百獣の王として獣の頂点に君臨するライオン。
野太い雄たけびや威厳のある顔、がっちりとした体格から、最強と言われるにふさわしい風格があります。
動物園で飼育されているライオンでさえも、檻の中に入っているとはいえ迫力があり恐ろしいですよね。
皆さんはこのライオンについてどれだけのことをご存知でしょうか。
今回は、ライオンの生態や種類、ツァボの人食い事件について詳しくご説明したいと思います。
目次
ライオンとは
ライオンは、食肉目ネコ科に属する肉食獣で、ネコ科に属する中でトラに次いで大きい動物です。
ライオンの体長は種によって異なるものの、オスが170~250cm、メスが140~180cm、体重はオスが150~250kg、メスが120~185kgと、一般的にオスのほうがメスよりも大きいです。
体毛は短く、毛色は背面が黄褐色や灰褐色、腹部や四肢の内側は白色です。
幼獣には四肢などに暗色斑点が見られますが、これは成長とともに次第に消失していきます。
そしてライオンの大きな特徴としては、オスの立派なたてがみです。
オスは、1~2歳ころから頭部から首、胸にかけてたてがみが発達しはじめ、年齢を重ねるとたてがみは立派になり次第に黒みを帯びていきます。
たてがみが黒くなるのは、闘いや狩りで勝つたびに自信がつき、男性ホルモンであるテストステロンがたくさん分泌されることが関係していると言われています。
よって、オスにたてがみがある理由は強さをアピールするためと考えられていますが、他に外敵の攻撃から首を守るためという説もあります。
ライオンの社会
ライオンにはネコ科動物には珍しい社会性があります。
彼らは“プライド”と呼ばれる群れを形成するのです。
プライドには1~2頭のオス、数頭のメスと子ライオンが含まれ、だいたい15頭前後の群れになります。
オスは基本的には兄弟同士で、メスに関しては母親、姉妹、従姉妹と血縁関係のあるもの同士で集まります。
プライドのリーダーはオスで、子孫を残すべくプライド内のメスと交尾をして子どもを作ります。
ただ、オスの子ライオンは3歳頃になるとプライドから追い出されることになります。
これは、子ライオンにリーダーの座を乗っ取られることを恐れるためと、さらに子孫を増やすためと言われています。
追い出されたオスは、他のプライドのリーダーになるためリーダー格のオスと闘うか、放浪オスとしてさまようことになります。
闘いに勝って別のプライドのリーダーとなったオスは、まず群れ内の子ライオンをすべて殺します。
“ライオンの子殺し”は有名な話で、ご存知の方も多いと思います。
ライオンが子どもを殺すのは、一刻も早く自分の子孫を残すためです。
メスの生殖期間は3年ほどしかないのですが、子どもを産むと2年間発情しなくなります。
よって、オスは子どもを殺すことによってメスの発情を促すのです。
ライオンの生態
ライオンの主な生息地は、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸とインド北西部です。
かつてはアラビア半島にも生息いるなど幅広く分布していましたが、現在の生息地は限られ分断されてしまっています。
ライオンが生息しているのはサバンナや砂漠ですが、森や茂みのある岩地に棲むこともあります。
獲物はシマウマやキリン、インパラといった比較的大型の哺乳類が多いです。
狩りは夜間行われますが、基本的に狩りは複数のメスが協力しながら行われます。
しかし、成功率は20~30%と低いため、ブチハイエナなど他の動物が捕らえた獲物を横取りすることもあります。
獲物を捕らえると早速メスたちは食べ始めますが、オスがやってくるとオスが独占します。
そしてオスが満足した時点で再びメスと子どもたちが食べるのですが、ほとんどオスが食べ尽くしてしまうことも多く、餌を食べることができずに死んでしまう子どもも多いようです。
ライオンの種類
さて、それではライオンの種類について紹介します。
ライオンは、
・バーバリーライオン、アンゴラライオン、マサイライオン、トランスバールライオン、ケープライオン、セネガルライオン、コンゴライオン、インドライオン
の8種に分けられることが分かっています。
バーバリーライオン
バーバリーライオンはすでに野生種は絶滅してしまってしますが、アフリカ大陸北部に生息していたライオンです。
ライオンの中で最も大きい種で、四肢は短いものの胴が長くがっちりとした体格です。
また、黒く長いたてがみを持ち、それは腹まで達しています。
ヨーロッパに持ち込まれることもあったため、現在動物園で飼育されているライオンの多くはバーバリーライオンの可能性が高いと言われています。
アンゴラライオン
アンゴラライオンはアンゴラやコンゴ、ナミビア、ザンビアなどに生息している種です。
カタンガライオンとも言われています。
背面の毛色は灰黄色ですが先端は黒みがかっています。
たてがみが発達しない種であるため、他の種よりも薄い色をしているのが特徴です。
マサイライオン
マサイライオンはアフリカ大陸東部に生息している種で、主にケニアやタンザニア、エチオピアなどに分布しています。
毛色は灰褐色や黄褐色で、暗色斑点が入る個体も存在します。
四肢は長いものの、たてがみは比較的短く肩までかからない個体もいます。
中にはほとんど発達しない個体もいるようです。
トランスバールライオン
トランスバールライオンは南アフリカ共和国北東部にあるトランスバール地方に生息している種です。
比較的大型で、たてがみがよく発達しています。
まれに全身真っ白なライオンが生まれることでも知られています。
ケープライオン
ケープライオンはすでに絶滅してしまっている種で、南アフリカ共和国に生息していたと言われていますが、その生息範囲について詳細は分かっていません。
バーバリーライオンに次いで大型の種だったようで、遺伝子的にはトランスバールライオンとほとんど変わらないことが分かっています。
セネガルライオン
セネガルライオンはアフリカ大陸西部に生息している種で、ニシアフリカライオンとも呼ばれます。
主な生息地はセネガルやカメルーン、ナイジェリアなどです。
毛色は赤みがかった黄褐色で、たてがみはあまり発達しない種です。
他の種と比べて小柄で、形成する群れも少数であると言われています。
コンゴライオン
コンゴライオンはコンゴ北東部に生息しているため、北東コンゴライオンとも呼ばれています。
主に草原地帯に生息することが多いようです。
インドライオン
最後に、インドライオンは、かつてはトルコから南西アジアにかけて広く生息していましたが、現在はインドの保護区に500頭ほど生息しているのみです。
絶滅危惧種に指定されており、一時深刻な状況となりましたが少しずつ個体数は回復してきています。
アフリカに生息するライオンよりも小柄で、下腹部がひだ状にたるむ、たてがみが短い、尾の房が大きいといった特徴があります。
ライオンによる被害、“ツァボの人食いライオン”
ライオンと人間との関わりについてですが、基本的にはライオンは人間を食べません。
あくまでも彼らにとっての獲物は野生動物なのです。
しかし、年老いたり病気にかかったりして本来の獲物を捕らえることができなくなると人間を襲うことがあります。
ライオンによる被害として有名なのは“ツァボの人食いライオン”です。
これは、1898年3~12月にかけてケニアのツァボ地方で行われたウガンダ鉄道敷設工事の最中に、およそ35名もの労働者が食い殺された事件です。
この時のライオンは先ほど紹介したマサイライオンのメス2頭で、数カ月に及ぶ捕獲作戦の末、当時鉄道現場総監督をしていたジョン・ヘンリー・パターソン氏によって射殺されました。
その後、2頭のライオンは剥製となってシカゴのフィールド自然史博物館に展示され、この事件は『ゴースト&ダークネス』として映画化されています。
なぜライオンは多くの人間を襲ったのでしょう。
現在でも確かなことは分かっていませんが、研究により歯の疾患が原因で襲ったのではないかとの発表がありました。
つまり、歯の疾患のために大きな獲物を殺すことが難しくなり、簡単に捕らえることができる人間を食べるようになったのだろうということです。
ライオンに襲われる瞬間はとてつもない恐怖に襲われることでしょう。
近年でも、ジンバブエの国立公園でサファリツアー中にガイドが襲われたり、インドで保護区近隣に住む住民が襲われるなど、ライオンに襲われる事件は後を絶ちません。
ライオンが人を襲う理由がはっきりと解明され、少しでも被害が減ることを願います。
まとめ
ライオンは、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸とインド北西部に生息している大型のネコ科動物です。
バーバリーライオン、アンゴラライオン、マサイライオン、トランスバールライオン、ケープライオン、セネガルライオン、コンゴライオン、インドライオンの8種がいます。
しかし、ケープライオンはすでに絶滅してしまっています。
日本ではサファリパークや動物園でしか見ることのないライオン。
本来の野生の姿は生息地に行かない限り見ることができませんが、他の動物を寄せ付けない威厳のようなものを感じます。
あれだけ大きく強ければ、外敵も少なく楽だろうとも思うでしょう。
しかし、彼らは彼らで厳しい環境で生き抜いていくのに必死で、特にオスの生涯は過酷で試練の連続です。
オスにはライオン同士の闘いもあるのです。
百獣の王と言わしめるほどの貫禄は、多くの試練を乗り越えたがゆえに出てくるものなのでしょうね。