以前ご紹介したクロドクシボグモのように、世界には咬まれたら死の危険性があるほどの毒グモが存在します。
そんな毒グモの中で、最強クラスの毒を持つシドニージョウゴグモというクモがいます。
日本には生息していないものの、特定外来生物に1次指定されているシドニージョウゴグモ。
一体どのようなクモなのでしょうか?
今回は、シドニージョウゴグモの生態や毒性についてみていきたいと思います。
シドニージョウゴグモとは
シドニージョウゴグモは、クモ目ジョウゴグモ科に属する毒グモの一種です。
オーストラリアのシドニー周辺に生息することからその名がつきました。
シドニージョウゴグモは体長3~4cm程度ですが、足を広げると10cmほどにもなる大型のクモです。
体長は多種のクモ類同様、オスよりもメスのほうが大きいですが、オスには大きな牙があります。
そして毒も、シドニージョウゴグモに関してはオスのほうが強力だと言われています。
体色は青みのある黒色で、背甲や足には光沢があります。
足が太く、足と腹部にたくさんの剛毛が生えているため、体つきはタランチュラに似て威圧感があります。
シドニージョウゴグモの生態
前述したように、シドニージョウゴグモの生息地はオーストラリアのシドニーやその周辺です。
倒木や岩石の下、割れ目、隙間などに漏斗状の巣を形成します。
住宅街にも巣を作ることがあり、その場合も岩石が多かったり低木が立ち並んでいる庭などを好みます。
人間の身近にいるため、家屋内にも侵入することがあるので要注意です。
特に繁殖期のオスが侵入することが多いようです。
夜行性で、昆虫類、小型の爬虫類や哺乳類を捕食して生活しています。
最強クラスの毒性!
さて、それではシドニージョウゴグモの毒性についてみていきましょう。
シドニージョウゴグモの毒の成分は“ロブストキシン”という強酸性の神経毒で、非常に致死性が高いです。
世界に存在する毒グモの中でも最強クラスの毒グモと言われているほどです。
1950年代までは血清がなかったため、この毒により亡くなる方もいました。
そのため、現地ではいまだに非常に危険な毒グモとして恐れられています。
もし人間が咬まれたら、強い痛みを感じ次第に小さな炎症や水泡があらわれます。
咬まれて10分ほどで激しい吐き気に襲われ、体から汗や涙などのさまざまな体液が流れ出して痙攣状態となります。
そして心臓がショック状態となり、適切な処置をしないとそのまま死に至ります。
大人の場合は約30時間、子どもだと数時間で命を落とします。
また、シドニージョウゴグモのオスは大きな牙を持っているため、咬まれるだけでも激痛があり大怪我をします。
オスの牙は非常に鋭利で硬いため、人間の皮膚だけでなく爪までも簡単に貫くほどの威力があるのです。
咬まれてしまった場合の処置
では、シドニージョウゴグモに咬まれてしまった場合、どのように処置を行えばよいのでしょうか。
現在は血清が作られているため、速やかに医療機関を受診して治療を行えば命を落とすことはまずありません。
咬まれたらまず医療機関に連絡をいれ、ただちに処置を行える体制を整えましょう。
そして、毒の回りを少しでも遅らせるために、添え木を当てて患部を伸縮性のある包帯で丁寧に巻いてください。
この時、きつく締めてしまうと毒の影響で皮膚が壊死してしまう可能性があります。
多少の余裕を持って巻くようにしましょう。
包帯を巻いたらできるだけ体を動かさないように医療機関へ向かってください。
無理して体を動かすと毒の回りが早くなります。
周囲の方の協力を得ながら落ち着いて行動するようにしましょう。
医療機関で適切な処置を行ってもらうためにも、咬んだクモを殺して持参すると良いかもしれません。
それが無理だとしても、クモの特徴などをよく覚えておくと良いでしょう。
猛毒なのに外敵には効かない?
人間に対して非常に大きな効力を発揮するシドニージョウゴグモの毒ですが、実は彼らの毒が有効なのは私たち人間やサルといった霊長類や生後間もないマウスのみです。
天敵である鳥やトカゲ、獲物となる昆虫類には全く効果がないのです。
シドニージョウゴグモがなぜ猛毒を持つようになったのか、現在でもはっきりとしたことは分かっていません。
ただ、シドニージョウゴグモだけでなくジョウゴグモ科が毒を使用するのは防衛の時が多いため、自己防衛のために毒を持つようになったのではないかと考えられています。
そして、オスが人間を死に至らしめるほどの猛毒を持ったのは、繁殖時にメスを探して徘徊する際に外敵に見つかりやすくなるため、より大型の外敵に対して防衛できるようにするためではないか、という説もあります。
どんな理由であれ、私たち人間にとっては脅威の存在であることは事実です。
私たちもシドニージョウゴグモから身を守るための知識をつけなければなりませんね。
日本でペットとして飼える?
シドニージョウゴグモを含むジョウゴグモ科のクモは、日本においては特定外来生物に指定されているため日本への持ち込みおよび飼育等が禁止されています。
輸入の際のコンテナ等に紛れ込まない限り、日本に侵入することはまずないでしょう。
しかし、彼らが生息しているのは観光地であるシドニーです。
私たち日本人も毎年多くの方が訪れる場所だと思います。
もしオーストラリアに旅行等で行く際は、シドニージョウゴグモに出くわす可能性が高いと考えてよいでしょう。
彼らは家屋の中にもよく侵入してきます。
洗濯物や衣類のポケットの中、鞄の中などにも紛れ込むことが多いです。
長期間滞在する際はくれぐれも注意してください。
まとめ
シドニージョウゴグモは、オーストラリアのシドニー周辺に生息する毒グモです。
世界の毒グモの中でも最強クラスの、非常に致死性が高い神経毒を持つ危険なクモです。
しかし、現在は血清があるため咬まれても死亡することは稀だそうです。
海外に行くとどうしても他のことに気を取られてしまい、危険生物がいるかもしれないという警戒心は薄くなってしまうでしょう。
しかし、せっかくの海外生活がつらいものにならないように、日本にはいない何かがいるかもしれないという意識を忘れないようにしましょう。