ハブといえば、沖縄県にいる猛毒のヘビ!というイメージが一般的だと思います。
奄美大島にもハブは生息していますが、とにかく暖かい南の島にいる毒ヘビという認識をしている人が多いでしょう。
出来れば遭遇したくないですが、もし出会ったり咬まれたりしたらどうすればよいのでしょう…?
今回は、ハブ(蛇)の生態や毒性、咬まれた時の対処法や応急処置についてご紹介させていただきます。
目次
ハブ(ホンハブ)の生態
ハブは、クサリヘビ科ハブ属に属するヘビの総称です。
日本では沖縄と奄美の方に、ホンハブ、サキシマハブ、ヒメハブ、タイワンハブの4種が生息しています。
ここでは、1番生息地が広く個体数も多いホンハブについてお話させていただきます。
以後、ここでいうハブとはホンハブのことです。
ハブは、体長は100~200cmほど、大きい個体だと240cmにもなる、日本国内では大型の毒ヘビです。
頭部は大きく、マムシなどと同様に三角形の頭が特徴的です。
白~黄色地に黒く細かい網目模様がありますが、体色や斑紋には地域により変異があります。
夜行性ですが、曇りや雨の日は昼間でも活動しているときがあります。
肉食性で、主にネズミを食べています。
生息地では、餌となるネズミを追って民家に侵入してくるケースもあるそうです。
生息地である地域が温かいせいかハブは冬眠をしません。
しかし、冬場は活動が鈍くなるようです。
ハブは非常に攻撃的な性格をしており、威嚇なしでいきなり襲ってくることもあるほどです。
特に、産卵期である6~8月にかけては、特に攻撃的になっているので注意が必要な時期でしょう。
そしてハブの牙には毒腺があり、毒自体はマムシより弱いのですが、噛まれた際に注入される毒量が多いため危険な毒ヘビだと言えます。
ハブの生息地
沖縄にはどこにでもハブがいる!?と思われがちですが、そんなことはありません。
ハブがいる島といない島があり、ハブの種によっても生息地は異なってくるのです。
ホンハブがいる島
沖縄本島、伊平屋島、久米島、奥端島、屋我地島、野甫島、瀬底島、伊江島、古宇利島、水納島、渡嘉敷島、渡名喜島、儀志布島、新城島、黒島、宮城島、伊計島、平安座島、浜比嘉島、浮原島、藪地島
奄美大島、与路島、徳之島、加計呂麻島、請島
サキシマハブがいる島
沖縄本島、石垣島、西表島、内離島、外離島、竹富島、小浜島、嘉弥真島、黒島、
ヒメハブがいる島
沖縄本島、伊平屋島、伊是名島、久米島、屋我地島、野甫島、具志川島、屋那覇島、伊江島、渡名喜島、座間味島、安室島、阿嘉島、慶留間島、外地島、屋嘉比島、渡嘉敷島、久場島、儀志布島、新城島、黒島、仲島、前島、端島
奄美大島、与路島、徳之島、加計呂麻島、請島
タイワンハブがいる島
沖縄本島
ハブがいない島
北大東島、南大東島、波照間島、与那国島、由布島、来間島、鳩島、下地島、伊良部島、池間島、大神島、多良間島、粟国島、奥武島、久高島、津堅島、宮古島※
※宮古島には、ハブが生息していないはずですが、2013年にサキシマハブが1匹発見されました。しかしこれは、船の荷に紛れて入り込んだ偶発的なものだという見解が強いようです。
ハブの毒性
ハブの毒は出血毒で、咬まれると、
・痛み、患部の壊死、腫れ、嘔吐、腹痛、下痢、血圧低下、意識障害
といった症状を引き起こします。
出血毒が体内に入ると、赤血球や白血球と毛細血管を破壊して、血液の機能を壊してしまいます。
白血球が機能しなくなれば免疫力が低下しますが、それより問題なのが赤血球が機能しなくなることと毛細血管の破壊です。
赤血球の色素であるヘモグロビンは、酸素を身体中に運搬する役割があります。
この機能が壊されてしまうと、酸素が行き渡らず、酸欠状態になって細胞が窒息死してしまいます。
ハブに咬まれた場所が壊死してしまう原因は、細胞の窒息死なのです。
したがって、応急処置の時に血流を止めてしまうと、傷周りの細胞が酸欠になって壊死する恐れがあるので、緩めに縛る必要があるのです。
しかし逆に、走ったり暴れたりして血流が良くなり毒が全身に回ってしまうのも問題です。
毛細血管の破壊が広がってしまうので、安静にして、病院へ行きましょう。
現代では病院で治療を受ければ滅多に死亡しませんが、数週間の入院が必要になったり、壊死による後遺症が残ったり、最悪の場合患部の切除もありえます。
最近では、血清の普及や医療の進歩で、ハブに噛まれて死亡することは滅多にないようですが、重症例は年数件発生しています。
2014年には、奄美で50代の男性がハブに手を咬まれて死亡する事故が起こりました。
死亡事故は10年ぶりだそうですが、やはり油断ならない毒ヘビだということですね。
ハブに咬まれた場合の対処法
ハブと言えば猛毒のイメージがあり、もし咬まれたら非常に慌ててしまうかもしれません。
しかし現在では、病院でしっかり治療すれば死亡することはほぼありませんので、まずは落ち着いて対処しましょう。
ハブかどうかを確認する
とにかくヘビからゆっくり離れて、咬んだヘビがハブかどうか確かめましょう。
見分け方として、ウロコが細かいのがハブで~とか色々ありますが、咬まれた時にそんなとこ見れるわけありませんよね。
その時は、とりあえず頭が三角の奴はハブの可能性が高いと思ってください。
また、すでにヘビがいない場合は、見分けるのは難しいと思いますが、ます傷口を確認しましょう。
ハブは他のヘビに比べて牙が長く、咬まれると牙の跡が残ります。
咬まれ方によって、1〜4本の跡になり、2本跡が多いようです。
また、考えてるうちに数分で腫れてきて、焼けるような痛みを感じたら、それはハブ毒です。
周りに助けを求め、すぐに病院へ向かう
周りに誰かいるときは助けを求め、すぐに病院へ向かうようにしましょう。
解毒にタイムリミットはない(血清治療は数時間後でも有効)ので、走って病院へ駆け込む必要はありません。
逆に、走ると症状が悪化する恐れがあります。
出来るだけ安静にして、車で運んでもらうか、ゆっくり歩いて病院へ向かいます。
余裕があれば、向かいながら病院へ連絡すると到着後の対応がスムーズです。
咬まれた時刻と、症状の進行状況を記録しておくと、治療の際に参考になります。
しかし、患部の痛みの他に、めまいや呼吸困難などの症状がある場合は、急を要するので救急車を呼びましょう。
また、顔や首などを噛まれた際も、患部の腫れによって呼吸困難になる可能性もあるので急いだほうがいいでしょう。
病院では、いつ、どこを、どのように咬まれたのか、咬まれてからどんな症状が出て、現在はどういった症状が出ているのかを出来るだけ詳しく説明しましょう。
過去にハブに咬まれた事がある場合アナフィラキシーショックを起こす可能性もありますので、その事も伝えるようにしましょう。
応急処置
その場で出来る応急処置として、まずは可能な限り毒を吸い出すことです。
しかし、口で直接毒を吸いだす方法は、口の中に傷があった場合、体内に毒が回ってしまう可能性があるのでおススメしません!
虫歯、口内炎、歯周病など自分でも気付いていない傷があるかもしれないので、止めた方が良いでしょう。
毒を吸いだせる専用器具(ポイズンリムーバー)で毒を吸い出すことが理想的です。
また、素人判断で傷口を切って毒を出すのは危険です。
必要があれば病院で処置してくれるので、自分で切る必要はないです。
次に、咬まれた場所を心臓より上に上げて、包帯やネクタイなどの帯状の布で、指が1本入る程度に緩めに縛ります。
しかし、血流を止めすぎてしまうと逆効果になるので、紐などではなく帯状の幅のある布で、緩めを意識して縛ります。
腫れてキツくなるようなら、その都度縛り直してください。
また、痛むからといって、鎮痛剤やアルコールを勝手に摂取してはいけません。
病院での治療に差し障ります。
ハブに咬まれないためには?
前述したように、ハブは好戦的な性格で、人が近付くと威嚇なしで咬みついてくることがあり、毎年100件前後の被害が出ています。
まず、ハブに咬まれないために大切なのは、
・ハブが居そうな場所に近付かない
ことです。
ハブは森の奥に居るイメージが強いですが、森に限らず、草むらや畑、公園、石垣の隙間など、意外と身近な場所で発見報告や被害報告があります。
ハブは夜行性の生き物でなので、基本的に日中は日影でじっとしていますが、日当たりの悪い場所は昼でも危険です。
また、雨や曇りで薄暗い日は開けた場所にも出てくることがあるので注意が必要です。
道を歩く時も、なるべく真ん中を歩くようにしましょう。
どうしても森や草むらに入る場所は、
・長袖長ズボンに長靴など、咬まれやすい場所を露出しない格好をする
などの対策をしましょう。
ハブは木に登ることも多いので、木陰で休む場合は頭上にも注意してください。
硫黄の臭いやアルカリ性に弱いと言われていましたが、現在は効果がないとされています。
虫除けスプレーなどのように、ハブに有効な忌避剤はありません。
もし遭遇してしまった場合は、
・1.5メートル以上の距離を取る
ようにしましょう。
ハブは体長の3分の2ほどの距離を伸ばして攻撃してきます。
したがって、1.5mほど離れておけばハブの攻撃圏内から外れることが出来ます。
まとめ
ハブは、沖縄や奄美に生息する大型の毒ヘビです。
マムシと同じ出血毒を持ち、咬まれると、痛みと腫れ、患部の壊死、意識障害といった症状が出ます。
ハブの毒は応急処置として出来るだけ毒液を吸い出し、安静にして、すぐに病院で治療することで症状の重症化を防ぐ事が出来ます。
昔は年間10人以上の死者が出ていたそうですが、現在は血清が普及したことや医療が進歩したことで、死亡する例は極まれとなっています。
ハブは恐ろしく危険な生き物ですが、過剰に怯える必要はありません。
ハブが活動する夜間に出歩いたり、日当たりの悪い場所や草むらに近寄らなければ、遭遇することはほぼないです。
もし遭遇した場合には、1.5メートル以上距離を取り、近付かないように注意しましょう。