皆さんは「ハコフグ」という魚、聞いたことはありますか?
さかなクン(さん)がいつも頭にかぶっている魚の帽子と言えば、イメージできるんじゃないでしょうか?
あれがハコフグです。
フグと言えば猛毒を持つ魚!というイメージが強いと思いますが、このハコフグはどうなのでしょう。
今回は、ハコフグの毒性や生態などについて紹介していきたいと思います。
目次
ハコフグってどんな魚?
ハコフグは、スズキ系フグ目ハコフグ科に属する魚です。
成長すると体長は25~40cm位になります。
ハコフグ(箱河豚、英語名boxfish)はその名の通り、箱の様な四角い体をしています。
とても、分かりやすい名前ですよね。
生息地は本州以南の各地沿岸に広く分布しています。
比較的浅い海にいて、餌は、小さな甲殻類、ゴカイ、貝などを捕食しています。
体色は黄褐色で、体には青色の斑点があります。
体は鱗が変化した、骨板と呼ばれる非常に硬い皮膚で覆われています。
これで外敵から身を守っています。
まさに鎧を着ているような感じで、石のように固いそうです。
子供のハコフグは、そのキュートさで人気
ハコフグは子供の時期、体長が1~2cmくらいと、とても小さく、その見た目のかわいらしさから、観賞用としても人気の高い魚です。
特に、ミナミハコフグという種類は鮮やかな黄色に黒い斑点のある体とつぶらな瞳、おちょぼ口など、見た目はもちろんの事、泳ぎ方もキュートです。
子供のハコフグは決して泳ぎが得意ではないのですが、ヒレをパタパタしながら一生懸命に泳ぐ姿にハートを奪われてしまうという人も多い様です。
しかし、大人になるとあまり可愛くありません。(あくまでも個人的な感想です。大人のハコフグも可愛いと思われる方には申し訳ありません。)
ハコフグの2つの毒性
ハコフグにも毒はあります。
とは言っても、他のフグに共通する猛毒のテトロドトキシンは持っていません。
ここで、ハコフグの持つ2つの毒性についてご紹介します。
皮膚から出すパフトキシン
ハコフグの持っている毒は「パフトキシン」と呼ばれる、ちょっと耳慣れない毒です。
ハコフグは危険を察知すると皮膚の表面から粘液を出します。
この中にパフトキシンが含まれていて、外敵から身を守っています。
このパフトキシン、魚に対する影響力が強く、一緒にいた水槽内の他の魚達を全滅させたり、自らもパフトキシンによって死んでしまうことがあります。
このことから、飼育する場合はハコフグ単独で行うのが良いそうです。
硬い皮膚だけでも十分そうですが、自分が死んでしまうほどの毒まで出すとは。ハコフグさん、恐るべき防御力(攻撃力とも言える)をお持ちです。
内臓にあるパリトキシン
2つ目の毒は、パリトキシンという猛毒で、内臓、特に肝臓に蓄積されている可能性があります。
このパリトキシンは、なんと猛毒のテトロドトキシンの数十倍もの毒性があります。
パリトキシンを摂取してしまうと、激しい筋肉痛や呼吸困難、歩行困難、麻痺、けいれんなどを起こし、最悪の場合死亡することがあります。
ハコフグでの死亡例は今まで報告されていません(死亡に至ってはいないというだけで、食中毒例は数件報告があります。)
が、同じハコフグの仲間のうち「ウミスズメ」という種類でパリトキシンによる死亡例が報告されています。
ちなみに、ハコフグがもともとパリトキシンを持っているわけではなく、餌を食べた際にパリトキシンを取り込み内臓に蓄積していくようです。
したがって、すべての個体にパリトキシンがあるわけではないそうです。
ハコフグは食べられる?フグ調理免許は?
ハコフグは身に毒を持って無いので、食用とされている魚です。
実際に、長崎県の五島列島では「かっとっぽ」と呼ばれるハコフグのみそ焼きが郷土料理として名物になっています。
どんな物かというと、ハコフグのお腹を開き、一旦身を取り出し、味噌やねぎ、しょうがなどと一緒に混ぜて、またお腹の中に戻して焼くという料理なのですが、お酒によく合い、とても美味しいんだそうです。
ハコフグは刺身にしても食べることが出来ます。
しかし、気を付けなければならないのが「内臓は絶対に食べてはいけない」ということです。
前述したように、内臓には「パリトキシン」という猛毒が蓄積されている可能性があります。
この毒素、厄介なことに煮ても焼いても分解されません。
全ての個体にパリトキシンがあるわけではないようですが、見た目で有毒かどうか見分けることは不可能なので、万一を考えて内臓を食べることは絶対にやめましょう!
またハコフグは、要フグ調理師免許の魚ですので、釣りあげたとしても自分で捌いて食べることはやめた方がいいでしょう。
ハコフグは車のデザインの参考になっていた?
皆さんはバイオミメティクス(生物模倣)という言葉を聞いたことがありますか?
生物の優れた機能や体の構造を学び、技術開発やものづくりに活かす科学技術のことを言います。
例えば、カワセミの嘴の形からヒントを得て新幹線の騒音軽減のために車体の先端を細長い形状にしたとか、蚊の口吻を参考に刺した時に痛くない注射針を開発したなどは割と有名な話です。
これらバイオミメティクスになんとハコフグも関わっていました。
十数年前、あの世界的な大手自動車メーカー、メルセデスベンツが、ハコフグの体の形を参考に空気抵抗の少ない、低燃費の車の開発を行っていました。
一見すると、空気抵抗が少ないようには見えませんが、海の中で1秒間に体長の6倍もの距離を進むことが出来るというハコフグは抵抗を少なくしつつ、中に人が座ることが出来るという車の形に合致したものだったんですね。
驚きました。
まとめ
ハコフグは、その名の通り箱のような形をした魚で、その愛らしい見た目から観賞用にも人気の魚です。
皮からはパフトキシンという粘液上の毒を出し、内臓には猛毒のパリトキシンを持っている可能性があります。
食べられますが、要フグ調理師免許の魚ですので、自分で捌いて食べることもやめた方がいいでしょう。
ハコフグは知れば知る程、魅力的な魚です。
さかなクンがハコフグを愛するのも分かるような気がします。
食中毒は怖いけど食べてみたいし、ちっちゃくてかわいい子供のハコフグを実際に見てみたいです。
今回の記事によりみなさんに少しでも興味を持って頂けたらうれしい限りです。