スマトラトラを知っていますか?
なんだか早口言葉のような名前ですが、インドネシアのスマトラ島に棲息するトラのことです。
トラの仲間はロシアなど北に生息しているイメージが強いですが、トラの仲間の中で最も南に棲息しているトラがスマトラトラです。
今回は、スマトラトラの生態と危険性、絶滅の危惧について紹介します。
スマトラトラってどんなトラ?
スマトラトラは、ネコ目ネコ科ヒョウ属に属するトラの一種です。
上述の通り、インドネシアの熱帯モンスーン気候のスマトラ島の熱帯のジャングルに棲息する、最も南に住むトラの仲間です。
基本的にジャングルにいますが、標高2500メートルの高山にも現れたことがあるそうです。
北方に住むトラと比較すると小さめの身体ですが、それでも小さいといってもオスは体長180cm、体重150kgとちょっとした力士並の体格なのでライオンと並ぶ百獣の王、大型肉食獣であることに変わりはありません。
ちなみに最大のトラはロシアのアムールトラで、300センチ300キログラムにもなります。
体色は黄色がかった赤褐色で、他のトラと比べるとくすんだ色をしていています。
縞模様が多いのと、オスは頬の毛が長いこともスマトラトラの特徴ですね。
もちろん肉食獣なので、鹿、猿、猪、鳥などを食べていますが、魚や昆虫、果物まで何でも食べます。
さらに、他のネコ科動物と違って水に入ることも平気だし泳ぐこともあります。
生息域のスマトラ島では、まさに最強の肉食獣です。
スマトラトラの生涯
他のトラと同様に1匹で単独行動していて、ジャングルの中にそれぞれ広大な縄張りを持っています。
基本的に縄張りは他のトラと被らないようになっていて、バッティングした場合は弱いほうが退きます。
その中でオスとメスが11月から4月にごろの繁殖期に出会い、交尾をして3ヶ月から4ヶ月の妊娠期間の後2匹から3匹の子トラが生まれます。
父トラは子育てをしません。
それから半年間は母トラの母乳で育ち、その後段々肉食になり、母トラから狩りを教えられて段々独り立ちして4歳くらいで大人になり、また子孫を残すようになります。
寿命は野生では15年くらいなので、野生動物としてはゆっくり育てられてゆっくり成熟する動物ですね。
天敵は人間
そんなスマトラ島では最強の肉食獣であるスマトラトラですが、唯一の天敵は人間です。
かつては、毛皮が高値で取引されたり、ハンターのステータスとして狙われたので直接的に数を減らしました。
さらに最近では、周辺の開発によりジャングルが伐採されてエサとなる動物が減ったり、トラの数に対する縄張りが足りなくなっています。
開発によりジャングルがバラバラに分断されることで、雄のトラと雌のトラが出会うことも困難になって現在スマトラトラの生息数はとても少なくなっています。
国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種(CR)となっており、レッドリストに載って保護されている状態です。
スマトラトラが人を襲う事例が多発
スマトラトラの生息域が脅かされている状態は、トラだけにとっての脅威ではありません。
本来スマトラトラが住んでいたジャングルを開発して人が住み始めた場合、トラにとっては自分の縄張りに勝手に人間が住み始めただけなので、当然人を襲う事例が多発します。
食糧不足によって人里に食料を求めてやってくることもたくさん起こります。
違法伐採に従事していた職員がジャングルで襲われたり、一般住民が襲われて命を落とす事例が多数起きています。
武器を持たない人間は150キログラムのトラに鋭い爪と木場で襲われたらひとたまりもありません。
逆にそういった人を襲うトラを銃や罠を使って駆除することもあり、人間とトラどちらにとっても危険な状態なのです。
スマトラトラの密猟
レッドリストで保護されているにも関わらず、未だスマトラトラは密猟の対象になっています。
・スマトラトラの毛皮は依然として需要があり高額で取引されること
・骨や歯が漢方薬の材料となること
・さらに上記の住民への被害が報告されること
から、レッドリストで保護されているといっても、ハンターや生息域の住民による密猟がなかなか無くならない、というのが現状のようです。
野生化におけるスマトラトラの生息数は、現在500頭ほどだと言われています。
生息環境の保護が急務
このように、トラの生息環境の森林を人間が開発することで奪い、さらに人間との衝突によって人間とトラの両方が命を落とすという状態が続いているので、トラ側から見て人間が天敵とみなされています。
もし、人間が丸腰の状態でジャングルでトラに出会ったら勝ち目がありません。
スマトラトラは天然のハンターなので、くすんだ縞模様はジャングルに潜んでいたら人間が先に見つけることが難しいです。
トラは、人間のように狭い一か所で群れて生活することが出来ないため、広大な縄張りが必要となります。
トラの生息環境を保護することで人里に来ないようにして、人間との衝突を避けるという国主導の保護政策は、トラだけでなく人間の命を守る為にも重要でしょう。
まとめ
スマトラトラはトラの中でも一番南に棲息するため、人間の自然開発によって生活域がバッティングしやすいトラといえます。
現に、スマトラトラが人を襲ったという話も多数あります。
しかし、スマトラトラは、住民の駆除やハンターの密猟によって個体数が激減し、絶滅の恐れがあります。
是非国や国際機関を挙げた保護を徹底して、お互いに危険におびえずに共存できるといいですね。