“世界一の毒グモ”と呼ばれるほどの猛毒を持つクロドクシボグモをご存知でしょうか?
2007年には世界一猛毒を持つとしてギネス記録されたほどです。
幸い日本には生息していませんが、いったいどれほどの毒性なのか気になりますね。
今回は、このクロドクシボグモの生態や毒性についてみていきたいと思います。
クロドクシボグモとは
クロドクシボグモは、シボグモ科フォニュートリア属に属する毒グモの一種です。
和名では“ハラクロシボグモ”、英名では“ブラジリアン・ワンダリング・スパイダー”と言います。
同じフォニュートリア属に属するフォニュートリア・フェラとともに世界一猛毒を持つクモとされ、冒頭で述べたとおり2007年にギネス登録されています。
クロドクシボグモは体長5~8cm、足を広げると13~15cmにもなる大型のクモです。
体色は名前の通り黒色ですが口元は赤色です。
足が太く、体が大きい分毒腺も大きく牙の長さは13mmもの長さがあります。
非常に攻撃的な性格で、外敵に出会うと威嚇してすぐに噛みついてきます。
このとき、警告のダンスをすることでも知られています。
人間に対しても攻撃的で、特に手を出さなくても噛みついてくるので出会った際は注意が必要です。
クロドクシボグモの生態
クロドクシボグモの生息地はブラジルやアルゼンチン、ウルグアイなどの中南米です。
英名にブラジリアンと付いているのは、最初に発見された地がブラジルだったためです。
温暖な気候を好み、日中は日光が当たらない木の陰や湿地帯に潜んでいることが多いです。
人間の家屋内に侵入することもあります。
また、バナナの中に潜むという習性があるため、時としてクロドクシボグモが入ったままバナナが他国に出荷されてしまうこともあるようです。
このような習性から、“バナナスパイダー”といった別名もあります。
クロドクシボグモは巣を張らないクモで、歩き回って獲物を探します。
夜行性であるため、夜になるとジャングルをさまよい歩き、近づいてきた獲物を猛毒のある牙で捕らえるのです。
英名の“ワンダリング・スパイダー(放浪するクモ)”は、この習性から名づけられたようです。
クロドクシボグモの獲物としては、昆虫類、カエル、トカゲ、ネズミのような小動物が挙げられます。
クロドクシボグモの毒性
さて、それではクロドクシボグモの毒性についてみていきましょう。
クロドクシボグモの毒は非常に強い神経毒で、もし咬まれたら激痛が襲い、その痛みは全身に広がります。
そして血圧上昇、全身麻痺、呼吸困難といった症状があらわれ、何の処置もしないと人間の場合30分以内に死に至ります。
非常に毒の回りが早いと言えるでしょう。
クロドクシボグモ1匹当たりが持つ毒の最大量は約8mgで、1匹が持つ毒は人間だと大人80人分、マウスだと800匹分の致死量になります。
つまりわずか0.1mg程度の毒量で人間が死んでしまうのです。
中南米では以前、多くの方がクロドクシボグモに咬まれたことにより亡くなっていましたが、現在は血清ができたため死亡例はほぼなくなりました。
近年では、7000件の咬傷事故のうち死亡例はわずか10件とのことです。
咬まれても血清を打てば死ぬことはないと思えば、いくら猛毒とはいえ多少安心感はあるかもしれませんね。
とはいえ、咬まれないにこしたことはありません。
クロドクシボグモは家屋内や車の中にも侵入してくるため、中南米ではいつ出会うか分かりません。
バナナを買う際にも要注意です。
クロドクシボグモは攻撃性が強いため、手を出さずとも襲ってくる可能性が高いです。
中南米に旅行に行く際には、是非ともクロドクシボグモの存在を忘れずに警戒してください。
もし万が一咬まれてしまった場合は、一刻も早く医療機関を受診するようにしましょう。
猛毒が男性を救う薬になる!?
世界一の毒を持つクモとして恐れられているクロドクシボグモですが、なんとその毒が勃起不全(ED)の治療に役立つのではないかと言われています。
クロドクシボグモに男性が咬まれると、全身の痛みや血圧上昇に伴って勃起状態が数時間続くというのです。
この症状に着目した科学者が研究を行ったところ、クロドクシボグモの毒成分から『Tx2-6』というアミノ酸配列を見つけ出すことに成功しました。
現在、この『Tx2-6』を利用してのED治療薬の開発に乗り出しているようです。
現在治療に使われているバイアグラなどはすべての男性に効果的というわけではないので、もしクロドクシボグモの毒を利用した薬が完成すれば大きく注目されることでしょう。
まとめ
クロドクシボグモは、中南米に生息する毒グモです。
その毒性は非常に強い神経毒で、わずか0.1mg程度の毒量で人間が死んでしまうほどです。
また、毒が強力なだけでなく非常に攻撃的な性格をしているため、もし中南米に行くことがあったらクロドクシボグモには注意しましょう。
世界には、今回のクロドクシボグモ以外にも非常に強い毒性を持つ毒グモがたくさん存在します。
クモに咬まれて命の危険にさらされるなんて、日本ではあまり考えられないですね。
しかし、実は日本の在来種にも危険な毒グモは存在するのです。
カバキコマチグモやアシナガコマチグモなど、ただ知らないだけで実は身近にも毒を持つクモがいるということを忘れないでください。
まして、近年はセアカゴケグモなどの外来種が日本のいたるところで発見されています。
よほどの虫好きではない限りすすんでクモを触ろうという方はいないと思いますが、見慣れないクモを見かけた場合は決して素手では触らないように気をつけてくださいね。