毒を持つとして恐れられているサソリ。
私たち日本人には馴染はないものの、ペットとしては人気のようです。
実は日本にも八重山諸島に2種のサソリが生息していますが、日本のサソリは弱毒で性格も大人しいと言われています。
しかし、海外に生息するサソリは別です。
特に、デスストーカーと呼ばれるオブトサソリは非常に強力な毒を持ち、現地でも危険なサソリと恐れられています。
今回は、このデスストーカー(オブトサソリ)の生態や毒性について詳しくご説明します。
オブトサソリ(デスストーカー)とは
オブトサソリとは、節足動物鋏角亜門サソリ目キョクトウサソリ科に属するサソリの総称です。
夜行性で、夜間に昆虫や小動物を捕食するのですが、一度狙った獲物は決して逃さず俊敏に動き回ります。
また、性格も非常に荒っぽく攻撃的であるため、別名“デスストーカー”と呼ばれています。
主食はコオロギなどの昆虫や小動物で、尾の先にある毒針で相手を刺して捕らえ、ハサミで切って食します。
オブトサソリは動きも早く、走る時も非常に速いスピードで砂漠を突き進みます。
方向転換するスピードも速いです。
攻撃性が高いオブトサソリにとてつもないスピードで追いかけられたら、たまったものではないですね。
狙った獲物は逃がさない、“デスストーカー”と呼ばれる理由も納得です。
生息域
オブトサソリの生息地は主にヨーロッパや中東、北アフリカ、オーストラリア大陸などの熱帯地域に生息しています。
砂漠などの乾燥地帯を好み、夜行性であるため昼間は岩の下や巣穴に潜んでいます。
体の特徴
オブトサソリの体長は最大でも11cm程度の中型のサソリで、比較的細身でハサミも小さいです。
体色は黄色や緑色をしており、胴体と尾が少し黒っぽくなっています。
オブトサソリは漢字で“尾太蠍”と書き、名前の通り体に比べて尾が太いのが特徴です。
獲物を捕らえるときは、その自慢の太い尾を使います。
彼らが尾を高く振り上げるのは捕食と防御のときです。
尾の先には毒針がついており、大きな尾を高く振り上げて相手に攻撃をしかけます。
その動きは非常に俊敏で、オブトサソリは秒速130cmもの速さで振り上げるとの研究結果が出ています。
オブトサソリの毒性
それでは、オブトサソリの毒性についてみていきましょう。
オブトサソリの毒は、アジトキシン、カリブドトキシン、スキラトキシンといった成分からなる非常に強い神経毒です。
毒性の強いキョクトウサソリ科の中でも最も危険な種と言われています。
獲物が少ない砂漠でも生き残っていくために毒が強化されたと考えられており、少量の毒でも死に至るほどの威力があります。
人間が刺された場合も死亡する危険性があり、実際に死亡例もあります。
オブトサソリに刺されると、耐えがたい激痛が襲ってきます。
そして神経麻痺、言語障害、呼吸困難といった症状があらわれ、最悪の場合は窒息死するのです。
子どもの場合は発熱や痙攣、呼吸困難が起き、さらに危険性が増します。
もしオブトサソリに刺されてしまったら、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。
応急処置として、刺された箇所に冷水をかけ毒を洗い流す、患部を冷やすといった対処をすると悪化を防ぐことができるかもしれません。
また、医療機関に行くまでに毒がまわるのを遅らせるために、患部を心臓より低位置に置いてできるだけ動かさないようにしましょう。
サソリ被害の75%がオブトサソリ!
世界には1700種以上ものサソリが生息しています。
そのうち、人間を死に至らしめるほどの毒性を持つサソリは25種です。
毎年多くの人々がサソリによる被害に遭っていますが、そのうちの75%がオブトサソリによる被害と言われています。
たった25種とはいえ他にも危険なサソリがいながらも、75%がオブトサソリによる被害と考えるとやはり攻撃性が高い種であると言えるでしょう。
特にオブトサソリによる被害が多いのは中東と北アフリカです。
これは、ヨーロッパに生息するオブトサソリよりも中東や北アフリカに生息するオブトサソリのほうが毒性が強く、危険性が高いためのようです。
中東や北アフリカの砂漠地帯を訪れる機会がある方は、オブトサソリに出会わないように細心の注意を払ってください。
日本でペットとして飼えるの?
ペットとして人気のサソリですが、オブトサソリは危険性が非常に高いということで、日本では2006年から輸入を禁止しています。
よって、飼うどころか日本国内でオブトサソリを見ることはまずないでしょう。
オブトサソリに類似している種として、セスジサソリ(英名:サハライエロースコーピオン)が挙げられます。
姿が非常に似ていて、オブトサソリと間違われることもあるようです。
毒性はオブトサソリほどではないものの、それなりの強さはあります。
セスジサソリをオブトサソリとして販売されることもあるようですが、幸い日本ではこのセスジサソリも輸入禁止となっているためペットショップに出回ることはないでしょう。
まとめ
オブトサソリはデスストーカーの異名で知られ、刺されると人間も死亡する危険性がある猛毒サソリです。
その毒性と攻撃性の強さが相まって、世界のサソリ被害の75%はこのオブトサソリによるものです。
日本には生息しておらず、現在は輸入も禁止されているためペットとして飼うことはできません。
サソリは恐い生き物というイメージは定着しているものの、実際に世界には死の危険性があるほどのサソリがいると考えるとより恐怖心が増しますね。
海外に行く機会の多い方は、いつ何時オブトサソリに出会うか分かりません。
関係のない話とは思わず、オブトサソリの生態について少しでも学んでおくと良いでしょう。