日本で馴染のあるアリと言えばクロオオアリですが、現在日本には273種ほどのアリが存在しています。
そして世界には1万種以上のアリが存在すると言われています。
1万種もいれば中には非常に個性の強いアリもいますが、その中に、爆弾蟻(ジバクアリ)というアリがいます。
爆弾とは、なかなか物騒な名前ですよね。
爆弾蟻(ジバクアリ)とは一体どのようなアリなのでしょうか。
今回は、爆弾蟻(ジバクアリ)の自爆攻撃についてご紹介させていただきます。
爆弾蟻(ジバクアリ)とは
爆弾蟻は、アリ科ヤマアリ亜科に属するアリで、1974年にマレーシアにて発見されました。
爆弾蟻はその名の通り、体の一部を爆発させて相手を道連れにすることから名づけられました。
別名で、”ジバクアリ”、“バクダンオオアリ”、“カミカゼアリ”などの呼び名があります。
“カミカゼアリ”とは言うまでもなく、かつての日本軍の神風特攻隊からきているのでしょうね。
ちなみに爆弾蟻やジバクアリとは通称であり、和名はまだありません。
爆弾蟻の体長は働きアリでおよそ5mm、体色は濃茶色をしています。
主な生息地は東南アジアのマレーシアとブルネイで、女王アリを中心とした社会を形成して生活しています。
爆弾蟻の特徴、自爆攻撃!
爆弾蟻の特徴は、何といっても敵に襲われて劣勢になると自爆することです。
あくまでも劣勢のときだけであり、優勢のときには自爆はしません。
アリの攻撃方法としては、通常毒針で刺したり毒液を相手に飛ばすといった方法が挙げられます。
しかし、爆弾蟻は体を爆発させるといった独特の攻撃をするため、ヤマアリ亜科の中でも特殊な種とされています。
爆弾蟻には自身の体長とほぼ同じサイズの大顎腺を持っています。
大顎腺とは、昆虫の口器内にあるフェロモン分泌腺のことで、分泌組織と貯蔵嚢からなります。
アリの場合は主に警告フェロモンとして使用されます。
爆弾蟻の働きアリは、敵に襲われた場合、腹筋を収縮させることにより自らの体の一部を自爆させ、大顎腺に貯蔵されている粘着性の毒液を敵に浴びせるのです。
このとき、自爆した個体は死んでしまいますが、放出された毒液が警告フェロモンとして仲間に注意を促すとともに、粘性により相手を身動きが取れない状態にします。
敵に適わないと分かったら巣や仲間を守るために自爆、なんともいさぎよい決断ですね。
本能で自爆を選ぶアリが存在するとは、昆虫の世界もなかなか奥深いです。
毒液の成分
さて、爆弾蟻の毒液の成分は脂肪族炭化水素とアルコールで、粘着性があるだけでなく腐敗性と刺激臭があります。
毒液の色は季節によって異なり、雨季は白色、乾季は淡黄色に変化します。
これには季節による食べ物の変化及び内部pHの変化が影響していると考えられています。
いずれにしても、刺激臭のある粘着液を浴びせられた敵は身動きがとれずに苦しみ、結果的に自爆個体の道連れとなってしまうのです。
さすがに人間の場合はたとえその毒液を浴びたとしても大きな影響はなさそうですが、毒液の匂いは非常に強烈なので匂いに苦しめられそうですね。
爆弾蟻以外の自爆するアリ
爆弾蟻のように自らの体を爆発させるアリが、実はもう一種います。
それはムヘイシロアリです。
ムヘイシロアリはゴキブリ目であるシロアリの一種で、フランス領のギアナに生息しています。
シロアリの間にも女王や王を中心とした社会が存在し、働きアリという立場の個体がいます。
そしてムヘイシロアリの働きアリの中には自爆要員がいて、敵に襲われ巣が危機に瀕した場合、頭部と胸部の間にある外曩を破って中にある有毒物質を含むたんぱく質を放出し、自らの死とともに敵も死に追いやるのです。
爆弾蟻同様、彼らが自爆する理由は巣を守るため。
ムヘイシロアリの場合働きアリの中で自爆要員となるのは年老いた個体で、年をとるにつれて外曩に有毒物質が増えることで結果的に自爆要員となるようです。
年をとったら自爆要員になって巣を守れだなんて、人間に置き換えたら何とも恐ろしく切ない話ですが、昆虫の世界にしてみたら非常に効率的な生き方なのかもしれないですね。
まとめ
爆弾蟻(ジバクアリ)は、マレーシアとブルネイに生息するアリで、敵に襲われ劣勢になると自らの腹部を爆発させ敵を道連れにするという驚きの攻撃方法を持っています。
アリのような昆虫は本能で生きる生き物とはいえ、巣を守るために自らの命を迷うことなく絶つことができるというのは非常に驚くべき習性ですね。
むしろ感情がないからこそできる行動とも思いますが、爆弾蟻の精神は人間も見習うべき点があるのではないかと考えてしまうほどです。
さまざまな昆虫の生きる術を知ることは、私たち人間の生き方にも役立たせることができるかもしれません。
ちなみにこの爆弾蟻は人気漫画『テラフォーマーズ』にも登場しているようです。
気になる方は一度読んでみてはいかがでしょうか。