ライオンの主な生息地と言えばアフリカ大陸ですが、実はインドにもインドライオンという種が生息しています。
インドライオンとアフリカライオンは同一種の亜種で基本的な習性は同じですが、特徴や生態については異なる点がいくつかあります。
現在は絶滅危惧種として保護下に置かれているインドライオン。
今回は、このインドライオンの生態や事件、絶滅の危険性について詳しく見ていきたいと思います。
インドライオンとは
インドライオンは、食肉目ネコ科ヒョウ属に分類されているライオンの亜種で、アジアライオンとも呼ばれます。
体長は140~195cm、体重は120~200kgと、アフリカライオンに比べると小柄です。
体色はアフリカライオンと比較するとやや薄く、下腹部に縦に入ったひだ状のたるみがあるのが特徴です。
また、オスのたてがみはあらく短く、尻尾の房毛が長く大きいです。
生息地
インドライオンの生息地は、インド北西部にあるグジャラート州ギル森林国立公園野生生物保護区内です。
かつてはインドから中東まで広く分布していましたが、中東の個体は絶滅し、現在はこの保護区にしか生息していません。
インド国内でも狩猟や森林開発などにより生息数が激減し、1913年の時点でわずか20頭でした。
非常に深刻な状況ということでその後保護や繁殖に取り組み、2015年には523頭にまで回復しました。
それでもまだインドライオンは絶滅危惧種に指定されている状況です。
生態
さて、インドライオンは主に林の中に生息しています。
ライオンといえば草原に生息しているイメージなのでちょっと意外ですね。
アフリカライオン同様群れを作って生活しますが、インドライオンはオス1頭に複数のメスという小規模の群れを作ります。
しかし、基本的に狩りは単独で行うようです。
食性はもちろん肉食で、シカやイノシシといった大型哺乳類をはじめ、昆虫類やトカゲといった爬虫類も食します。
また、家畜として飼われているウシを襲って食べることもあります。
インドライオンの繁殖力は低く、発情したメスと500回ほど交尾をしてようやく1回出産する程度です。
一度に産む子の数は2~4頭で、子は2~3年で成熟します。
子がメスであればそのまま群れに残りますが、オスの子ライオンは成熟すると群れを追い出されます。
そして新たな群れのリーダーになるべく他のオスと闘っていくのです。
なお、野生下におけるインドライオンの寿命は16~18年と言われています。
人間との関わり、ありがたい存在??
それでは、インドライオンと人間との関わりを見ていきましょう。
インドライオンの保護区があるグジャラート州には、ジュナガド村という村があります。
実はこの村には頻繁にインドライオンが現れます。
野生の獲物を捕らえることができないときは、村内の家畜を襲って食べてしまうのです。
しかし、不思議なことに村人はインドライオンを全く恐れていません。
ジュナガド村では長い間シカによる被害に悩まされていたため、インドライオンにシカの存在を知らせて襲わせるという方法を見つけだしたのです。
彼らにとって、インドライオンは害獣であるシカを食べてくれるありがたい存在ということなのですね。
500頭を超えるほど増えたインドライオンが、保護区の近くにある村に現れるのはどうしようもないことです。
ジュナガド村では、シカを利用してうまく共存していく道を見つけたということなのでしょう。
人が襲われた事件
とはいえ、インドライオンによって人が襲われた事件も当然あります。
2016年には、グジャラート州で保護区近くにある複数の村の住民が野生のライオンに襲われる被害が相次ぎ、3名が死亡、4名が重傷を負っています。
後日、捕獲した17頭のインドライオンのうち1頭の糞から人間の毛髪や体組織の残存物が見つかったそうです。
インドライオンが人間を襲った理由として、村の人口が増えたことが原因と考えている専門家もいます。
つまり、インドライオンの行動範囲の中に人間がいて、獲物を探し求める中での移動の妨げになっているのではというのです。
はっきりとした理由は不明ですが、人間がインドライオンに襲われたことは事実です。
これ以上の被害が出ないように、インド政府には一刻も早く対策をとってもらいたいですね。
絶滅の危険性
インドでは、かつては1000頭以上ものインドライオンが生息していたようです。
しかし、狩猟や森林開発によりみるみるうちに個体数が激減し、あっという間に20頭。
人間の影響力というのはつくづく恐ろしいものですね。
前述の通り、その後の努力により2016年には523頭に回復しています。
しかし、現在生息している個体は、その生き残っていた20頭から繁殖したものであるため近親交配率が高いです。
個体数が回復しているとはいえ繁殖能力の低下が心配されているため、まだまだ絶滅の危険性はあると言えるでしょう。
ちなみに、インドでは1970年代後半から2002年までの間、インドライオンとアフリカライオンの交雑を行っていたようです。
これは動物園で展示する個体を増やす目的で始めたようですが、生まれた雑種は免疫力が低く、病気になったりして早くに死んでしまうケースが多かったようです。
2002年以降は、雑種個体は純血個体と隔離して保護しているようですが、現在でも数百頭の雑種個体が動物園にいるとされています。
純血のインドライオンが、今後一切人間の勝手な行動に巻きこまれないよう、力強く生き抜いていってほしいものですね。
まとめ
インドライオンは、食肉目ネコ科ヒョウ属に分類されるライオンの亜種で、アジアライオンとも呼ばれています。
インド北西部にあるグジャラート州ギル森林国立公園野生生物保護区内の林の中で生活しており、オス1頭に複数のメスという小規模の群れを作ります。
現在の生息数は、わずか500頭ほどで絶滅危惧種に指定されています。
他の多くの動物にも言えることですが、人間とうまく共存していく道を見つけたいものですね。