毒を持つ生物と言えば、蛇やクモ、サソリにムカデといった生き物を連想すると思います。
しかし、鳥にも毒を持つ種がいるというのをご存知でしたか?
その鳥の名はピトフーイ。
カラフルな色と愛嬌のある顔に反して、猛毒を持つ鳥として知られています。
今回は、猛毒の鳥ピトフーイの生態や毒性についてまとめました。
ピトフーイとは?
ピトフーイとは、スズメ目に属する有毒鳥類の総称です。
分布域は、インドネシアとパプアニューギニアの2ヵ国の領土となるニューギニア島とその周辺の島々のみです。
亜熱帯や熱帯低湿地の森林で生活しています。
ピトフーイには、かつて同じ分類とされていた、
・カワリモリモズ
・ズグロモリモズ
・ムナフモリモズ
・サビイロモリモズ
・クロモリモズ
・カンムリモリモズ
の6種が存在しています。
現在では調査が進み、
・最も毒性の強いズグロモリモズとカワリモリモズはコウライウグイス科
に、
・ムナフモリモズ・サビイロモリモズ・クロモリモズはモズヒタキ科
に、
・カンムリモリモズはカンムリモズビタキ科
に分類されました。
今でもこの6種はピトフーイと呼ばれています。
ちなみに、一般的に猛毒鳥ピトフーイと呼ばれているのは、最も毒性が強いズグロモリモズのことです。
ピトフーイの体の特徴は?
ピトフーイの体長は23㎝ほどとされますが、種類によって少しずつ異なり、クロモリモズの体長は28㎝ほどです。
撮影された写真を見ると、男性の片手に乗るほどのサイズだとわかります。
どの種類のピトフーイも、毒鳥とは思えないキュートさですね。
ピトフーイの被毛の色も種類によって異なります。
ズグロモリモズは、オレンジ色の背部と腹部・黒色の翼と頭部、と遠目にも鮮やかな体色で、これらのカラーリングは捕食者に対する警告色とされます。
クロモリモズは、ふわふわの黒褐色の体で、腹部は白色です。
カンムリモリモズは、褐色がかった灰色の体、白色の腹部、冠のようなおでこと喉部は黒色です。
ピトフーイは何を食べている?
ピトフーイは雑食性で、昆虫・クモ・節足動物・げっ歯類・果物などを食べています。
また、Choresine属の小型でカラフルな甲虫を食べることで、毒を持つようになりました。
ピトフーイは本当に猛毒の鳥?
過去において毒鳥の存在は伝説のみでしたが、1990年、ニューギニアのジャングルで調査をしていた調査員によって、ピトフーイの毒性が発見されました。
その後、残りの5種の仲間が発見されます。
そして最も毒性が強いのはズグロモリモズで、比較的毒性の弱いカワリモリモズはズグロモリモズに擬態するとされます。
ちなみに、6種いるピトフーイのうち、ムナフモリモズだけは無毒の鳥です。
発見のきっかけは、調査のために捕まえたピトフーイを扱った時でした。
調査員のひとりがうっかり指にケガをしてしまい、何気なく傷口を舐めたところ、「衝撃的な刺激」を感じたと言います。
この調査員のすごいところは、その後、その刺激を改めて確認するために、ピトフーイの羽毛を引き抜いて舐めてしまったのです。
これによりピトフーイが毒鳥であることが確認されましたが、ずいぶんと体を張ったやり方に驚きです。
羽毛を舌に乗せると、くしゃみと、口と鼻の粘膜に麻痺症状が出て、灼熱感もあったそうです。
死ぬほど苦しむかもしれないという恐怖はなかったのでしょうか・・・。
ピトフーイの毒性は?
ピトフーイの毒は、神経麻痺と筋肉を収縮させる作用のあるホモバトラコトキシンです。
毒性は強く、ふぐ毒の4倍とされ、わずか数mgほどでネズミが死ぬとされています。
これはあの有名な毒カエル、ヤドクガエル(フキヤガエル)の持つ毒と同じ成分です。
ピトフーイには、羽根や皮膚に毒があるので触れるだけでも危険です。
また、筋肉にも少量の毒が含まれます。
ピトフーイは毒を自ら生成しているわけではなく、毒を持っているChoresine属の甲虫を食べる事で、毒を持つ鳥となっていると考えられています。
ちなみに、ピトフーイは蛇のように獲物に噛みついて毒を注入することはありません。
あくまで、捕食者である蛇や猛禽類から身を守るための毒とされます。
まとめ
ピトフーイは、ニューギニア島とその周辺の島々にのみ生息する有毒鳥類の総称です。
一般的にピトフーイと呼ばれるズグロモリモズは、オレンジ色と黒色が鮮やかで、ぼさぼさ頭がチャーミングですね。
しかし毒性は強く、ホモバトラコトキシンという神経毒で人間を死亡させることも可能な猛毒です。
ピトフーイの羽と皮膚に毒が含まれており、触れるだけでも危険とされます。
1990年、まさに世紀末、20世紀最後の大発見ともいうべき「毒鳥発見」のニュースが世間を騒がせました。
それと同時に、人々は中国の古文書の中にしか存在しなかった毒鳥「鴆」こそがピトフーイではないかと噂します。
暗殺にも使われたとされる「鴆」ですが、直接触れませんし、宙を舞う小さい羽毛が体に触れても危険なので、もし事実なら飼育担当者は命がけの仕事だったのでしょうね。