アフリカマイマイってご存知ですか?
とっても大型のカタツムリなのですが、このカタツムリ、過去に死者も出たことがある人間にとって危険な生き物なのです。
今回は、アフリカマイマイの生態と危険性(広東住血線虫)についてご紹介します。
目次
アフリカマイマイとは?
学名 | Lissachatina fulica |
英名 | East African Land Snail |
分類 | 柄眼目アフリカマイマイ科アフリカマイマイ属 |
分布・生息域 | 鹿児島以南、東アフリカ、東南アジア、インド洋、太平洋域の島々 |
大きさ | 殻高15cm |
アフリカマイマイは、日本でも沖縄や小笠原諸島、奄美諸島などで生息が確認されているとても大きな陸産貝類です。
亜熱帯や温帯地域の畑や草むらなどに生息しています。
殻の形は、円錐形で、その大きさは、殻高15cm以上にもなります。
もともとは、東アフリカのモザンビーク付近のサバンナ地帯に生息しているカタツムリで、日本には、存在しない種だったのですが、1930年代に食用として沖縄県に持ち込まれたのが初めといわれています。
1936年に「特殊病害虫」に指定されるまで、養殖されていて、野外でも自然に増えてしまい住み着いてしまったそうです。
アフリカマイマイの生態
とっても大きなアフリカマイマイの生態について見てみましょう。
アフリカマイマイは、アフリカ原産ということで乾燥にとても強いカタツムリです。
アフリカマイマイの驚きの生態は、その繁殖力と食性にあります。
繁殖力
アフリカマイマイは雌雄同体(1匹でメスの生殖機能もオスの生殖機能も持っている)で、他のアフリカマイマイと出会えば、雄雌の区別無く交尾ができ、種を増やすことができます。
20℃以上の気温下では、約10日間の周期で100から1,000個の卵を、一年を通して何回も産むため、瞬く間に数が増えていきます。
食性
アフリカマイマイは雑食性で、植物の生葉や落ち葉、腐敗した果物、動物の死骸など何でも食べてしまいます。
外壁などのコンクリートを食べることもあるそうです。
このため、農作物への被害やもともと生息していた植物やカタツムリ類の生態系に大きな影響を及ぼしています。
なぜ人間にとって危険なのか?
アフリカマイマイは、農業への被害をもたらし、人間の生活に支障をきたします。
しかし、この他にもアフリカマイマイが人間の健康を脅かすこともあるのです。
それは、アフリカマイマイが広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)という寄生虫の中間宿主であるからです。
アフリカマイマイを生あるいは調理不十分な状態で食べた場合や、アフリカマイマイ自体やアフリカマイマイが這った後を触った手で物を食べたりして、経口的に広東住血線虫に感染することがあるので、注意が必要です。
触った手指に傷がある場合も危険です。
広東住血線虫とは?
広東住血線虫とは、体長22~23mmの線虫で、その成虫は、ドブネズミやクマネズミの肺動脈(心臓から肺に血液を送る血管)に寄生します。
肺の血管内で卵が孵化すると、幼虫は気管→食道→胃→腸へと移動して、糞とともに排泄され、外の世界に出てきます。
この幼虫がアフリカマイマイの体内に経口的、あるいは経皮的に入って成長します。
この感染したアフリカマイマイをネズミが食べると、ネズミの体内で広東住血線虫は成虫になります。
人間がアフリカマイマイを介して幼虫に感染すると、幼虫は人間の脳や脊髄の血管や髄液に寄生しますが、成虫になることはなく、死滅します。
しかし、害がないわけではありません。
ヒトが広東住血線虫に感染するとどうなる?
主にヒトの口から広東住血線虫の幼虫は侵入して、胃や腸壁から血液やリンパ液の流れに乗り、全身に回り、最終的に脳や脊髄に集まってきます。
幼虫が脳や脊髄に入り込むと、好酸球(体の免疫を担当している白血球の一種)の著しい増加を伴う好酸球性髄膜脳炎(こうさんきゅうせいずいまくのうえん)を引き起こし、激しい頭痛、発熱、吐き気、嘔吐、手足の麻痺、知覚異常、などの症状が出て、重症の場合は昏睡状態になり、命を落とす場合もあります。
国内では、2000年に沖縄県で広東住血線虫により女の子が死亡しています。
特効薬などはなく、治療は対症療法となります。
感染から発症までは、約2週間の潜伏期間があるといわれています。
このため、アフリカマイマイは、日本国内への輸入や国内間でも未発生地域への持込は、法律で規制されています。
広東住血線虫に感染しないために
アフリカマイマイ本体はもちろんのこと、アフリカマイマイが這った後も素手でさわらないようにしましょう。
もし、触れてしまった場合は、すぐに手をしっかり洗いましょう。
野菜の葉などにも這った後がある場合もありますので、サラダなど生で野菜を食べる際は、野菜を十分洗いましょう。
また、アフリカマイマイはもともと食用で持ち込まれたため、食べることもできますが、生や調理不十分な状態では食べないようにしましょう。
アフリカマイマイの駆除は、ナメクジ用の農薬が有効です。
ナメクジと同じように、ビールで罠を仕掛けるのもいいでしょう。
まとめ
アフリカマイマイは、東アフリカ原産の大型の陸生貝類で、日本へは食用として持ち込まれました。
その姿は、殻の形が円錐形のカタツムリで、殻高が15cm以上にもなります。
アフリカマイマイは、繁殖力がものすごく高く、雑食性で何でも食べてしまうため、農作物の被害やもともと生息していた植物やカタツムリ類の生態系に大きな影響を及ぼしています。
アフリカマイマイには、広東住血線虫の幼虫が寄生している場合があり、アフリカマイマイを生や調理不十分で食べたり、アフリカマイマイを触った手を介して、人間に感染すると好酸球性髄膜脳炎を引き起こし、重症の場合は、命を落とすこともあるため、十分注意が必要です。
発症しても特効薬などはなく、対症療法のみとなるため、予防することがとても重要です。