ナマズと言えば淡水魚。
大きな体で沼や川に潜んでいるイメージですが、実は海に棲むナマズもいるのです。
その名はゴンズイ。
ナマズの仲間でありながら海に生息し、釣りなどでよくかかることがあります。
実はこのゴンズイには毒のある棘があり、刺されるとものすごく痛いのです。
今回は、このゴンズイの生態や毒性、刺された時の症状と治療について取り上げてみましょう。
目次
ゴンズイの生態
まずはゴンズイの生態についてですが、ゴンズイはナマズ目ゴンズイ科ゴンズイ属に属する海水魚です。
日本においての主な生息地は本州中部以南の太平洋岸で、沿岸の岩礁域や砂泥底、港湾などで見ることができます。
夜行性のため昼間は岩陰などに隠れていますが、夜になると餌を求めて活発になり、夜釣りをするとかかることが多い魚です。
体長10~25cm程度の魚で、体色は茶褐色から黒褐色、そして頭から尾にかけて黄色い線が2本あります。
この黄色い線は幼魚の時ほどはっきり見えます。
体表に鱗はなく、粘液でヌルヌルしています。
そして、ゴンズイの左右の胸ビレと背ビレには鋭い毒棘があります。
ゴンズイが海中で自ら襲ってくることはありませんが、釣りあげた際に釣り針を抜こうとして誤って刺さったり、調理の際にうっかり刺さることが多いようです。
また、子どもなどが釣りや磯遊びの際に知らずに触ってしまうこともあるので注意が必要です。
口元にはヒゲがあり、上唇側に4本、下唇側に4本、計8本あります。
このヒゲには味蕾があり、ゴンズイは味を感知することができると言われています。
そして、このヒゲを動かしながら餌となるゴカイなどを探しているのです。
ヒゲは味覚以外にも触覚を感じることができ、最近の研究でこのヒゲにより海水のわずかな酸性度の変化を感知することができることが分かったようです。
魚の能力については、まだまだ知られていない部分が多いのかもしれませんね。
ゴンズイには地方名も多く、ギギ、ウグ、ギンギ、ウミナマズ、カラコなどさまざまです。
ゴンズイは胸びれの棘と骨をこすり合わせてググっと鳴くため、これが地方名の由来となっているところもあるようです。
ゴンズイはナマズの仲間の中で唯一、その一生を海で過ごすと言われています。
しかし、偶発的に川に迷い込むこともあり、河口付近で見かけることがあります。
海外では湖にも生息していることが確認されています。
ゴンズイ玉
ゴンズイは、幼魚のころは群れで生活をしており、似たような大きさ同士の個体で塊のように密集する“ゴンズイ玉”と呼ばれる群れを作ります。
これは、集団で固まり大きく見せることで外敵から身を守るためです。
この“ゴンズイ玉”は親が同じだったり同じ地域で生まれたもの同士で形成されており、肛門あたりから出る集合フェロモンをヒゲで感知することによりお互いを認識しているのです。
この“ゴンズイ玉”は成魚になると解消され、成魚は餌を探すときなどは単独行動が多いようです。
ゴンズイの毒性
それでは、ゴンズイの毒性についてみていきましょう。
胸ビレと背ビレにある毒棘
ゴンズイの毒棘に刺されると、まず激痛に襲われ、患部は次第に赤く腫れ、痺れも出てきます。
ひどい場合には、吐き気、下痢、呼吸困難といった症状があらわれ、患部が壊死することもあります。
過去には死亡例があるほどです。
毒はタンパク毒ですが、詳しい成分は分かっていません。
体表の粘液にも毒が!
そして、実はゴンズイのヌルヌルした体表粘液にも毒があることが最近の研究により分かりました。
魚の粘液は鱗の代わりとして体を守る役割があり、体液の調節も行っています。
そして魚の種類によっては毒を持つことで外敵から身を守っているのです。
ゴンズイも同様で、研究では粘液の毒1グラムでマウス40匹が死んだようです。
ヒレにある毒と同じタンパク毒で、人間がもしこの粘液を口にすると嘔吐といった症状があらわれる可能性があります。
気を付けること
前述したように、釣りあげた時と調理するときに刺される事が多いようです。
釣りあげた際は慎重に触れ、ペンチやニッパーで根元から毒棘を除去しておくようにしましょう。
触れた後はしっかり手を洗うことも忘れずに。
また、ゴンズイの毒は、ゴンズイが死んでいても消えることはないそうです。
とにかく必要以外に触らないようにし、触る場合はできれば手袋をするなど気をつけましょう。
また、釣り場などに捨ててあるゴンズイを踏まないようにも注意が必要です。
ゴンズイの毒棘は、薄い靴底なら貫通するほど鋭いので、誤って踏んでしまい刺される危険性もあります。
ゴンズイの毒棘に刺されてしまったら
もしゴンズイの毒棘に刺されてしまったら、しっかり対処しましょう。
1、まず患部を洗い流し、棘が残っている場合には取り除きましょう。
2、そして傷口からできるだけ毒を絞り出してください。
ポイズンリムーバーという毒を絞り出す道具があるので、海へ行く際は念のため準備しておくのも良いでしょう。
3、その後は40℃~45℃程度のお湯に30分~1時間程度浸します。
毒はタンパク毒であるため熱により不活化し、痛みが少し和らぐのです。
お湯が無い場合は、自動販売機で温かい飲み物を買い患部に当てるとよいでしょう。
4、痛みが続いたり、吐き気や下痢の症状がみられる場合には病院を受診してください。
ゴンズイの毒は過去に死亡例があるくらい怖いので、決して甘くみてはいけません。
気になる症状があるときは、自己判断せずに病院へ行きましょう。
おそらく病院でもお湯による処置が施され、破傷風予防や鎮痛剤の投与といった処置もなされるようです。
実は美味しいゴンズイ
ゴンズイはそのヒレの毒棘があるため、釣りでかかっても厄介者として扱われることが多いですが、実は食べると美味しいとも言われています。
ゴンズイの味に魅せられ、ゴンズイ目当てで釣りをする人もいるようです。
基本的には市場には出回らないため、食べるためには自分で釣るしかありません。
ゴンズイのぬめりが嫌という人もいますが、毒棘さえ取り除いてしまえば特に問題はありません。
美味しくいただくためには、釣ってすぐ棘を取り除く処理をするほうがいいようです。
この時、取り除いた棘をその場に放置すると、誰かが誤って踏んでしまう可能性があります。
前述したように、薄い靴底だと貫通してしまうこともあるので、棘は忘れずに捨てましょう。
さて、ゴンズイの調理法は、
・味噌汁、蒲焼き、刺身、天ぷら
がおすすめです。
ゴンズイの身は筋肉質で弾力があり、脂ものっているため絶品です。
蒲焼きにすると鰻の味にも似ているようです。
毒があり面倒なところはありますが、興味のある方はぜひ一度お試しください。
まとめ
ゴンズイは、海に生息するナマズの仲間で、胸ビレと背ビレに鋭い毒棘があります。
毒棘に刺されると、激痛のほか、吐き気や呼吸困難といった症状があらわれ、過去には死亡した例もあります。
万一、ゴンズイに刺されたら患部を温めることが大切で、症状が続くようなら病院へ行きましょう。
ゴンズイは、危険な魚でもありますが、食べるととても美味しい魚でもあります。
最近では、ゴンズイ目当てで釣りに行く人もいるのだとか。
夜釣りで釣れることが多いゴンズイですが、誤って素手で掴んだりしないよう気を付けましょう。