人を襲い非常に危険と言われているサメの中にイタチザメがいます。
イタチザメはホオジロザメに次いで人間を襲う被害件数が多く、海に入る者にとってとても恐ろしい存在なのです。
彼らは好奇心旺盛な性格のため、人間に対しても興味本位で襲ってしまう厄介なサメです。
人食いザメとして有名なイタチザメ、いったいどんなサメなのでしょうか。
今回は、イタチザメ(タイガーシャーク)の生態や人食いの危険性についてご紹介させていただきます。
イタチザメの生態
それでは、イタチザメの生態についてみていきましょう。
イタチザメは、メジロザメ目メジロザメ科に属するサメです。
沖縄ではイッチョーと呼ばれています。
体長は成体で4~6m程度と大型のサメで、オスよりもメスのほうが大きく、体重は400~600kg程度になります。
大きい個体だと8m近くになることもあるようですが、近年は小型化の傾向があり2~5m程度の個体が多いようです。
体色は背側が灰色や灰褐色で、腹側は白色です。
幼魚の頃は黒色の縞模様が縦に入っており、この模様がトラの体表に似ていることから英名では「タイガーシャーク」と言います。
この縞模様は、天敵から身を守るための保護色の役割を果たしていると考えられており、成体になるにつれて徐々に薄れていき、やがて灰色単色となります。
イタチザメは吻が短く丸みを帯びていて、全体的に幅広く四角い顔立ちをしています。
また体前部が太くずんぐりとしており、体後部になるにつれて細くなっていくという特徴的な体をしています。
イタチザメの歯はハート型をしており、その縁はノコギリ状になっています。
非常に頑丈な歯であるため、イタチザメは亀の甲羅ほどの固いものも噛み砕くことができるのです。
生息域
イタチザメは全世界の熱帯~温帯地域の海に生息しており、日本では関東以南の海に生息しています。
しかし近年では、青森県や秋田県などの東北地方でも確認されており、生息域が北上している可能性があります。
基本的には、底が見えるほどの水深140m程度までの浅い沿岸域にいることが多いです。
特に濁って視界が悪いところを好むため、港や河口付近、サンゴ礁の近くなどでも目撃されます。
宮古島や石垣島では夏になるとイタチザメが多数集まってくるため、漁に支障がでるため駆除に乗り出しているようです。
イタチザメはよく出没するのは沿岸域ですが、ときには外洋まで泳いでくることもあります。
そして水深300mまで潜ることも可能であるため、イタチザメはさまざまな環境に適応しやすい種と言えるでしょう。
食性
イタチザメの食性についてですが、イタチザメは食べ物を選り好みしない機会選択的捕食者で、非常に雑食性が強いサメです。
捕食するのはウミガメやウミヘビ、海鳥、アザラシ、イルカ、クジラなど多種に及びます。
馬や牛が襲われたケースもありますし、もちろん人間もためらわずに襲います。
しかし、食べるのは陸海洋生物に留まらず、死骸やごみ、流木など普通なら食べることのできないものまで飲み込みます。
とにかく目についたものはなんでも口に入れるという性質であるため、イタチザメは“海のゴミ箱”と呼ばれています。
捕獲されたイタチザメの胃の中を調べたところ、陸海洋生物だけでなく看板や浮き輪、タイヤなどが発見されたようです。
繁殖形態
イタチザメは胎生ですが、メジロザメ科で唯一胎盤を形成しません。
胎盤の代わりに自身の卵黄から栄養をとる他、母親から子宮ミルクが分泌されると言われています。
約1年の妊娠期間を経て、50~70cm程度の大きさまで育った幼魚を10~80尾出産します。
イタチザメの危険性
さて、次にイタチザメの危険性についてご説明します。
イタチザメはホオジロザメに次いで人間を襲う頻度が高く、「人食いザメ」として非常に危険なサメのひとつとされています。
前述したように、日本では沖縄海域に出没することが多く、被害も多数出ており大きな問題となっています。
イタチザメは沿岸域に生息し浅瀬にも寄ってくるため、人間と出会う機会が多いのです。
海外では海水浴客が襲われるケースも多く、特にサーファーが狙われます。
サーフボードに乗ってパドリングしている姿が、イタチザメの好物であるウミガメやアザラシに似ているためです。
イタチザメはまた、好奇心旺盛で攻撃的な性格であるため、餌と誤認するだけでなく興味本位で襲う場合も多いです。
食べ物を選り好みしないため、人間にもためらうことなく近づいて行くのです。
イタチザメに襲われたら、一咬みだけでは済まず命を落とす可能性が高いため、出会ったら非常に厄介なサメなのです。
日本での事故
日本でも、イタチザメによる事故が起きています。
・2000年9月、沖縄県宮古島の砂山ビーチでサーフィンをしていた男性が、沖合約30m水深3mの所でサメに襲われました。男性は右上腕部と両膝下を切断される大怪我を負い、すぐに病院へ搬送されましたが死亡しました。ボードに残っていた歯型から、体長2mのイタチザメによる被害と言われています。
・2012年3月、鹿児島県奄美大島沖で、はえ縄漁船「春日丸」が転覆し、乗員の男性がサメに襲われ足の肉を食いちぎられました。襲ったのは体長1mほどのイタチザメだったそうです。
サメに襲われないためには?
まず基本としてサメに襲われないためには、サメが出没する可能性のある海域で泳がないことが一番でしょう。
特に、近くで目撃情報があった時などは絶対に海に入らないようにしましょう。
日本の海水浴場は遠浅であるため、サメが侵入してくることはほとんどなく、サメ防止ネットを張っている海水浴場もあるため比較的安心してレジャーを楽しめます。
しかし、近年は海水浴場にサメが出没することが多くなってきました。
日本の海水浴場にサメが出没するなんてあまり考えたことがありませんでしたが、温暖化の影響で徐々にサメの生息域も変化してきているのかもしれません。
サメが目撃された場所はすぐに遊泳禁止となるので、海に行く際はサメの目撃情報が出ていないか十分に確認をしましょう。
また、サメは血や尿の匂いに敏感です。
遊泳中は決して放尿せず、傷口があり出血の可能性がある方は海に入らないことをお勧めします。
特に襲われやすいのはサーファーです。
サーフボードに乗って水面で手足をばたつかせている姿がアザラシに似ているためです。
サーフィンをする場合は、近くにサメがいないか常に注意を払いましょう。
また、サメは色を認識できるため、アザラシに間違えられないようサーフボードやウェットスーツは明るく派手な色にすると良いでしょう。
イタチザメは高級魚?
イタチザメは世界中で漁獲されています。
ヒレや皮、肉、肝臓、軟骨を利用するためで、特にヒレ、皮、肝臓は高値で取引されるほど価値があります。
イタチザメの肝臓にはビタミンAが豊富に含まれているため、肝油として利用されるのです。
また、ヒレは中華料理の高級食材で有名なフカヒレとして利用されています。
イタチザメのフカヒレは、サメの中でも高級とされているそうです。
まとめ
イタチザメは、日本近海にも生息する大型のサメです。
世界的にも、ホオジロザメに次いで人を襲った例が多いサメなので、人喰いザメと呼ばれる危険なサメと言えるでしょう。
日本で、1995年~2014年の間にサメに襲われて亡くなったのは4名。
そのいずれも漁の最中かサーファーです。
しかし、イタチザメのヒレや肝臓は高値で取引されており、ヒトにとって有益な一面もあります。
イタチザメは多産とはいえ繁殖率が低いため、漁獲や駆除のために個体数が減り準絶滅危惧種に指定されています。
危険な一面があるのも事実ですが、絶滅してしまわないよううまく共存していきたいですね。