」と呼ばれていますね。
ナイルワニの生態
ナイルワニの活動時間は不規則です。
日光浴が大好きなので、保護区などではナイルワニが気持ち良さげに日にあたっている姿が見られます。
ナイルワニはイリエワニ同様、賢さゆえに獰猛な性格をしています。
ただ、理由は不明ですが、一部の地域では人間を襲わないナイルワニもいるそうです。
ナイルワニの繁殖期は雨季で、水辺に穴を掘って巣をつくり、メスは1回に25~100個の卵を産み、卵は84~90日でふ化します。
爬虫類は通常、産卵後はほったらかしですが、ワニは母親が卵や子ワニを守る習性があります。
中でもナイルワニは珍しく、父ワニと母ワニが揃って卵を守る習性があります。
また、ふ化した子ワニを母ワニが口にくわえて水辺に運ぶ姿も目撃されています。
知能が高いからこそできる子育て方法ですね。
ナイルワニの寿命は60~100年とされます。
とても長生きな動物ですね。
ナイルワニの天敵、捕食者はいる?
成長したナイルワニは生態ピラミッドの頂点に君臨しますが、まれにライオンに襲われることもあります。
また、卵のときにはナイルオオトカゲに食べられることもあるようです。
ワニ革や食用の肉として、人間に捕獲されることも多いため、人間も天敵と言えますね。
環境汚染や生息地の減少も、ある意味天敵かもしれません。
犠牲者300人以上!?恐怖の人食いワニ”ギュスターヴ”
ここまでナイルワニの危険性についてもお話してきましたが、ナイルワニの中にはもはや伝説的と言えるような人食いの記録を持つ有名な個体がいるのです。
そのナイルワニは”ギュスターヴ”という名で呼ばれています。
ギュスターヴは、ブルンジのタンガニーカ湖およびルジジ川に生息する、全長6m以上、体重1トンを超える巨大なナイルワニです。
現地では、ギュスターヴによるものだとされる犠牲者は300人を超えており、人食いとして最も有名なナイルワニでしょう。
今までに何度か捕獲や射殺が試みられ、ライフルや機関銃を撃ち込みましたが、その頑丈な皮膚に阻まれ致命傷を与えることはできずすべて失敗に終わっています。
ギュスターヴは2008年を最後に目撃されておらず、2017年現在は生死不明とされています。
ちなみに、ギュスターヴを題材として「カニング・キラー 殺戮の沼」という映画も制作されています。
まとめ
ナイルワニは、アフリカとマダガスカルに生息する大型のワニです。
現地では、ナイルワニの生息域が人間の生活域と重なるため、年間で200人以上もの人が犠牲になっているそうです。
ナイルワニは日本では「特定動物」に指定されています。
日本人は大型犬ですら大きくて持て余し気味ですから、体長5mにもなるナイルワニを一般の家庭で飼育したいと考える人もいないでしょう。
しかも寿命が長いので、「ペットは責任をもって最期まで面倒を見る」ことはできそうもありません。
もしナイルワニを飼いたくなっても、アフリカまで行って間近に見るぐらいにした方が良さそうですね。