人食いザメと聞いてすぐに思いつくのはホオジロザメという方がきっと多いと思います。
映画『ジョーズ』のモデルにもなりましたが、巨大なサメが大きな口をあけて攻撃をしかける光景は非常にインパクトがありますよね。
映画を見た方はサメに対する恐怖心が強くなったと思いますが、果たして本当にホオジロザメは凶暴な人食いザメなのでしょうか。
今回は、ホオジロザメ生態や日本での事故について詳しく見ていきたいと思います。
目次
ホオジロザメとは?
まずはホオジロザメの生態についてご説明します。
ホオジロザメは、ネズミザメ科ホホジロザメ属に属するサメで、和名では正確にはホホジロザメ(頬白鮫)と言います。
名前の由来は、背側の体色が黒色なのに対し腹側が白色で、他のサメに比べると側面も白いことからきていると言われています。
体型は流線紡錘型をしていて鼻先は少し尖っています。
また、尾ビレは上下の長さが等しい三日月型をしています。
ホオジロザメの体長は平均で4m~5mほど、体重は700kg~1100kgほどにもなります。
今のところ、専門家の中で最大で体長6mのホオジロザメが確認されていますが、推定体長7m以上の個体が捕獲されたという地域もあり、実際どれだけ大きくなるのか分かっていないようです。
サメの中では、ジンベエザメとウバザメに次ぐ大型のサメです。
個体差はありますが、基本的にはメスのほうがオスより大きく身体能力も優れています。
体長が7mも超えると体重は2500kg以上にもなり、こんな巨大なサメが襲ってくると考えただけでも恐ろしいですね。
ちなみに映画『ジョーズ』での設定は体長8m、体重3000kgとのこと。本当にこんなに巨大なホオジロザメが存在するのでしょうか。
ホオジロザメの特徴
さて、ホオジロザメの特徴と言えば大きな三角形の歯です。
きれいな正三角形をしており、長さは約7cmです。
この大きな歯が上あごに16~20個並び、下あごの歯は上あごの歯より少し小さめですがほぼ同数の歯が並んでいます。
この歯列が3列あり、古くなって欠けたり抜け落ちたりした場合にはすぐに下の歯が入れ替わるように出てきます。
三角形の歯の縁にはノコギリのような鋭いギザギザがあり、これによって獲物の肉を切り裂くことができるのです。
食性はもちろん肉食で、特にアザラシやオットセイを好んで食します。
ホオジロザメの生息地域
ホオジロザメの生息地域は亜熱帯~亜寒帯の海で、ほぼ世界中のどの海にもいます。
もちろん日本近海にも生息しており、北海道から沖縄にかけての太平洋、日本海などで確認されています。
ホオジロザメは大陸棚に依存していることが多く、基本的には沿岸の浅いところを泳いでします。
沿岸部にいるのは、餌であるアザラシやオットセイが多いためです。
また、3月~5月の出産時期も沿岸部に近づくことが多いと言われています。
昼行性であるため、海水浴の際に遭遇する危険性が高く、人間が襲われる事故も起こっているのです。
ホオジロザメは基本的には単独で生活し、普段はゆったりと泳いでいます。
しかし時速25~35㎞で泳ぐこともでき、獲物をとらえる際は奇襲攻撃をかけることもあるようです。
また、海面から飛び出すほどのジャンプも可能なので、大型な割には身体能力に優れていると言って良いでしょう。
ホオジロザメによる被害
毎年、ホオジロザメに人間が襲われる被害が後を絶ちません。
他のサメを含む、人間が襲われた事故は年間で100件近く報告されています。
世界でホオジロザメによる被害が最も多いのはカリフォルニアで、南アフリカやオーストラリアでも多数報告されています。
死亡事故自体は多くありませんが、ホオジロザメに人間が襲われた場合、たとえ命は取り留めたとしてもその鋭い歯と強靭な顎力により手足の切断は免れません。
日本での事故
日本では、現時点までに2件のホオジロザメによる死亡事故が報告されています。
・1992年3月、愛知県松山市堀江沖2.5km沖で、貝漁をしていた男性が行方不明になりました。水深20mほどの場所で作業をしていた男性から突然「引き上げてくれ」という救助連絡を受け引き上げましたが、すでに男性の姿は無く引き裂かれたウェットスーツや通信用ケーブルがありました。その断面に残っていた歯の跡から体長5m位のホオジロザメによるものだと判明しました。
・1995年4月、愛知県伊良湖沖、ミル貝漁をしていた男性が突然ホオジロザメに襲われました。急いで引き上げたところ体長6m位の大きなホオジロザメ右肩から腹部に噛み付ついていました。男性は右腕を食いちぎられ、出血多量でほぼ即死状態だったそうです。
大体にしてサメに襲われるのは、サーファーや海水浴場で遊泳している際、潜水漁をしている際が多いです。
日本の場合は、被害のほとんどが潜水漁をしている最中で、海水浴中の被害はありません。
しかし近年、海水浴客の増加などいろいろな要因によって、世界中でホオジロザメに限らずサメによる被害が増えているようです。
ホオジロザメは凶暴?
本来、ホオジロザメは人間を積極的には襲いません。
むしろ人間は骨が多く消化に時間がかかるため、好んで食さないと言われています。
ではなぜ襲われるのかというと、餌とするアザラシやオットセイと間違って襲うケースや、好奇心による試し噛みが多いようです。
ホオジロザメにとっては試し噛みでも、あれほど巨大なサメに一噛みされれば、人間などあっけなく引きちぎれて出血多量により死んでしまうのです。
サメに襲われないためには?
まず基本としてサメに襲われないためには、サメが出没する可能性のある海域で泳がないことが一番でしょう。
特に、近くで目撃情報があった時などは絶対に海に入らないようにしましょう。
また、サメは血や尿の匂いに敏感です。
遊泳中は決して放尿せず、傷口があり出血の可能性がある方は海に入らないことをお勧めします。
特に襲われやすいのはサーファーです。
サーフボードに乗って水面で手足をばたつかせている姿がアザラシに似ているためです。
サーフィンをする場合は、近くにサメがいないか常に注意を払いましょう。
また、サメは色を認識できるため、アザラシに間違えられないようサーフボードやウェットスーツは明るく派手な色にすると良いでしょう。
ホオジロザメの天敵
巨大なうえに鋭い歯を持ち合わせているホオジロザメにも天敵が存在します。
それはシャチです。
シャチはホオジロザメよりも体格が大きく、攻撃力とスピードのいずれも勝ります。
ホオジロザメが軟骨魚類であるのに対し、シャチは哺乳類で背骨があります。
ホオジロザメには内臓を守る骨がないため、吻端のあるシャチに突撃されたら簡単に内臓が破壊されてしまうのです。
とはいえ、ホオジロザメも危険なサメであることに変わりはないため、シャチも必要以外に襲うことはありません。
攻撃を仕掛けるのはシャチが子どもを伴っているときに不用意に近づいた場合で、子どもを守るためにシャチは攻撃を仕掛けて追い払うのです。
シャチは性格も非常に狡猾で、群れで襲ってくる場合もあります。
ホオジロザメにとってシャチは脅威の存在なのです。
絶滅の可能性とホオジロザメカフェ
ホオジロザメは現在、生息数が減少し絶滅の可能性があるとされています。
激減した理由は、駆除、フカヒレ目的の乱獲、スポーツハンティング、餌の減少などが挙げられます。
南アフリカ海域では353~522匹しか個体が確認できていないようです。
人間を襲う危険なサメと言われていますが、ホオジロザメもまた人間の手によって絶滅の危機にさらされているのですね。
そんなホオジロザメですが、“ホオジロザメカフェ”と呼ばれる海域が存在するようです。
基本的には単独で生活し広範囲に回遊すると言われていたホオジロザメですが、実は狭い範囲を季節ごとに回遊しているということが調査により分かってきました。
そして、ハワイからメキシコにかけての海域が“ホオジロザメカフェ”と呼ばれ、ここでオスとメスが出会ういわゆるお見合いが行われるようです。
年々個体数が減少しているホオジロザメ、是非カフェで良い出会いをして子孫を残していってほしいですね。
まとめ
ホオジロザメは、日本近海にも生息している大型のサメです。
積極的に人間を襲う種ではないようですが、アザラシに間違えたり興味本位で噛みついてくることがあるそうです。
世界中で襲われた報告があり、日本でも死亡事故が起こっています。
一方、人間が乱獲したことによりその個体数は減少し、絶滅の恐れさえ出てきている現状があります。
人間にとって危険な一面があるのは事実ですが、ホオジロザメからすれば人間の方がよっぽど怖い存在なのでしょうね。