タヌキは、昔話などにも登場するなど日本では馴染みのある動物ですが、近年、餌を求めて住宅街まで降りてきている目撃情報などもあるようですね。
その愛らしい姿に餌をあげたりする人もいるようですが、タヌキも野生動物であり危険性があるのを忘れてはいけません。
タヌキの場合、疥癬症という病気の危険性があるのをご存知でしょうか?
今回は、タヌキの生態と疥癬症についてご紹介します。
目次
タヌキの生態
始めに、タヌキとはどのような動物なのか?
生息地や食べ物などを見て見ましょう。
タヌキの特徴や生息地
タヌキは、イヌ科の動物で、体長50~60cm、体重3~9kgくらいです。
体色は灰褐色や茶褐色で、眼の周りに黒斑があるのがお馴染みの特徴ですね。
日本では、北海道、本州、四国、九州と広範囲に生息しています。
本州や四国、九州などにいるものは「ホンドタヌキ」、北海道にいるものは「エゾタヌキ」と呼ばれるそうです。
タヌキの生息地は、主に山地の森林で川などの水辺が近くにあるような場所に多く生息しています。
中には、2000 mを超える高山地に生息していたり、郊外の住宅地でみかけたりすることもあり、その生息域はとても広いです。
タヌキの生活ってどんなもの?
タヌキは、春から夏頃まで子どもを産み育てます。
繁殖場所は、特定の巣を作るのではなく、他の動物が掘った穴や岩の割れ目、木の根元などで繁殖します。
秋頃には、子どもも巣立っていきます。
この期間、家族は、近くに集まって生活し、オスのタヌキも子育てに参加し、メスや子ども達を守るそうです。
そして、タヌキは夜行性で夜活動します。
タヌキには、特定の場所で糞をする「溜めフン」と呼ばれるおもしろい習性があります。
1匹のタヌキには、10ヶ所ほど溜めフンの場所があるそうです。
また、タヌキは、すごく驚かされると一時的に気を失ってしまい、相手をあざむく習性があります。
これが、寝たふりをすることを「タヌキ寝入り」という由来になっています。
タヌキは何を食べるの?
タヌキは、雑食性で、果実や植物の根や地下茎、ネズミや小鳥、ヘビ、カエル、昆虫、甲殻類、ミミズなど何でも食べます。
食べ物を求めて、人の住む地域まで出てきて、農作物を荒らしてしまうこともあります。
疥癬症(かいせんしょう)について
住宅街で、毛が抜けて皮膚がごわごわと象の皮膚のようになったタヌキに遭遇したという話を聞くことがあります。
これは、タヌキが、「疥癬症(かいせんしょう)」という皮膚の病気になっているからです。
タヌキの疥癬症とはになにか?
ヒトやペットにうつることはあるのか?
心配になりますよね。
タヌキの疥癬症とは?
タヌキの疥癬症は、ヒゼンダニというダニに感染することで起こります。
ヒゼンダニに感染すると、ひどいかゆみを起こし、かきむしるため脱毛し、ガサガサな象のような皮膚になってしまいます。
ヒゼンダニは皮膚の角質にトンネルをつくり、そこに産卵します。
孵化した幼虫もまたトンネルをつくって寄生し、全身へ広がっていきます。
疥癬症にかかったタヌキは、その痒みと、毛が抜けることで体温調節ができない事などの理由でどんどん衰弱していき、やがて死んでしまう事が多いようです。
ヒトやペットにうつる?
結論から言いますと、疥癬症のタヌキとの接触によって、ヒトやペットにも感染する恐れがあります。
ヒトが感染すると、全身に赤い発疹が出て強烈なかゆみに襲われます。
ヒゼンダニには種類があり、その種によって感染し増殖する動物が異なります。
センコウヒゼンダニという種がイヌ、キツネ、タヌキに感染増殖することがわかっています。
また、ネコには、ショウセンコウヒゼンダニという種が感染増殖して、アライグマやハクビシンもこの種に感染増殖することが報告されています。
タヌキやイヌに感染するセンコウヒゼンダニがタヌキやイヌに、ネコに感染するショウセンコウヒゼンダニがネコに感染した場合は、その宿主に卵を産み増殖します。
したがって、疥癬症のタヌキとペットのイヌが接触し、イヌにも感染症が移ればダニが増殖していってしまいます。
しかし、本来の宿主でない動物に感染した場合は、そこで卵を産んで増殖することはありません。
タヌキの疥癬症の場合ヒトには適応しないダニなので、この増殖しないパターンにあたります。
この場合は増殖しませんが、一時的に激しいかゆみに襲われるので、やはり放っておいて大丈夫だとも言えません。
さらに、どの種のヒゼンダニがどの動物に感染するかは未だ不明な点も多いようで、今後新しい動物からヒトへの感染症例の報告もあるかもしれません。
疥癬症の治療法
疥癬症の治療薬(イベルメクチン)で改善しますので、ヒトの場合は医師、動物の場合は獣医師に相談しましょう。
また、感染源の特定も大切なので、感染源が分かれば環境の改善をして再発防止に努めましょう。
ちなみに、イベルメクチンは妊娠中でも飲めるようです。
しかし、授乳中は飲めないそうなので注意しましょう。
疥癬症の予防対策
疥癬症にかかっている様子のタヌキとの接触を避けることが一番の予防策ですね。
・ペットは放し飼いにしないこと
・イヌの散歩ではリードを放したりしないこと
・ネコは室内で飼うこと
でタヌキとの接触を避ける対策になります。
また、ヒゼンダニは、衣服や毛に付着して運ばれ、感染が広がりやすいといわれています。
感染している動物に触る場合は、予防着を着用したり、接触後は衣服を交換して、煮沸消毒や加熱消毒(50℃で10分間)するなどの処置をし、感染を予防しましょう。
もし、疥癬症のタヌキを見つけたら?
まず、絶対に素手で触ったりしてはいけません。
前述したように、一時的とはいえ疥癬症が移ってしまうかもしれません。
他にも、タヌキは意外と獰猛な一面もあるので、手を噛まれてしまうかもしれません。
また、イヌを飼っているなら接触させないように気を付ける必要もあります。
その弱った姿に同情して保護してあげようと考えるかもしれませんが、タヌキの保護は鳥獣保護法の違反になる恐れもあります。
かわいそうになる気持ちも分かりますが、これも自然の摂理と割り切り放置するのも大切なことかもしれません。
自宅の敷地内で動けなくなっているなど、どうしてもタヌキを保護する必要があるときは、お住まいの地域の役所か野生動物担当部署に連絡して下さい。
自分でやらざるを得ない時は、噛まれて怪我をしないように厚手の皮手袋などを用意しましょう。
まとめ
タヌキは、日本各地に生息しているイヌ科の動物です。
雑食性で何でも食べるため、食べ物を求めてヒトの生活地域まで出てきて、農作物を荒らすこともあります。
タヌキがヒゼンダニの感染により疥癬症にかかっている場合、接触によって、ヒトやペットのイヌ、ネコにも感染する恐れがあります。
ヒトへの感染は一時的なものですが、感染すると強烈なかゆみに襲われるので、病院へ行き治療薬(イベルメクチン)をもらいましょう。
イヌが感染した場合は、ヒゼンダニが増殖してしまうので早めに獣医師に診せに行きましょう。
近年、都市部でもタヌキを見かける事が増えているそうですが、タヌキも野生動物でありヒトへの危険性もあります。
今回の疥癬症にしても、野生のタヌキとの接触を避けることが一番の予防対策になります。
もしも、タヌキなどの野生動物の保護が必要な場合は、お住まいの地域の役所か野生動物担当部署に連絡しましょう。