毒グモに咬まれて皮膚が壊死!?
何とも恐ろしい話ですが、実際にこのような被害が多発している地域があります。
その毒グモとは、アメリカに生息するドクイトグモ。
ドクイトグモは非常に強い毒を持ち、その毒により咬まれた箇所の組織が破壊されてしまうのです。
幸い日本には生息していませんが、危険なクモとして特定外来生物に指定されています。
今回は、このドクイトグモの生態と毒性、噛まれた時の症状や治療について詳しくみていきましょう。
ドクイトグモとは
ドクイトグモは、クモ目イトグモ科に属するクモの一種です。
北アメリカ南部のテキサス州からジョージア州にかけての亜熱帯地域が原産です。
毒を持ちますが、攻撃性は非常に低く,人間を積極的に襲うことはないと言われています。
体の特徴
体長は7~12mmで、基本的にメスのほうがオスよりも大きいです。
体色は薄黄色から薄茶色で、腹部背面中央にこげ茶色をしたバイオリンのような模様があるのが特徴です。
この模様から、“バイオリンスパイダー”と呼ばれることもあるようです。
脚は細長く、胴体よりも薄い色をしています。
体には短い毛が多数生えており、他のクモと違いトゲはありません。
また、目はクモにしては珍しく6つしかありません。
生息地は?どんな場所にいる?
ドクイトグモの生息地は原産地である北アメリカ南部で、近年は生息数の増加に伴い中西部など徐々に生息域が広がってきています。
夜行性で、巣穴の近くに張った糸にかかった昆虫を捕食します。
ドクイトグモの巣は粘り気があり、白色や灰白色をしています。
人目につかない暗く乾燥したところに巣を作ることが多く、石の下、腐った樹皮の中などに作ります。
人家に侵入することも多く、
・屋根裏やクローゼット、地下室、タンス、使用していない靴の中
などで見つかることがあります。
前述したように基本的には人間を襲うことはありませんが、家屋内などでうっかり出くわして触れてしまった場合、彼らは身を守るために人間を咬むのです。
北アメリカ南部では、ドクイトグモに咬まれてしまう被害が多発しており、家に大量発生したために引っ越しを余儀なくされたという例もあるようです。
ドクイトグモの毒性
ドクイトグモの毒の主成分は、ヒアルロニダーゼとスフィンゴミエリナーゼDというものです。
神経毒ではない非常に特殊な成分で、この毒が体内に入ると血液中の赤血球、白血球、そして血管自体を破壊してしまいます。
現時点でこの毒に対する解毒剤は存在せず、体内から毒が消えるのを待つしかない状態です。
咬まれた際の症状
それでは、ドクイトグモに咬まれた際の症状についてご説明します。
まず、咬まれた際はあまり痛みが強くなく、咬まれたことに気づかないという人もいます。
しかし、1時間もすれば次第に咬まれた箇所に水疱ができます。
そして4、5時間もすれば患部は腫れあがり強い痛みが生じ、患部周辺は徐々に青黒くなっていきます。
これは、傷口を防ぐために集まった血小板が集まりすぎて団子状に固まり、血栓が出来てしまい組織が酸欠状態になるためです。
その後、皮膚の細胞組織が破壊され、最終的には壊死して剥がれ落ちていきます。
人によっては、その他に、
・嘔吐、寒気、発熱、関節痛
といった全身症状もあらわれます。
重度の場合には心血管系虚脱や赤血球が破壊される溶血が起こり、最悪の場合死亡してしまうこともあります。
もし咬まれたら?治療法は?
とにかく自分自身ではどうにも対処できない状況なので、咬まれたことに気付いたら早急に医療機関を受診する必要があります。
といっても基本的には対症療法で、ステロイド剤の投与、血管拡張薬の使用などが行われるようです。
皮膚の壊死状態がひどいなど重度の場合は、皮膚移植などの外科的手術の必要性も出てきます。
恐ろしい毒性のドクイトグモですが、ほとんどの場合は咬まれても軽度ですむようです。
しかし、子どもや高齢者の場合は重症化する危険性があります。
子どもや高齢者が咬まれた場合は、一刻も早く医療機関で治療を受けてください。
医療機関へ行くまでにも、応急処置として、
・患部を石鹸できれいに洗い流す
・氷や保冷剤などで患部を冷やし続ける
といった対応も必ず行ってください。
ドクイトグモの駆除、対処法
ドクイトグモを駆除する方法としては、ピレスロイド系の殺虫剤を家の中に散布すると良いようです。
北アメリカでは、被害が多いこともあり、イトグモ類を駆除するための粘着性のトラップが市販されているとのことです。
ドクイトグモの生息域に住む場合は、日頃からドクイトグモの家屋内への侵入に目を光らせておく必要がありそうですね。
彼らは夜間に侵入するため防ぎきれないかもしれませんが、就寝の際には布団や毛布、衣類に付着していないかしっかりと確認すると良いでしょう。
まとめ
ドクイトグモは、北アメリカ南部が原産の毒グモです。
その毒は強力で、皮膚が壊死して剥がれ落ちてしまうこともあり、最悪の場合は死亡する可能性もあるほどです。
冒頭でも述べたように、ドクイトグモは現時点では日本にはまだ生息していません。
今のところは安心ですが、ヒアリのようにいつ輸入コンテナ等に付着して日本にやってくるかわかりません。
そのような危険性から特定外来生物に指定されているのです。
ドクイトグモへの知識がない私たち日本人は、恐らく見かけても気づかずに油断してしまうでしょう。
今は危険生物といつ遭遇するか分からない時代です。
見慣れない生物を見かけた場合は警戒し、決して近づかないようにしましょう。