ハイエナと言えば“サバンナの掃除屋”、そんなイメージがついていますよね。
実際にテレビなどで紹介されるハイエナは、ライオンの食べ残しを漁っていたり他の動物が仕留めた獲物を横取りしたりといった内容が多いです。
アニメの世界でもずる賢い卑怯者といったキャラクターになっていますね。
果たしてハイエナは本当に私たちのイメージ通りの動物なのでしょうか?
今回は、ハイエナの種類とそれぞれの特徴や生態について詳しくご説明します。
ハイエナとは
ハイエナは、食肉目ハイエナ科に属する動物の総称で、イヌに似た姿をしています。
“タテガミイヌ”という別名も持つためイヌと近縁なのかと思いますが、彼らはジャコウネコ科から進化したと考えられているネコに近い動物です。
ハイエナ科には4種が分類されています。
その4種とは、
・ブチハイエナ、カッショクハイエナ、シマハイエナ、アードウルフ
でそれぞれ独立しています。
共通する特徴としては長い鼻面と長い首で、首筋から背中にかけての毛が長くたてがみ状になっていることです。
また、前脚よりも後脚のほうが短いのもハイエナの特徴です。
そして、ハイエナの顎は非常に強く、その強さは哺乳動物の中で一番と言われています。
そのため、捕らえた獲物の骨まで食べることができ、消化能力も優れているため骨も栄養にすることができるのです。
ちなみに、ハイエナのメスの外性器は擬ペニスを形成し、しかも睾丸まで形成しているためしばらくハイエナは両性具有と言われていました。
現在はそれが誤りであったと分かっていますが、今でも外見からオスメスを判断するのは難しいようです。
前述のように、ハイエナ科には4種が分類されています。
さて、それではこれから4種それぞれについて見ていきたいと思います。
ブチハイエナ
まず、ブチハイエナは、褐色や灰褐色地の体毛に黒色斑点がある種でマダラハイエナと呼ばれることもあります。
私たちがテレビなどで良く見るのはこのブチハイエナでしょう。
ブチハイエナはサハラ砂漠以南に広く生息しています。
4種の中で一番体が大きく、体長100~180cm、体重40~85kg近くになります。
基本的にメスのほうがオスよりも大きいです。
ブチハイエナはクランと呼ばれる10~40頭の群れを作って生活するのですが、その群れのリーダーはメスで順位もメスのほうが高いです。
群れの仲間意識は強く、協力して狩りを行います。
ブチハイエナは死肉を漁ったりもしますが、視覚、嗅覚、聴覚にも優れ狩りが上手い種であるため基本的には自分たちで獲物を捕らえます。
世間的にはライオンの獲物をハイエナが横取りするイメージですが、逆にブチハイエナの捕らえた獲物をライオンが横取りするケースのほうが多いそうです。
いずれにしても、ライオンとハイエナの関係性は良くないということですね。
カッショクハイエナ
次に、カッショクハイエナについてみていきましょう。
カッショクハイエナはアフリカ大陸南部の草原や半砂漠に生息しています。
ブチハイエナよりも小柄で、体長110~140cm、体重35~55kg程度になります。
体毛は名前の通り褐色で首元から胴体にかけての毛が長いのが特徴です。
四肢の毛色は胴体よりも少し淡く、暗褐色の縞模様が入っています。
また、耳は大きく尖っています。
夜行性で、ブチハイエナ同様クランと呼ばれる群れを作りますが、ブチハイエナよりは小規模のようです。
肉食ですが雑食性があり、昆虫類や魚類、小型の爬虫類、鳥類、果実なども食します。
主食はライオンの食べ残しなどの死肉ですが、狩りも得意とするため群れで協力して獲物を捕らえることも多いです。
現在、森林破壊による生息地の減少及び駆除により個体数が激減し、絶滅危惧種に指定されています。
シマハイエナ
続いてシマハイエナについてご説明します。
シマハイエナの生息地はサハラ砂漠以北からアラビア半島、インドやネパールにまでわたって広がっており、ハイエナの中で唯一アジアにも分布している種です。
砂漠で見かけることはなく、草原や半砂漠状態の地域に生息しています。
体長は100~120cm、体重25~55kg程度と、前述の2種よりも小さいです。
体毛は長く粗く、白色や淡褐色地の体毛に黒色の縞模様が胴体から四肢にかけて入っています。
耳はカッショクハイエナ同様、大きく尖っています。
シマハイエナは群れを作らず単独で行動します。
夜行性のため日中は巣穴や岩陰で休んでいますが、広い縄張りを持ち、夜になると縄張り内を歩き回って獲物を探します。
食性はカッショクハイエナと一緒で、動物の死肉のほか昆虫類や魚類、小型の爬虫類、鳥類、果実などを食す雑食性です。
獲物が少なくなると家畜を襲うこともあり、人間から害獣扱いをされています。
そのため駆除の対象となり、森林破壊による生息地の減少も加わってその生息数は減少し、現在は準絶滅危惧種に指定されています。
アードウルフ
最後に、アードウルフについてですが、彼らは他の3種とちょっと異なる点があります。
アードウルフはアフリカ大陸東部から南部にかけて生息している種で、別名“ツチオオカミ”とも呼ばれます。
ハイエナの仲間でありながらウルフやオオカミなどといった名がつけられたのは、見た目がオオカミに似ているからということのようです。
アードウルフは体長55~80cm、体重8~14kg程度と、4種の中では一番体が小さいです。
体毛は長く、毛色は黄灰色や黄褐色、赤褐色などさまざまです。
また、胴体や四肢には黒色の横縞が入っています。
鼻先が小さく尖り歯も小さいため、顎の力が弱いため骨ごと食べるなど到底できません。
アードウルフは通常サバンナや低木林に生息していますが、臆病な性格であるため日中はほとんど巣穴に潜んでいます。
夜になると活動を始めるのですが、なんとこのアードウルフの主食はシロアリです。
小型哺乳類や死肉を食べることもありますが、彼らはハイエナでありながら昆虫食なのです。
アードウルフは生後3ヶ月からシロアリを食せるようになりますが、成体になるとなんと1週間で30万匹ものシロアリを食べるようです。
見た目は肉食動物なのにシロアリを食べるなんて、ちょっと理解しがたい光景かもしれませんね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
こうしてみると、一般的なイメージとは程遠いですね。
アードウルフ以外の3種については、決して他の動物の獲物を横取りばかりしているのではなく、ハイエナは自分自身でも狩りを行う立派なハンターなのです。
しかも、実は俊足でかなりの持久力もあるというから驚きです。
サバンナの中では、ヒョウやチーターよりも優秀なのです。
百獣の王と言われるライオンにも負けず厳しい環境下で生き抜いていけるのは、こういった能力と、獲物を骨まで砕き、それを消化し栄養にできる体を持ち合わせた結果でしょう。
アフリカでは、人口が多いこともあり人間とハイエナの接触機会も多いです。
当然、人間が襲われることもあります。
アフリカに暮らす人々にとっては、ハイエナも非常に危険な存在と言えるでしょう。
ハイエナは死肉を漁る動物だと勘違いせず、もしアフリカに行って見かけた場合は決して油断しないようにしましょう。